見出し画像

サルの商売⑦|女がカネを運んでくる

折井クンのところに名義リストを送れば、1人につき6台くらいFOMA回線を開通できた。プリペイドを入れればもっとだ。

あとは青梅と川口と石神井と神田に融通の利く代理店を開拓して、毎月決まった台数のFOMA端末とSIMを捌いていた。

前回⑥はこちら

名義集めもそれまでのやり方に加えて、積極的に女を使うことにした。

歌舞伎町、出会い喫茶、たまに出会い系で知り合った女を色恋で落とし、最新機種を1台やるかわりにオレの仕事を手伝ってくれとケータイを契約させる。

一度回線を起こせば名義を飛ばしたくない女は複数台分の電話代を毎月身銭で払い続けるようになる。

通常トバシは開通後一度も料金を払わずそのまま放置するので、2カ月くらいで回線利用停止になるが、女たちが身銭で支払いを続ける番号はずっと生き続ける。

そこで俺は、それらの番号のSIMカードを金融屋や売人にレンタルすることにした。もめた時のこと考えて相手は選んだけど。

契約する端末は当時一番人気だったSH(シャープ)シリーズ。白ロムで本体を転売して1台3、4万。残ったSIMは毎月通話料+手数料を上乗せしてレンタルした。

女から直接ゼニを引っ張るのは面倒が多いし、風俗に沈めてもキックバックはせいぜい売上の15%程度だ。その点、ドコモとの契約で縛ってそこに金を払わせ、電話を利用した客から間接的に回収するスキームは俺にとってラクだった。

しかも、付加価値がつくので女たちの支払ったカネは倍増して俺の手元にまわってくる。元手のかからない打ち出の小槌を手にした気分だった。

「こんなのもう全部解約するから。」

請求書が届く毎月10日頃になるとそういってゴネる女も当然いたが、あくまでこの支払いは俺がこっちの携帯電話レンタル産業(なんやそれ笑)で軌道に乗るための初期投資。いまお前は未来の俺の可能性を応援してくれてるんだろ?一緒に夢を叶えて側で成功を見届けてくれ。

とか言ってチンポでも突っ込んでおけば大抵黙った。

画像1

というのも、女たちの多くは愛とコストへの執着を錯覚する。一度男にカネと時間を費やすと、そのすでに支払ったコストに気をとられ、合理的な意思決定がほとんどできなくなるのだ。

そしてそのサンクコスト(埋没した費用)を取り戻そうとする心理効果でパチンコ依存症のように泥沼にハマるのだ。

あとは、解約すると翌月に割賦購入分の全ての端末費用が一括で請求されてしまうので、それも障壁になっていた。

当時の歌舞伎町で平日昼から遊んでいる女など、頭もメンタルも弱い病んだ奴らで溢れていた。数台分の通話料と端末の割賦費用を支払うため、自分から風俗の兼業を選ぶ女もいた。

「いまやめればこれまでの投資が全部水の泡になっちまうだろ。」
「お前が降りたいっていうなら仕方ないわ。不本意やけど俺も別の人間を頼るしかないやろ。」

これがキラーフレーズだった。

最初はキツい支払いも、人間は不思議なものでそのうち慣れてくる。

浦和の方に住んでいたカナコって女が一番重症で、父母、ついでに祖母の名義まで寄越したので一家3世代根こそぎ回線を起こした。白ロムのために機種変もかけまくったので毎月の端末分割料金だけでもおかしなことになっていた。

「お前は専務みたいなもんや。」

当然法人なんかつくってなかったが、そう言って事業に出資しろといえば親の保険まで解約して返戻金を持ってきた。6年半で3,000万くらい引っ張ったと思う。

まぁカナコは特例だった。他は毎月数万〜十数万円程度の支払いを細々続させる程度。そこまで無茶はしなかった、

本当に痛いのは、この時俺は自分のことを人よりちょっと賢いなどと考えて自惚れていたこと。その、当時の謎に満ちた自信と迷いのなさが弱い女たちを陶酔させてたってのもあるんだろうけど。

今考えると本当無茶苦茶だわ。恥ずかしい。

つづく

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?