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【Kindle発売】私にもできるバリアフリーってあるんだ。

バリアフリーって、行政やお店を作る責任者にしかできないって思ってた。

ユニバーサルデザインってのもあるけど、デザイン能力がない自分はその段階にも立ってないし。

バリアフリーって小さい頃から教科書で習ってきたし、
白杖を持つ人がいたら少し気にかけて声を掛けるぐらいは……。
電車の中でヘルプマークの人がいたら積極的に席は譲るし……。

でも、やっぱり変えれる力があるとは思っていなかった。

そんなある日、何を思ったか、こんなことを呟いた。

「過去作を電子書籍で配信するのって需要ある?」

会社を退職したことにより収入が絶たれたので、少しでもお金を稼ぐ方法として、できることを少しずつやってみようというぐらいの気持ちだった。

そんな邪な呟きにこんなコメントがついた。

電子化、正直ありがたいです。視覚障がいがあるので大好きだった小説など読めなくなって久しく…歌集も栞文はスキャンして拡大しないとだめで、判型によっては電子化ないと諦めることが多いです。私家版はもっと難しい。勿論、障がい者以外にも需要あるかと思います。

私の歌集は、アホほど字が大きい。
イベントでペラペラと見本を読んでくれた人が少し笑い出すほど、字が大きい。
それは、自分自身が割と文章を読むのが苦手で「誰でも読める本にするなら小さいよりは大きい方がええよな!」という軽いけど、ちょっとした意識のもとで行われている。

一方、短編集や最新作の『生まれ落ちた人たちの生活史短歌』は、自分でも嫌になる程、字が小さい。これは「一般的な文字のサイズはこれぐらいだよ」という調べのもとでそれより大きくした結果なのだが、それでも字がとても小さかった。

それゆえ、母にも「字が小さくて読めない!」と渡辺謙を憑依させて言われてしまった。

文学フリマ東京38で配布する製本作業で印刷したときは、どうにか大きくできないかと苦心したものだ。(それでもデータを全部いじる時間はなかったためそこまで大きくならなかった)

小学生だった頃の自分も識字障害(ディスレクシア)を持っていたため、
教科書の文章が二行重なって見える、同じ一文が重なって見えて読むのに苦労する、というような日々を重ねていた。

大学のコピーライトの授業でも、『電子書籍』の広告のコピー案をたくさん考えたこともある。
重くなくて嵩張らない、今時の若者は全部スマホで済ませたい、むしろ老人にとっては文字のサイズ変えれるから読みやすい、なんていろんな切り口を考えて言葉にしてた。

なのに、私はこのコメントがついた時にやっと、
自分の本を電子書籍としてKindleに登録することがバリアフリーの一環になるのだと初めて気づいたのだ。

自分

バリアフリー

が全くつながっていなかったのだ。
バリアフリーになるほど読んでくれる人はいないだろうし、
自分の行為で助かる人なんていないだろう、と考えてないところで考えて、
考えていたことも忘れて、放棄していた。

知ることが出来て、痛く気持ちよかった。

昨年度芥川賞を受賞した市川沙央さんは『ハンチバック』内で、紙の本を憎む主人公を描いた。

「出版界は健常者優位主義(マチズモ)」

市川沙央『ハンチバック』

これは、出版社に勤める兄とも話題に出たし、
「なるほど、確かにその通りだ」と思った。
出版界はきちんとその情報の選択肢を増やす必要があり、それは義務に近いほど重要なことだろう、と思っていた。

だけど、私個人としては紙の本が好きだし、紙の本であるからこそ、なんて思っていた。自分の作品を電子書籍にする価値に対して評価できなかったことも大きい。それは、『物質』としての価値があるからこそ、人は手に取ってくれるんだと思っていたからだ。

そもそも、フォロワーさんに「視覚障害」の人がいることも考えが及んでいなかった。
障害者手帳を持ってる方、障害者雇用で働いている方がいることは理解していたはずなのに、その人たちに自分が何かをできると一切考えていなかったのだろう。
これが当事者意識のなさ、マジョリティ側の意見、モノの考え方だと実感し反省した。

だからこそ、今回、
自分もバリアフリーの一要素になれるということがとても嬉しかった。

よし、やってみようと思い、とりあえず小説短編集『落下する日常』を登録するためにデータをいじり始めた。

まず、Kindleというものは、データの形が
word形式か、EPUBなどになる。

EPUB???
EPUBとはなんじゃ??

すでにあるデータは、インデザインで作ったモノだった。
一発やってみれ!と書き出しの選択肢を見たところ、
EPUB(リフロー可)
EPUB(固定レイアウト)
の二つがあった。

小説の場合は、「リフロー可」を選択することで、
端末ごと、利用者ごとに文字のサイズを変えたりフォントを変えることができるようだ。

これのおかげで読む人が自分のタイプに合わせて、読みやすくできる。

今まで、Kindleを利用したことがなかったため、そのことすらあまり知らなかった。
インデザインを使って本を出したことがあるのならば、
データとしてはそこまで難しい編集は必要ないようだった。

基本的にその変更だけで、Kindle入稿のデータは問題なさそうであった。

普通に個人的に原稿に問題があり、『ソース段落にテキストアンカーを作成』という謎が発生したがそれもどうにか(簡単に)解決ができた。

事項を入力して、値段設定等をして、完了を押すと終わる。
72時間以内にAmazon側の審査が入り配信がされる。

いとも簡単だ。

こんな簡単なことで、本を読みたい人に少しでも選択肢を増やすことができる。

配信後、コメントをしてくださったかたがすぐに購入をしてくれて、
レポをあげてくれた。

ここでまた、改めて気づく。

あぁ、そうか。
イベントで購入する以外は、実際に中身を見て買うことが出来ない、
そこまではわかっていた。
だから、いつも中をパラパラとして見える動画も作っていた。
だけど、それだけじゃ文字の大きさや実際の感覚は掴みきれない。

それって、結構な博打であり負担であろう。

マイノリティとされる人の小さいけど大きい日々の苦労を
私はまだまだだ知らないんだと痛感した。

でも、知ったからには改善できる。
知ったからには行動をしたい。
知ったからにはみんなにも広めたい。

Kindleや電子書籍の配信を是非とも皆さんもやってみてほしい。

簡単だし、あっけない。
だけど、届く可能性は増える。

自分が二次創作の畑の人間ではないからこそ、簡単にできる。
これが二次創作だといろんな権利の問題やグレーゾーンが明らかに黒になってしまうから、できることではないだろう。
だからこそ、一次創作で自分の作品がある人は、電子書籍にすることはなんのマイナスもないのでやってみるのがいいのではないかと思う。
(もちろん、副業申請などの問題もあるとは思うけれど)

ああ、知らないことを知るとはなんと気持ちがいいのだろうか。

なんて幸せなことなんだろう。

読んでくれる人がいる喜びを改めて感じることができた。

こちらの『怪異短歌集壱』は、データがなかったため一から編集をしなおした。
故にめちゃくちゃ大変だった。
そして『固定レイアウト』の方にしないと意味わからない感じだった。
歌集の場合どっちの方がいいのか、本当に難しい。
多分、固定レイアウトで大きく文字を設定しておけば読みやすいのではないだろうか?
まだその点については確信はないのだけれど、
今後より良く努力していこうと思う。

なので、よかったら電子書籍版もご購入お願いいたします!
怪異短歌集は特に紙の再販はいまのところ予定していないので、
読むなら電子書籍で!という感じです。
よろしくお願いいたします!

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