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サルの商売④|マイ・カラオケ・ボーイズ

前回③

カラオケ屋のメンバーは、東京の西のほうから来ている奴らか、地方から越してきてる奴らかで構成されていた。以下かんたんなスタッフ紹介。

山口さん
店長。1児の父。この人のいうことはちゃんと聞いてた。

笹沼
キンタマササヌマ。俺の入社前に一瞬だけバイトから社員になって、またすぐバイトに戻った男。俺はコイツの替わりだったわけ。前職は金融屋。メガネと財布とウォレットチェーンがChrome Hearts、服とアクセはTenderloinというミーハー野郎だった。色黒はいいけど歯グキまで黒い理由が俺には最後までわからんかった。

翔太
ササヌマと一緒に金貸しやってた同い年。160cmくらいしかないが生来の女たらしで、あり得んくらい客とヤってた。かまってちゃん。「俺は一発試験で免許とってるから」と言ってたけど絶対嘘だと思う。

太一
テクノを愛するDJ。赤玉食いすぎてよく山口さんにキレられてた。「しんのすけくんこれオススメっすよー」といってCDに曲焼いて俺にくれてたな。性根のいいやつだった。けどゴメン俺4つ打ちわからんから一回も聴かんかったわ。。。

ユウタ
自分の口座を全て売り飛ばして詐欺に使われ、一生ゆうちょしか持てなくなった男。どこ行っても「カネないっす」で最終的に俺んちに住まわしてやってた。何回もヤキ入れた後輩。当時の女がブチ切れながらコイツの下着洗ってた光景が懐かしい。

つっきー
勘ぐりが激しい。こいつは最後までキックボクシングとムエタイの違いがわかってなかった。カラオケ屋内で流通する大麻を捌いてた。

まーくん
色んな女に計10回以上中絶させてた。筋彫りからいつまでたっても進捗のない元ホスト。

辻村
地元からの長いツレ。寡黙でアルバイト連中とほとんどつるむこともなくギターばっかいじってた。腕はスタジオミュージシャンのレベル。


長くなったのであとは省略。

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山口さんと辻村以外は頼りないし俺も含めて弱い人間の集まりだったけど、各自必死に生きている様子だった。あと、この頃が人生で一番笑ってたな。毎日爆笑してた。

考えたら職場で毎日爆笑できるってめちゃくちゃ幸せなことだよな。給料は普通未満、環境は大してよくないくせに離職率がやたらと低い理由が今わかった。

さて、俺は俺でカラオケ屋に入った頃、ちょっとずつ回ってくるゼニを増やさないとな、と考えはじめていた。東京で楽しく生きるにはまぁカネがかかるわけ。

それで、地元いた頃からやっていた細いゼニ稼ぎを再開した。

携帯電話の番号や(下4桁 "9000"とかの覚えやすい番号を欲しがる輩が結構いた)飛ばしを売ってカラオケ屋の給料以外の収入をちょっとずつ増やしてた。

「しんちゃん。」

何ヶ月か経ったある日、翔太が神妙な顔してやってきた。

「あのさ、遊んでる女のツレがしんちゃん紹介してって言ってんだけど、いい?」

裏スロ、出会い喫茶、安キャバクラ。かまってちゃんのコイツが誘ってくるのはいつもそんなんばっかだったから最近は躱していたところだった。

「なんだ、いいに決まっとるやん。」

つづく

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