さよならネガティブ。ホテル療養を乗り切った7つの過ごし方
こんにちは。コロナにかかったニートです。
『「コロナかも」からホテル療養までの12のできごと』を書いてから早1か月以上が経ちました。今回はいよいよ「ホテル療養中の私の生活」のことをお話します。
この1か月、あっという間だった。
ホテル療養を終えて、会いたい人に会えて、あたたかいごはんをいつでも食べられることがいかに幸せか。
そんな幸せを毎日かみしめながら過ごした、クリスマスやお正月。法務局にテレビ局に出版社に……いろいろやっていたら、1月ももう終わり。本当にあっという間だった。
でも不思議なもので、こんなにたくさん詰め込まれた1か月を過ごしても、ホテル療養当時のことは意外とよく覚えている。ツイッターでも逐一記録していたし、インパクトのある体験だったからかな。
さて、前回は『「コロナかも」からホテルに行くまでの、12のできごと』では、迎えの車を待つところまでお話しましたね。では、そのお迎えのところから、続きを。
ホテルまでの移動方法
自宅からホテルまでの移動は、公共交通機関を使うわけにはいかない。保健所が車を出してくれるという。
前回も書いたけど、送迎についてはこんなことを確認された。
・明日の朝か、昼過ぎに迎えに行くことになる。決まったら連絡する
・相乗りの場合はハイエース、ひとりの場合は普通のタクシーで迎えにいく
・荷物運びは感染防止のため手伝えないから、ひとりで運べる量にして
・待ち合わせ場所は自宅前か、近くの路地になるけどどっちがいい?
あとから再度電話があって、今回は1人のため、普通のタクシーでの送迎になった。
迎えの車が到着
13時半過ぎ。「少し早いんですけど、到着しました。ゆっくりでいいので」と、迎えの方から電話があった。
彼が家に帰ってくることを考えて、掃除と消毒をしているところだった。まだ途中だったけど、掃除機を急いで止めて、全ての荷物を玄関先に出して、キッチンペーパーと次亜塩素酸を手にした。
テーブル、リモコン、レンジ、バスルームのドア、電気のスイッチ、玄関のドア。順番に消毒して、最後に手袋をして、家を出る。
「玄関に消毒液とキッチンペーパーを置いたから、拭きながら上がってね」同居中の彼に、そうメッセージをいれた。
テーマパークの大きなお土産袋2つと、大きなリュック1つ。倦怠感の残る体には、ずいぶん重すぎる荷物だった。車までの辛抱だと思い、転ばないように細心の注意を払いながら、1段1段慎重に階段を下りる。
コロナの感染者数が激増していた当時の札幌。部屋着のような厚い服、三重にしたマスク、そして大量の荷物。私がどこに向かっているのかは、一目見ただけでわかるだろう。
「誰にも会いませんように、誰にも会いませんように……」
祈るように心の中で唱えながら、手すりにも触れないようにしながら、アパートを出た。
特別仕様のタクシーに揺られて
アパート裏の路地へ出ると、迎えの車が停まっていた。写真のような、本当に普通のタクシー。
でも、それが私の迎えだということはすぐにわかった。フロントガラスから覗く防護服姿の2人組は、普通のタクシーと呼ぶには物々しすぎた。「空車」「満車」といつも書いてあるところには「救援」と書いてあった。
※画像はこちらのタクシー会社さんからお借りしましたが、実際の送迎車とは関係ありません。
前の座席と後ろの座席は、透明なビニールシートで隔たれていた。上下左右がしっかりとテープで留められていて、飛沫も空気も通らないようにしてある。
車内の空気は重々しい。誰一人として口を開かない。「せめてラジオくらいつけてくれたらいいのに」と思ったけど、それすら口にしづらい雰囲気があった。社内に響く声といえば、助手席の方の「乗車しました」「残り5分で到着します」というどこかへの電話だけ。
感染対策は万全とは言え、「感染したくない」という乗務員の気持ちが伝わってくるようだった。「私は隔離対象の感染者なんだ」と改めて実感した。
途中何台もの車がすれ違ったけど、その物々しさに大勢が目を丸くして過ぎ去っていくのが見えた。その度に、なんとなく顔を伏せた。
「早く到着してくれ」という思いでいっぱいだった。
ホテルの裏口で見たもの
ホテルについた。車は表の見知った入り口ではなく、裏にまわった。
先に1台の救急車が停まっていた。
乗務員の電話の口ぶりからすると、この救急車が出るまでは、車内で待機しなければならないらしい。入口で私が救急隊員と接触したらいけないものね。
待つこと5分。1台の担架が運ばれてきた。60代くらいのおばあちゃんが横たわっている。点滴と一緒だ。救急隊員の足取りを見るに、緊急性は高くなさそうだった。
私が療養することになったのは、高齢者や疾患持ちなど、多少重症化リスクのある人がいくホテル。
「私があの担架に乗る可能性もあるのかな」
ポジティブでいようとしていたけど、ふとそんな不安がよぎってしまった。
いけないいけない。
そこに「じゃあ降りてください」と乗務員から声がかかる。気づけば救急車のサイレンが遠のいていた。
「あそこのビニール袋に、あなたの名前が書いてあります。袋の中に部屋番号の書かれたルームキーがあるので、それを持ってまっすぐ部屋に向かってください」
今しがた担架が通った入り口から、さっきよりずっと重く感じる荷物を背負って、ホテルへ入った。
ホテルへ
入るとすぐに、こんな貼り紙があった。なるほど、内線で案内があるのか。
見上げると、天井は自宅の2倍ほどの高さがあった。ビジネスホテルだけど、立派なホテルだった。
左手には、自分の身長より1.5倍ほど高いパーテーションが並んでいた。PCや電話を片手に、忙しそうにする看護師さんたちの様子が少しだけ見える。
中の人は防護服などを着ていない。恐らく、このパーテーションが「感染者」と「健康な人」の境界なのだろう。そう考えると、この壁がやたらと高く感じた。
1週間過ごしてみてわかったけど、彼らは基本的にパーテーションからこちら側には来ない。唯一来るのは、1階の「診察室」が担当の医師・看護師か、よっぽど体調の悪い人への往診時だけだろう。
私の部屋は5階だった。エレベーターのボタンは一部押せないようになっていたので、おそらくそこが関係者の待機場所や物資置き場になっているのだろう。
ホテル療養時の体調
部屋に到着してすぐ荷物を置き、ベッドに身を投げた。疲れた。とても疲れた。
ここ数日ずっと家ですごしていたので、久しぶりの外出は体力を大きく消耗した。さらに、呼吸の調子も万全ではなかったので、部屋に到着するころにはすっかり息があがってしまっていた。酸欠なのか、頭痛も少しした。
ホテル療養時の症状は以下の通り。療養終了までずっとこのような状態が続いた。
・36.5~37.3℃くらいの熱
・嗅覚異常(匂いが分からなくなるタイプ。異臭がするタイプの人もいるらしい)
・つーんとした鼻の痛み(嗅覚異常の症状の1つらしい)
・薄い煙の中で呼吸をしているような、呼吸のしづらさ
・鼻水
・疲れやすさ
ちなみに発症初日の症状は以下の通り。
・38℃の熱
・全身の倦怠感
・ひどい悪寒
・下半身の痛み
・頭痛
・咳
・鼻水
発症初日よりはずっと体調が良くなっていた。倦怠感や下半身の痛みが消えてくれたので、動いたり作業をしたりするのも以前ほど苦痛ではなくなっていた。
しかしそれが治るのと同時に、嗅覚異常や若干の呼吸障害が出てきたのが厄介なところ。常にストレスはあったし、「いつ急変するんだろう」という不安もあった。
更に「疲れやすさ」も厄介だった。コロナの後遺症として「疲労症」というものがあるそうだが、その手前のような状態が、ホテルに移った頃から療養終了後まで続いた。
それでも、初日のような辛い症状が長引かなかったことや、この後も急変のないまま療養を終えることができたのは、本当に幸運だったと思う。
ホテル療養についての案内
持ってきた経口補水液を飲もうとベッドから手を伸ばした時、ちょうど内線が鳴った。そうだ、案内があるんだ。
まだ重い体を起こして、電話を取った。看護師さんではなく、事務局の人だった。ホテルは医療従事者だけで回しているのではなく、「事務局」という市の職員さんたちも協力して運営してくれているのだ。
電話口の男性は、慣れた口調でホテル療養の案内を始めた。
「最初にお渡ししたビニール袋の中に、療養のしおりが入っています。それに沿って説明しますので」
ビニール袋の中には、体温計・パルスオキシメーター(酸素飽和度をはかるもの)・ボールペン・マスク・ルームキーと、それから「宿泊療養のしおり」が入っていた。
療養のしおりには、ここでのルールや、体調不良時にどうしたら良いか、差し入れ時のルールなどが書いてあった。
ホテル内のルールとタイムスケジュール
ホテルでは基本的に自由な生活ができるが、2つだけ大事な決まりがある。
1つ目は、お弁当配布時以外は部屋の外へ出ないこと。感染拡大防止のためには、当然必要なルールだ。もちろん、友人と同じタイミングで療養している場合でも、部屋の行き来はしちゃいけない。家族連れは大体同じ部屋で療養しているようだったので、安心してほしい。
2つ目は、症状報告、体温測定、お弁当配布などのタイムスケジュールを守ること。ホテルで決まっているタイムスケジュールはこんな感じだ。
07:30|朝の検温・オンライン症状報告
08:00~09:00|朝食のお弁当配布
12:00~13:00|昼食のお弁当配布
17:30|夕方の検温
18:00~19:00|夕食のお弁当配布
お弁当は、食べないことがあっても問題ない。私も朝はあまり食べないしゆっくり寝たい方なので、取りに行かなかったこともあった。
ただあらかじめ補食(体調不良者用の経口補水液・レトルトおかゆなど)や薬をお願いしている場合は、取りに行かないと面倒をかけてしまう。こういったものは番号が記載された袋にお弁当と一緒に入れて、会場の隅に別で置いてくれるため、これを取りに行き忘れたりするとすごく心配される。
私は混雑回避のため比較的ゆっくりお弁当を取りに行くことが多かったのだけど、配布時間終了の15分前になって「補食、取りに来られますか?」と内線が来たことがあった。
ちなみに朝の症状報告も、あまり遅くなると内線が来る。一度寝坊してしまったことがあって、「大丈夫ですか?」と連絡をもらったことがあった。すみません。
逆に言えば、そういったところで療養者の安否をしっかりチェックしているということ。ありがたいシステムだ。
ホテルで決まっていることはそのくらい。他にあるとすれば、騒音に配慮するなどの一般的な宿泊時のマナー程度だ。シャワー・お風呂はいつでも自由に利用できるし、テレビも自由に観られる。消灯時間なども決まっていなかった。
ホテルに行くまでは「囚人のような息苦しい生活をするのかな」と少し不安に思っていたけど、全然そんなことはなかった。
体調不良時のこと
療養中の体調管理はしっかりしている。朝と夕方に検温・酸素飽和度の測定を行い、悪かった方の数値を朝の症状報告時に記載するよう決められている。
症状報告は、スマホでQRコードを読み込み、オンラインで行う。操作は難しくなかった。
体温・酸素飽和度・症状を記載して送信すると、待機している看護師さんが確認してくれる。症状があるときや備考欄に不安なことを記載した時は、30分以内には内線で折り返しをくれた。
身体的な症状だけでなく、精神面への配慮もある。「心の健康づくり電話相談」という部門が用意されている他、療養のしおりには「友人と連絡を取るように」「テレビなどのコロナ情報は極力見ないように」というアドバイスも記載されていた。
また体温が39℃以上ある時や酸素飽和度が95%以下の時、体調が悪い時、不安な時は症状報告の時間に関係なく連絡するよう、いろんな看護師さんから口を酸っぱくして言われた。
このホテルには24時間看護師さんが常駐している他、月~土の9~17時までは医師もいる。医師のいない時間でも、看護師さんがすぐに連絡を取ってくれるそうだ。重症化リスクの高い人が行くホテルということもあり、安心して過ごせる医療体制が整えられていた。
看護師さんとのやりとり
看護師さんとは、1日に2回くらいは話していたと思う。症状報告で気になることを書いた時にはすぐに内線をくれたし、胃の調子を悪くしていた時は「今日はお弁当食べられそう?おかゆ出しとく?」という内線もくれた。
それから、こんなこともよく言われた。
「携帯に私たちの番号を登録して、枕元に置いて寝るといいよ。いつでも駆けつけるから、安心して過ごしてね」
そんな看護師さんたちの声は、いつも本当に優しくてほっとするものだった。私はただ「忙しいのにごめんなさい」と謝ることしかできなかった。
「いいんだよ、謝らないで。これが私たちの仕事。早く元気になってもらえるのが、私たちにとって1番うれしいことなんだからさ!」と言ってくれた。
看護師さんとのやりとりで1番印象的だったのは、私が胃を悪くしておかゆと薬を出してもらった翌日のこと。「おかげさまで、今朝はおいしくご飯が食べられそうです」と症状報告時に備考欄に書いたところ、すぐに折り返しの内線がきた。
「メッセージみたよ~~~!ありがとう!よかったねえ、治ったの!メッセージをくれる人は多くないからねえ、私たちも嬉しいし、すごく頑張ろうって思えるんだよ。ありがとうね!」
嘘じゃなくて、慰めじゃなくて、本当に喜んでくれているのが声色から伝わってきた。私がぽちぽちっと送った簡単なメッセージだったけど、送ってよかった。少しかもしれないけど、私も力になれてよかった。
ときには穏やかに優しく。ときには元気に明るく。忙しいにもかかわらず私を思いやってくれるその声は、すごくすごく頼もしかった。
本当にありがとうございました。
差し入れのこと
しおりを見ると、どうやらこのホテルでは差し入れもできるようだった。差し入れ不可のところもあるとツイッターで見ていたので、ありがたいなと思った。
差し入れのルールをまとめると、こんなかんじ。
・スーパーなどで購入したものはレシートを確認の上3日目から差し入れOK(初日から差し入れが殺到すると処理しきれなくなるためだと思われる)
・自宅の洋服等やレシートの無いものは5日目から差し入れOK(自宅のものにウイルスが残っている可能性があるため)
・前日の午前中までにホテル事務局へ申告が必要(差し入れする人の名前や車種など)
・差し入れ可能時間は基本的に午前中のみだが、それ以外の時間も応相談
・受け取りから本人への受け渡しまで時間がかかることもあるため、冷蔵庫保管の必要な生ものなどはNG(果物は微妙だけど、みかんはOKだった)
・レジ袋に大きく療養者のフルネームを書いてもってくること
受け取った荷物は、お弁当配布時に隅の机に置いておいてくれる。共用スペースに置きっぱなしになるため、貴重品などの差し入れも控えるように言われた。
私の場合は、母が5日目に差し入れをしてくれた。「もう私帰るからいいのに。スタッフの人も忙しいんだよ」と言ったけど、母は「もう行くって決めたから!」と譲らなかった。
「お母さんは心配するのが仕事」というメッセージを送ってきたくらいだ。よっぽど心配で、とにかく何かしてあげたい気持ちだったんだろうな。
母が差し入れてくれたのは、以下のもの。
・カップのコーンスープ
・梅干し
・ふりかけ状の韓国のり
・みかん
・ビタミンタブレット
・鼻うがいキット
・次亜塩素酸水
ほとんどが母のチョイスだったが、次亜塩素酸水は私のリクエスト。ホテル消毒液が用意されていなかったので、お弁当配布場所の共用レンジや、エレベーターのボタンなどから再感染しないか不安だった。部屋に戻ったらウェットティッシュでノブを拭いたりしていたけど、心許なかったので消毒液を頼んだ。おかげで残りの数日は、安心して過ごせた。
ちなみに、トイレットペーパーはホテルから支給されるが、ティッシュや他のアメニティは持参するように言われた。しかし、実際ホテルに行ってみると用意されているものも多かった。忘れてしまった場合も慌てず、まずはホテルの方に相談してみたらいいと思う。
自宅療養時の差し入れに続き、2回目の差し入れもナイスチョイスな物ばかりだった。差し入れなんていらないよって言ったけど、ありがたかった。ありがとう母。
差し入れの後、母から電話が来た。
「部屋5階だっけ?窓見て窓」というので外を見ると、母が遠くの車から顔をのぞかせていた。ちょっとでも顔を見られてなんだか嬉しかった。
ホテルでの過ごし方
普段の1週間は割とあっという間だけど、「ベッドとテレビくらいしかないホテルの部屋で7日間を過ごさなければならない」と思うと、結構長くて憂鬱に感じた。
でも、そんなことは想定の範囲内。
具合が悪いとはいえ、休みは休み。せっかくだし、なるべく楽しいことをして過ごそうと思い、いろんなものを持ってきた。
そんなホテルでの私の過ごし方を、少し話したいと思う。
ホテルでの過ごし方①|映画鑑賞
1番に思いついたのは、映画鑑賞だった。せっかくだから映画三昧の療養生活にしようと思っていたのだ。
私は映画が好きで、邦画も洋画もアニメ映画も観る。しかし映画を観るにはまとまった時間が必要なので、普段はたくさんの映画を観るのが難しい。
この療養期間は、映画を観るにはうってつけだ。
持ってきたPCを開いて、サブスクにアクセスする。PCの画面は小さくて観づらいので、HDMIケーブルもばっちり持ってきた。テレビとPCを繋げば、大きな画面で映画を観ることができる。
療養中は1日1~2本くらいの映画を観ることができた。内容は暗くならないものに限定。三谷幸喜の映画や、明るいミュージカルなんかを観て過ごした。
『療養中の映画鑑賞のすゝめ。おすすめサブスクも』には、そのあたりのことを詳しく書いている。いろんなサブスクを契約してみた私の感想も載せているので、よかったら。
映画が好きな人は、これだけであっという間に療養生活が終わってしまうのではないだろうか。
ホテルでの過ごし方②|読書
ホテル療養は、積読たちを消化するのにもうってつけ。
ホテルのふかふかのベッドに座って、壁と背中の間に枕を挟んで背もたれに。デスクに紅茶かコーヒーを置いて、足を伸ばして本を開いたら完璧。
昼は窓からの日光を明かりにして、日が暮れたらベッドライトをつける。疲れたらそのまま、横になって読むのもいい。
そういえば会社に勤めていた時は、こんな時間が恋しくて仕方なかった。どうにも忙しいと、心も時間もゆとりがなくなってしまう。せっかく空いた時間も、家事や睡眠にばかり時間を費やしてしまう。これを読んでくださっている方の中にも、そういう方はいるのではないだろうか。
罹患すると「会社に行けないどうしよう……」と焦ってしまうかもしれない。たぶん、具合も悪いと思うし、ほっといたら気持ちは落ち込んでしまう一方。
でもなるべくなら「まとまった休みが取れたぞ!何をしよう!」とポジティブに考えてほしい。病は気から。
ホテルでの過ごし方③|ちょっとした運動
ホテルでずーっと座ってすごしていたら、体力が落ちそう。でも体調はあまり良くないし、しっかりした筋トレもできない。
だから、ストレッチだけはするようにしていた。筋肉をしっかり伸ばすと気持ちいい。
ストレッチ動画を、よく見てた。あとは、横になって映画を観ながら足あげの運動をしたり。あとはエレベーター待ちの時にぐるぐる歩きまわるとか、ちょっと屈伸をするとか。
方法はなんでもいいので、とにかく体を動かすことを意識してみるといいと思う。ちょうどいい頻度や方法は人それぞれあると思うので、体調と相談しながらね。
ホテルでの過ごし方④|家族・恋人・友人との連絡
私はもともと、人と一緒にいるのが好きなタイプの人間だ。週末を1人で過ごすことすら珍しいのに、10日間も誰にも会わないなんて初めての経験。
正直言って、辛かった。
何か面白いことや悩みがあっても話せないし、お笑い番組(ちなみに流れ星とアキナが好き)だって1人で観てもあまり笑えない。
そんな中、家族・恋人・友人との連絡は1番の楽しみだった。
母はしょっちゅう連絡をくれた。「ご飯食べた?」「熱は?」「鼻は?」「なまるから体動かしなよ」って。「わかったわかった、はいはい」と流しながらも、ありがたいなあと思っていた。
彼や友人はずっと、いつも通りに接してくれた。それがとてもありがたかった。母はともかく、恋人や友人からも病人扱いされては、コロナになった事実をありありと突きつけられられるようで落ち込んでしまっていたと思う。
テレビ電話を繋ぎながら食事したり、同じ映画を観たり。お互いPCで作業をしている間も、テレビ電話を繋いでいるだけで少し一緒にいるような気持ちになれた。
「自分の生活もあるだろうに、こんなに連絡して迷惑じゃないかな」という気持ちも抱えていたけど、「大丈夫だよ」「自分も話したかったんだ」「さみしいね」と彼が声をかけてくれたのが嬉しかった。
もしあなたの家族・恋人・友人がコロナにかかってしまったら、なるべくいつも通りに接することを心掛けてほしい。そうして楽しく話してくれることが、療養中何よりの癒しになる。
みんなのおかげで、私は「頑張って治して、早く帰ろう」という前向きな気持ちになれた。
ただ1つ、あまりに体調が悪い時は、連絡を取るのすら辛いこともある。「今は話したい」「今は休みたい」という希望はきいてあげてほしい。
ホテルでの過ごし方⑤|お風呂
私はお風呂も好きだ。本と水を持ち込んで、ミルクの香りの入浴剤を入れて、音楽をかけながら長湯するのが好き。
療養先でも、もちろんやっていた。私の療養先は湯舟があった(シャワーのみのところもあるらしい)ので、入浴剤も持ち込んで、いつも通りのお風呂を楽しんでいた。むしろ家の湯舟よりも少し広くて、快適なくらいだった。
ただ、スピーカーを置いてきてしまったのは失敗だった。スマホのスピーカーで十分だと思っていたけど、音楽好きとしてはやっぱり、スピーカーは持ってくるべきだと思った。
感染防止のため清掃は入らないので、お風呂も自分で掃除せねばならない。私はさっと洗い流すくらいでも十分だと感じたけど、きれい好きな方はスポンジなどを持って行った方が良いかも。
ホテルでの過ごし方⑥|食事
私は、食べるのも好きだ。昔のアルバムを開くと、3歳くらいの私が、空の茶わんを振り回して泣いていたり、キッチンのパンをわしづかみにして食べている写真なんかがあったりする。
今もその食べ物への愛は変わらない。ということで、療養中の楽しみランキング上位にいたのが「食事」だ。
お弁当は毎食とても楽しみにしていて、全て写真を撮り、感想を書き、その中でも特に「嗅覚異常でもおいしかったもの」をピックアップし、更に提供してくれた弁当屋まで調べていた。我ながらなかなかの徹底っぷりである。
その内容は全て『嗅覚異常の私がお送りする、ホテル療養中の15個のお弁当レポ。』に記載した。記事はもちろん無料なので、よかったら。
全体的においしかったし彩りもよくて、本当に恵まれていたなと思う。強いて言うなら、揚げ物が多く野菜は少なめな節はある。
また白いご飯ばかりでは飽きてしまうし、温かい汁物も恋しくなる。お弁当という性質上仕方のないことだけどね。
それを補うためにふりかけ・韓国のり・梅干し・インスタント味噌汁・みかん・野菜ジュースを持って行ったのはナイスだった。ビタミンサプリなんかがあってもよかったかもしれないな。
最近は地域による療養中のお弁当格差が少し話題になっている。豪勢なものを出す必要はないけど、療養にふさわしい十分な栄養の取れる食事が、どこの地域でも出るようになるといいなと思う。
ホテルでの過ごし方⑦|寝る
いろいろ楽しい過ごし方ばかり話してきたけど、体調不良時の鉄則は「とにかく食べて、水分を取って、よく寝る」だ。どんな娯楽より大事。たくさん寝て、たくさん汗をかいて、早く治しましょう。
ホテルの枕は少し高くて合わないかも。不安な人は枕を持っていくと良さそう。私は枕は持って行っていなかったので、ホテルの余った毛布を折りたたんで枕代わりにしていた。
寝る時は、乾燥対策を忘れずに。濡らしたバスタオルをかける、ベッド脇に1杯のお水を置く、加湿器を置くなどの方法がある。ただ加湿器は借りられない可能性も。元気なうちに小さな加湿器を買っておくと良い。ペットボトルに装着するものや小さなものなら、100均でも手軽に手に入る。
それから、もう1つ。
内線やスマホは、すぐ手に届くところに。
スマホには必ず、看護師さんや医療機関の電話番号を登録しておくこと。
何より大事なこと。覚えておいて。
不安な気持ち
先に書いた通り、ホテルにうつってからの私の症状は安定していた。最後まで急変もなかった。
ただ、不安な気持ちはどうしても、後をついて回った。
もともと肋間神経痛という胸のあたりが時々ちくりと痛む疾患を持っていたのだけど、療養中に胸が痛むと「急変」という言葉が頭をよぎった。
「遺書とか書いとく?」とも思った。書かなかったけど。書くこと思いつかないし。
でも、やっぱり不安になっても何もいいものを生まないんだよね。
未知のウイルスに感染して、体調が悪くて、1人ホテルに隔離されてたら、そりゃあ気持ちも落ち込んじゃう。
黙ってそのまま引っ張られるのは絶対にいけない。
自分の好きなことをして、好きな人と喋って、「休みだぞ~!」とポジティブに有意義に過ごす方法を考えてほしい。
安心して楽しむために大事なのは「知って備えること」。
看護師さんの電話番号を登録して枕元にかならず置いておく。
不安な疾患は先に伝えておく。
体調の変化をスマホにメモしておく。
そんなふうにできる準備を全部したら、あとは精いっぱい楽しく過ごす方にシフト。むずかしいかもしれないけど、病は気から。気持ちを明るく保つのは大事。
療養中に得た1番の知恵は、これかもしれない。
療養終了の条件
そんなことをしながら過ごした7日間。長かったけど、過ぎてみるとあっという間だったような気もした。
自宅に帰れる条件は2つ。
①発症から10日が経過
②最後の72時間で、高熱や呼吸障害などの重篤な症状がないこと
「今日から72時間、問題がなければ予定通り帰れますよ」
「もう問題ないですね。回復おめでとうございます。明日の10時にホテルを出られることになります。お迎えの方にご連絡を」
そんな内線が入ったら、療養終了の合図。脱出ゲームのクリア時のような、そんな気持ちになった。
療養終了当日の朝
帰る日の朝に限って寝坊して、バタバタしてしまうのは、旅行の時のお決まり。行きは荷物がきれいに収まるのに、帰りはなぜかバッグからあふれてしまうのも。
帰りの荷物はお土産袋2つに、レジ袋2つも追加。パンパンに詰めたら、全部廊下へ。
最初に部屋に用意されていた大きなゴミ袋に、全てのゴミ、アメニティ、シーツ類、バスマットなどを入れる。袋を二重にしたら、口をぎゅっと縛って、部屋の隅へ。
またパンパンに膨らんだリュックを背負って、照明用に挿していたルームキーを抜く。映画三昧で酷使されていたテレビも、夜ふかしタイムを照らしてくれていたベッドライトも、全部が消えて部屋はしんと静まりかえる。
学生時代ベルガールをしていたこともあって、もともとホテルは好き。旅行を彷彿とさせる、非日常的なこの空間が好きだ。
でも、療養なんてもう勘弁。次に来るなら、普通の宿泊をしたい。
深夜にチューハイとタン塩なんかをコンビニに買いに行って、朝食ビュッフェのボイルウインナーにスクランブルエッグを乗せて食べるのもセットで。
「じゃあね、ありがとうね」
なんて心の中で呟いて、7日間を過ごした部屋を後にした。
また荷物が重い。行きよりももっと重い気がする。
こんな時に限って、エレベーターがなかなか来ない。ホテルの玄関って、こんなに遠かったっけ。服の中で滲む汗が気持ち悪い。さっきシャワーに入ったばかりなのに。
そんなことを思いながら、7日間恋しくて仕方なかったホテルの玄関をくぐった。
久々の外は、雪が降っていた。積もった雪が白くて眩しい。久しぶりの外の空気。鼻がつんとするくらい冷たかった。
来るときは積もっていなかったから、療養中脱ぎ履きがしやすいサンダルできてしまった。靴下が少し濡れて冷たい。
「10時に退所の真琴さんですね」と事務局の女性から声がかかる。きちんと人の顔を見て話したのは、7日ぶりだ。
「ルームキーなどは、そこのテーブルに置いてください」
7日間お世話になったルームキー、体温計、パルスオキシーメーターが入っていることを確認して、袋をテーブルに置いた。
もう、毎日自分の体温や酸素飽和度を測る必要はない。これで私は晴れて「感染者」の肩書きを脱したのだ。
「お世話になりました」と顔をあげる。
療養は終わった。
しかし「お疲れさまでした、帰って大丈夫ですよ」と言う事務局の女性は、テーブルを隔てて2mも向こうから私に声をかけるのだった。
問題はまだまだありそうだなと思った。
久しぶりのぬくもり
「おかえり」
玄関脇に停めた車の横で、待っていてくれた彼。
荷物を受け取って「重いね、よくこんなに持ってきたね」と彼が笑いかける。
グレーのコートの肩に少し積もった雪と、手の冷たさが愛おしい。
頬をかすめる雪が冷たい。
それでもその日は、なんだかとてもあたたかかった。
さいごに
以上が私の療養生活でした。長くなっちゃった。すみません。
帰り道にローソンに寄ったのだけど、久々に好きな食べ物を好きなように買える、そんなことがとても嬉しかったです。
その気持ちをそのままツイートしたら、たくさんの方が「よかったね」とメッセージをくれたり、いいねを押してくれたりして、もっと嬉しかったです。
それから、帰ってから彼が作ってくれたなべ焼きうどんが、これまたとてもおいしかった。療養中に出たお弁当もおいしかったけど、誰かが私のために作ってくれた、ほかほかなごはんのおいしさってほんとーに格別!
途中でも伝えたけど、コロナにかかった時に1番大事なのは「ポジティブに考える」ということ。
会社や周りの人にかけた迷惑が気になるかもしれないし、責任も感じているかもしれないけど、それよりまず自分が元気になることが大事。
病は気から。
落ち込んでもなにも生まないもん。
だから、いっそ「休みだ~~~!何をしようかな!」という気持ちでいた方が、治りも早くなると思います。
もちろん、感染対策は日頃から怠らないでね。
ポジティブになろうとは言ったけど、罹患して改めてコロナって最悪だなと思いました。みんなに心配や迷惑をかけるし、症状は辛いし、後遺症も最悪。罹患して2か月たった今も、嗅覚異常が完治しません。(後遺症についてはこちらの記事にまとめました)
あくまで「かかったら」、ある種の諦めをもって、楽しく過ごせる方向に考えを変えていこうね。
もし友達がコロナになったら「できることあったら言ってね!元気になったらまた遊ぼうね」と言ってあげてください。
部下や同僚がコロナになったら「報告してくれてありがとう。仕事のことは大丈夫だから、まずはゆっくり治して」と言ってあげてください。
責めたりせず、かといって過剰な病人扱いもせず、いつも通りに接してくれるのが1番嬉しいです。
いくら対策していても、かかる時はかかってしまいます。
今すべきなのは、最低限の感染対策。
手洗い・うがい・消毒・マスク・換気、それから人との接触の制限。
そして、かかった時のために、かかったらどうなるのか・どうしたらいいのかを「知って備えておく」「視野も心も広く持つ」ということ。
「罹患した人が悪い」と責めるのではなくて、「次は自分がその立場になるかもしれない」「自分だったら、どんな言葉をかけてほしいだろう」と考えて、相手の立場に立ってサポートしてあげてください。
「明日は我が身」です。
こんな考えが、たくさんの人に浸透したらいいなと思います。
それでは、このへんで。
私に、コーヒーを一杯ごちそうしてくれませんか。