チームでの強みの活用は「ジャズ・アンサンブル」である!? ~論文レビュー『組織における強みの活用をマルチレベルの構成要素として考える』(1)~
こんにちは。紀藤です。本記事にお越しいただき、ありがとうございます。
さて、今日のお話は「個人の強みをチーム(組織)で活かす」というテーマです。
2022年の論文ですが、「組織内の相互作用を踏まえて、強みの活用を考える」という、これまでの研究を更に発展させた研究となります。キーワードは「集団的強みの活用(Collective Stregnth Use)」です。一言感想を言うならば、めちゃくちゃ勉強になりました。ということで、内容をみてまいりましょう!
論文の全体像をざっくり解説
最初にお伝えしますと、本論文、長いです。そして内容も身がぎっしり詰まったカニのように、味わい深く濃厚です。よって合計3回に分けてお伝えしたいと思います。
本論文の目的
本論文での目的は、以下の3点です。
1,「組織における強みの活用」をより深く理解する
2,「チームが個々のメンバーの強みをどのように活用しているか」を調査する
3,トランザクショナルメモリー理論を活用した「強みの認識・信頼・調整を行うことによるチームのパフォーマンス向上の可能性」をみる
本論文の研究モデルは以下のように紹介されています。
本論文の内容
合計9章に分かれており、以下の章立てになっています。そして本日はこの内容の1~2章を解説していきます。
個人の強みをチームで活かす
はじめにお伝えしたいのが、「個人が強みを活用する」ことと、「チームの中で個人が強みを活用する」ことは若干違う、ということです。そしてその違いを解き明かすのが本論文の一つのテーマにもなっています。
より正確にいえば、「個人が(一人で勝手に)強みを活用する」ことと、「個人が(チームの相互作用の影響を踏まえた上)で強みを活用する」ことは、考えるべき要素が増えて複雑になる、ということ。まずはこの違いを見ていきましょう。
チーム内での「個人の強みの活用」は、複雑で難しい?
個人において、「強みの活用」について多くの研究があります。「強み」とは「その人が良いパフォーマンスを発揮したり、ベストを尽くしたりすることを可能にする特性(Wood ea al, 2011)」とも説明されます。
個人がその人の「特徴的な強み」(=シグニチャーストレングス。通常3~7つ持っている)を活用することで、ポジティブな感情が高まったり、最高の自己像に近づいたり、創造性が高まったり、幸福度が高まったり、ワークエンゲージメントが高まり仕事のパフォーマンスも上がるなど、様々な効果があることが知られています。
しかし、「チームの中で活かす」となると、話が複雑になります。繰り返しになりますが、チームではメンバー間の相互作用が起こるからです。
チームの中での強みの発揮は「優位な偏り」が優先される
たとえば、その個人の強みが「人の気持ちに共感する」であったとします。人への共感をすることが「自分らしさ」を感じると自分でもわかっている。しかし、チームの状況を見た時に、たとえば「うちのチームで、データ分析をしないといけないけど分析することができる人がいない。ちなみに、あなたはメンバーの中では比較的「分析する力」があるよね。だからお願い」と求められることもあるわけです。
別の表現で言えば、チーム(組織)で強みを活用する場合は「個人の中での優位な強み(かたより)」ではなく、「チームの中での自分が持っている相対的に優位な強み(かたより)」が優先されることもある、ということです。”個人の中”では「共感性」という特徴的な強みがあっても、”チームの中”で求められることは、(個人的にはさほど強みとも思っていない)「分析志向」が重宝され感謝されるということは、現実には起こりえます。
以下、関連する話を、論文から引用いたします。
余談ですがこの話に共通する本は、書籍『天才性が見つかる才能の地図』でも、同様のことが書かれています(ご興味がある方はこちらの記事もどうぞ)。
少し長くなりましたので、この「集団的強みの活用」に役立つ考え方と理論については、次の記事に続けたいと思います。
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