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「赤ちゃんと百年の詩人」:八木重吉の子育てオムニバス集を作る

子育て詩人・八木重吉の育児の詩をまとめた『赤ちゃんと百年の詩人−八木重吉の詩 神戸・育児篇』の本(ブックレット)を作りました。

特に育児中の方に手にとってもらい、 なかなか気持ちに余裕がないようなとき、みずみずしい詩の言葉にふれて元気になってもらえたらと思います。

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なぜこの本を作ったか

私はいま神戸に住み、1歳の娘を育てています。子育てを初めて以来、百年前の神戸で、同じように1歳の娘を育てていた八木重吉の詩に、自分を重ねています。

たとえば、こんな詩です。

おさない日は
水が もの云ふ日
木が そだてば
そだつひびきが きこゆる日

『詩集 土をたたく』 1923年4月初稿 / 『詩集 秋の瞳』1925年

私にもかつてあった「子どもらしさ」を、わが子のなかに発見するとき、この詩を思い出します。

また、親子のなにげないひとときや、子どものふとした愛らしさが、詩のカメラで永遠にとどめられています。

誇りなき
われとなりて
よちくたと
児の手をひきてあるく
うちしめりたる あさの小路、
よちくたと よちくたと
おもひなき みちのほそさよ

『純情を慕ひて』1924年11月4日
あかんぼが
生長するすがたはうたです、 
ちよっとした眸のやりかた
わづかにものにおどろき
はっとしてうんどうをやめたときのしせい、
あらゆるあたらしいけいけんを
おいしいものゝようにたべてゆきます
おどろきながら
ぜんりよくをはりつめながら、
まいにちまいにち
あかんぼはいさましい発見者です
(以下略)

『欠題詩群(二)』1924年10月

子の成長の喜びや、初めての育児の戸惑い。父親のまなざしが、美しい詩の言葉で表されています。

重吉の詩の言葉を借りて子育てすると、あわただしく過ぎがちな日々が、とてもゆったりといとおしく感じます。

八木重吉のこと

詩人 八木重吉は今から百年前、神戸・御影に4年間(1921〜1925)暮らしていました。御影師範学校(神戸大学の前身)の英語教師として23歳のとき東京から赴任、24 歳で妻とみと結婚。25歳で⻑女 桃子が誕生、翌年には⻑男 陽二が生まれます。父になった重吉は子育ての詩をよく作りました。

こんな本です

神戸在住期間に作られた子育ての詩に描かれるのは、 0歳から1歳にかけてすくすく育つ桃子ちゃんの姿です。数あるなかから22の詩を選び、成⻑がわかるよう詩(初稿)の作られた順に並べ、欄外に少しのコメントを添えました。

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巻末には重吉の御影での足跡をたどる試みもしました。百年前の神戸の風景と、赤ちゃんとお父さんの物語を想像してみてください。

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おわりに

詩人 八木重吉が神戸に暮らして、今年(2021年)で百年。重吉の詩を知ってもらう機会になればと、昨秋『六甲のふもと 百年の詩人 -八木重吉の詩 神戸篇-』を作りましたが、今回はその姉妹本「神戸・育児篇」です。よければ、「神戸篇」もあわせて読んでみてください。

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『赤ちゃんと百年の詩人:八木重吉の詩 神戸・育児篇』(左)と、
『六甲のふもと 百年の詩人 -八木重吉の詩 神戸篇-』(右)
百年前の神戸の山と海の風景が表紙イメージ。

どちらも、重吉ファンはもちろん、重吉のことをあまり知らない方、神戸の方に届いてほしいと考えて作りました。

少部数しかありませんが、もし関心をもってくださった方がいれば、メッセージ等いただけたらうれしいです。


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・本の制作ノートも書きました。



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