今週の一冊『天才性が見つかる才能の地図』
こんにちは。紀藤です。今日は「お勧めの一冊」をご紹介したいと思います。では、早速まいりましょう!今週の一冊はこちらです。
注目度が高まっている「才能」や「強み」
「才能」や「強み」については、最近ますます注目度が高まっています。有名なところで言えば「ストレングス・ファインダー」の無料テスト付きの書籍『さあ、自分に目覚めよう!』は、日本経済新聞出版社の2022年の売上ランキング1位でした。また、2023年11月10日にはフジテレビの『ノンストップ!』という番組で、ストレングス・ファインダーの特集が30分ほどの枠で放映されました。
不透明な時代において、何を頼りにできるのだろうか? 会社や組織もずっと頼れなさそうだぞ。。そんな中で、最終的に頼れるのは「自分自身」。そんな自分には一体どんな才能や強みがあるのか、自分には秀でた何かがあるのだろうか。それを知りたい!教えてほしい!という欲求が生まれるのは、自然な流れとも言えそうです。
本書の特徴
さて、そんな「才能」をテーマにした本はたくさんあるわけですが、この本はそれらと何が違うのでしょうか。
私が思うのは「科学的論文を渉猟して書かれた本」であること。
著者はの鈴木さんは16才の頃から年間5000本もの論文を読み続けているサイエンスライターです。彼の著書は『YOURT TIME』『無=MU』など、多くのヒット本があります。
彼の書籍では、前半で科学的なデータを紹介する「知識の伝達」があり、後半にはそれらの知識をいかに活用するのかという「実践のヒント」が紹介される流れが多いように感じます。『理論✕実践』という構成。これが、彼の作品に説得力を与えています。そして今回の書籍もそうした構造で書かれています。
では、具体的にどのようなことが書かれているのでしょうか?
以下、書籍で何度も紹介される本書のキーフレーズをご紹介いたします。
これまでの「才能本」をより掘り下げる内容
まず、本書の冒頭で「何をもって成功とするのか」の定義をしています。本書では成功の定義を「社会的地位」「収入」という2つが高い状態としています。(「幸福度」を用いないのはそれが主観的な状況であるため、判断が難しいからとしています)
第一部では「才能の誤解」を解いていきます。才能にまつわる様々な研究から、著者はこれまでの研究と違った立場を打ち出しています。たとえば、
「好きや得意なことで才能を決めてはいけない」
好きなものは変化していく。また好きなものを追えば社会で活躍できるというデータはない。あるいは好きなものは必ずしも社会から求められていないことも多い(好きや得意というと、多くはスポーツや音楽、芸能系になることも多いが、それらの仕事は社会全体の3%しかない)
「自然とやってしまうことに注目してはいけない」
自然とはやっていないが、能力が高いこともある
「長所を伸ばすより、欠点を直す方が効果量が大きい」
既にモチベーションが高い場合は、欠点を意識したほうがパフォーマンスが上がりやすい(ただし、若手の場合は、得意なことに集中したほうがモチベーションはあがりやすい)
「成功に欠かせない能力というものは存在しない」
IQと社会的成功の相関関係はない。また、遺伝や生まれの問題より、環境の影響のほうが大きい
などなど。
これまでの才能や強みの言説について、主にその反証行う形で展開をしていきます。もちろん、これまでの才能や強みに関する話を、必ずしも否定するわけではありません。
ただ、どこかで感じている「強みや長所に注目しただけでは、パフォーマンス上がらない」と感じる思いに関連する背景や理論を、丁寧に紹介しているイメージです。「才能に注目すればOK」という甘い果実に主張を単純化するのではなく、違った視点を提供することで、「才能を発揮して成果につなげるルール」を、より正確に伝えることができる話になっています。
「才能はかたよりである」
個人的に、本書の一番おもしろかったところは「才能のルール②才能とは、グループ内の「かたより」が評価された状態である」という部分。
ちょっと分かりづらいので私の例で説明します。
例えば、私は今大学院のランニング部なるグループに所属しています。私はこのグループ内では「ランニングが得意な人(才能がある人)」と評価をされます。
これはランニング部というグループ内で、私のランニング経験が「かたよっているから」です。しかし、大学院のグループの中では私の「論理的思考力」はかたよってはいません。本グループ内では、私の論理的能力はごく平凡です。それは大学院には論理的な人はゴロゴロいるから。
一方、ウルトラマラソンメンバー(260kmの大会などに出るグループ)のあるグループの中では「ランニングは普通」、しかし「論理的思考力は大学院行っているので強め」という”かたより”が生まれたりします。
私持っている能力は絶対的には変わらないはずですが、「どのグループにいるのか」によって、才能として評価されるものが変わってくる、といこもです。(ちょっと乱暴な例ですが、そんなイメージ)
人が評価され、地位や収入が上がる事を成功とするならば、
「1)自分が置かれている場所で評価される」または、
「2)自分が評価される置き場所を見つける」のいずれかになります。
「2)自分が評価される置き場所を見つける」のは、それなりの分析時間やトライ&エラーも必要になります。ゆえに、最初の一歩としては「今いる現状」を分析して、その上でどう戦うのかを考えるほうが多くの人にとってはフィットすると思われます。
では、どのように分析し、自分の「かたより」に価値を与えていくのか。そのための実践エクササイズとして、「フィールド分析(市場分析)」「かたより分析(自分のリソース分析)」などを踏まえて、具体的に考えていく提案をしており、これらを踏まえて考えると、自分の「才能を活かしていく先述」が見つかるのでしょう。
まとめ
本書の中には、ストレングス・ファインダーやVIAの研究なども出てきます。ただ、それらのアセスメントが語る「才能に注目しよう」という話の、奥にある「才能は今いる文脈(グループ)に依存するものである」「成功のために必要な特定の才能はない」など、気になっていることを掘り下げられている、そんな書籍だと思いました。
「才能や強みに注目すればいいんです」のほうがわかりやすくて、ウケが良いかもしれませんが、その背景にあるものも含めて語られているのが、読みやすいのに深みがある、魅力的な書籍だと感じました。
そして、「IQが高いからといって成功するとは限らない」という部分では、自分も自らの知性の限界を感じて、「・・・とはいっても賢さって大事だよね」と思ってしまっていたので、気持ちが楽になった書籍でもありました。
ストレングスファインダーも素晴らしいですし、私もとても好きですが、もう一歩踏み込んで考えてみたい方などには、お勧めしたい一冊だと感じました。