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いくつもの心が見えた、詩集『てつがくのライオン』

誰も みていないとき
水の てっぺんで
さかなは
雲の 真似をする

『てつがくのライオン』
さかなより

瑞々しい感性がほとばしる詩たち。

若い多感な時期に読み、
色んな考え方に触れることで、
自分と他人との違いを
すばらしいことだと思えなくても、
悪いことだと思わずいられる人が
増えたらいいのにと思う。
(今の子ども達はそんな心配要らないか笑)

のびやかな少年少女の心にまっすぐ届くようにと願いを込めて作られた、理論社から発刊された少年詩集。
工藤直子少年詩集『てつがくのライオン』は、第二期に7番目に出されたもの。

かなり年代物でページも色褪せていて、
今では見るのも久しい貸出期限票が貼られていた。
小学校の図書みたい!懐かしい。
貸出記録は昭和57年〜61年の日付印が押されている。


タイトルの「てつがくのライオン」とは、
本書の中のライオンとかたつむりの詩で、
ともだちは緑のにおい』に登場する2人だ。
(ろばはまだこの時お目見えしてないそうだ)

このライオンとは別ライオンだと思うが、
しまうまとライオンの詩も良かった。
寄れば逃げられるか怖がられる孤独なライオンに
素敵な友達が出来るお話。

くじらといるかの詩は、
先日読んだ『ともだちは海のにおい』にも収録されている。この詩集も大好きな一冊。


挿絵は佐野洋子さん。
その詩にピッタリあった絵を描かれている。

子どもと言えど大人に近づくにつれ
色んな現実も見えてくるわけで…
心の中のもやもやした部分を表した詩もある。
そんな時また佐野さんの絵が活きてくる。


あなたは帰っていった あなただけの場所に
幾種類かの倦怠と眠気をぶらさげて
無口なきりんになって帰っていった
わたしは白い顔でさよならを言う
誰にもみられず
誰にも期待されないときの白い顔で

(中略)

あなたは帰っていった あなただけの場所に
片手いっぱいの冗談と笑いをこぼして
あなただけの場所で あなたは
いったい何に化けているのだろう

『てつがくのライオン』帰るより


感じ方読み方も色々で、それで正解。

キレイさや明るさだけでない
感じたそのままのことばたちは、
少年少女の時期には特に救いになると思う。

ナスもトマトも机もペンも
みな元気でやっているような
朝がある

(中略)

ものたちはおそらく太古から
あたりきのように鮮やかなのであって
わたしは ひょっとして今まで
目を閉じつづけていたのではなかろうか
と思われる朝である

『てつがくのライオン』みえるより

いつもの自分よりちょっぴり成長した時、
目に見えるものなんだって違ってみえる。
そこを振り返るところがてつがく的。


花が ひらく というのは
花が 死ぬ ことでしょうか

いのちの終りが美しいー
一瞬 そう思うことがあります

花が ひらくとき
花と向かいあって坐ります

そして いのちを思います

『てつがくのライオン』花より

あなたの心のなかに 海がある
昔々から浮かびつづけた 海がある
あなたがうたうと 魚たちもうたう
あなたがわらうと 魚たちもわらう

あなたが美しいものを みつめるとき
海はあふれて 優しい涙になる

『てつがくのライオン』あなたの心のなかにより


工藤直子さんの感性で表された色んな心を、
ここでたくさんみさせてもらえた。



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