しんのすけ

平成の新宿で働いてました。口と下半身で生計をたてていたところ度を超えて2011年に捕ま…

しんのすけ

平成の新宿で働いてました。口と下半身で生計をたてていたところ度を超えて2011年に捕まりました。事件のことや当時の女の話を通じて回顧録を綴ります。読み物として楽しんでもらえたり、なにかしら思ってもらえたら嬉しいです。こんな風になりたくないわ、でも満足です。

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  • サルの商売

    平成の新宿で働いていた男の回想に基づくほぼノンフィクションのフィクションです。登場人物の名前は創作です。連載ですが、どこから読んでいただいても楽しんでもらえるように書いています。

最近の記事

サルの商売⑩|転機

そういえば2007年の冬頃だったか、俺の貸し出していたSIMカードの何枚かが初月に解約になって、紹介した人の顔を潰したみたいな話になったことがあった。 こっちとしては最初に必要な説明はしてあるし、回線を使ってくれていた本人はすぐに納得して新しいSIMを受け取ってくれたんだけど、紹介者のおっさんがゴネてきた。 前回⑨ お前のせいで客と連絡が取れなくなって〇〇(回線使ってた人)が損してるけどどうするの?みたいなイチャモンだったか。 「○○さんとは、今月は通話料以外もらわず

    • サルの商売⑨|恒例、夏のWIRE。

      職安通り沿いのコインパーキングに駐めた車を出して、横浜アリーナへ向かう道中だった。 ワンボックスの座席には笹沼、翔太、太一、つっきー、俺が乗っていた。もう1人、運転席では佐々木がハンドルを握っている。佐々木は当時付き合っていた女ユミの同級生。 前回⑧ この頃、ユミは高校を卒業し大学生になっていた。それを機に俺は中野から女のキャンパスの近くへ引越し同棲を始めた。 運転している佐々木とユミがあんまりに親しいから、腹立って食事の席に呼び出してちゃんと紹介させて知り合った。

      • サルの商売⑧|ニカイドウのオバはん

        川越付近にあるリゾートみたいなホテルの一室の、まん丸ベッドの上にいた。 天井の鏡には自分と女の背中が映っている。俺の下半身は女の頭で隠れていた。 前回⑦はこちら 女の背中から脇腹にかけてのたるんだ皮と、水気を失いつつある髪の毛が、薄暗い部屋のミラー越しにもはっきり確認できる。 ベッドの上では先日捕まえた四十五になる中年女、ニカイドウのオバはんが、一生懸命「超すろーふ×ら」に励んでいた。 超スロー。その名の通りとにかくゆっくり、ただゆっくり、マイナス10倍速くらいで奉

        • サルの商売⑦|女がカネを運んでくる

          折井クンのところに名義リストを送れば、1人につき6台くらいFOMA回線を開通できた。プリペイドを入れればもっとだ。 あとは青梅と川口と石神井と神田に融通の利く代理店を開拓して、毎月決まった台数のFOMA端末とSIMを捌いていた。 前回⑥はこちら 名義集めもそれまでのやり方に加えて、積極的に女を使うことにした。 歌舞伎町、出会い喫茶、たまに出会い系で知り合った女を色恋で落とし、最新機種を1台やるかわりにオレの仕事を手伝ってくれとケータイを契約させる。 一度回線を起こせ

        サルの商売⑩|転機

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        • サルの商売
          10本

        記事

          サルの商売⑥|ドコモの折井くん

          「アカン、しんのすけ。もう無理やわ。」 地元にいる吉村が突然電話してきてそう言った。 吉村は地元エリアで5指に入る大きなドコモショップの副店長をやっていた。俺が売っていた珍しい番号や飛ばしの一部は吉村やそのツテを介して手に入れているものだった。 前回⑤はこちら 吉村を含めたドコモショップで働く人間は派遣会社の社員で、ちょっと抱き込めば契約手続きはザルだった。FAXで名義くんちゃんの身分証送れば1時間後には開通してたからな。 というか当時はルールそのものが緩くて、20

          サルの商売⑥|ドコモの折井くん

          サルの商売⑤|中野のキャバ嬢・アリサ

          「お前の女のツレを紹介?いいに決まってるやろ。」 「じゃあ今日も店来るっていうからそのとき話してあげてよ。」 翔太は、生活する程度のカネと下半身のこと以外ほとんど何も考えていない単純なヤツだったが、男として少し変わった、というか厄介な性根を持っていた。 前話④はこちら 一言でいうと絵描き。かまってちゃんで嫉妬深くて、おまけにちとハッタリも多かった。 出会った当初からちょっと違和感はあったんだけど、このときはまだ確信がなかった。のちにメンヘラぶりを確信するんだが。

          サルの商売⑤|中野のキャバ嬢・アリサ

          サルの商売④|マイ・カラオケ・ボーイズ

          前回③ カラオケ屋のメンバーは、東京の西のほうから来ている奴らか、地方から越してきてる奴らかで構成されていた。以下かんたんなスタッフ紹介。 山口さん 店長。1児の父。この人のいうことはちゃんと聞いてた。 笹沼 キンタマササヌマ。俺の入社前に一瞬だけバイトから社員になって、またすぐバイトに戻った男。俺はコイツの替わりだったわけ。前職は金融屋。メガネと財布とウォレットチェーンがChrome Hearts、服とアクセはTenderloinというミーハー野郎だった。色黒はいいけ

          サルの商売④|マイ・カラオケ・ボーイズ

          サルの商売③|歌舞伎町←阿佐ヶ谷←地元

          20で子供ができて結婚し、24で別れてその夏に東京へ出てきた。 東京には地元で一緒にバイク乗ったりバンドやったりしていたツレの辻村がいて、最初の何ヶ月かは阿佐ヶ谷のそいつの家に泊めてもらっていた。 前回② 辻村はオレが離婚して色々と身の回りを整理して金使ったのを知っていたから、こっち来るときに30万を工面してくれた。 「お前こっち来んか。返すのいつでもいいぞ。」 それでわざわざ一人暮らしの1ルームに二段ベッドを入れてオレを迎えてくれた。あれから15年以上経ったいま、

          サルの商売③|歌舞伎町←阿佐ヶ谷←地元

          サルの商売②|猪の助言

          「目標は、もう捕まらないことだな。」 あんまり深く考えず俺はこたえた。 「それって前提だから。なにが自分の幸せか、そのためにはなにを手に入れる必要があるのかちゃんと考えてみたら?」 「なるほど。」 こいつの名前は本田恵、通称ダケイ。身長は俺より低く、体重は重い猪のメスだ。けど、俺に遠慮せず的確なことを言ってくれる貴重な女友達でもある。 3つ離れているのでオレのことをニイニと呼ぶ。 痩せればそこそこ可愛いはずなんだ、ダケイちゃん。 前回① 俺が新宿で飛ばしを売っ

          サルの商売②|猪の助言

          サルの商売①|やり直し

          恥の多い人生を送ってきた。 地元のツレに誘われるがまま東京に出たのが24歳。 それから8年間ほど、俺はロクな定職につかず女たちの情を金に替えて生活していた。 ホストをやったことはなかったが、個人で、それを仕事と考えて真剣にやっていた。 つまり、俺には常識が欠けていた。チンポで生活している男は品性や社会性とも無縁だった。 それを自覚したのは32歳のとき。ただ、すでに自由を奪われていたから後悔しても遅かった。 俺はそれまで自分のことをそれなりに真面目で正義感の強い人間

          サルの商売①|やり直し