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オランダ65名の週間日誌研究 ー「強みの活用」がエンゲージメントを介し「プロアクティブ行動」に影響を与えるー

こんにちは。紀藤です。今日の論文は、「強みの活用とワークエンゲージメント」というテーマで書かれたものをご紹介します。オランダで65名を対象にした調査で、組織からの「強みの活用の支援」がなされると「強みの活用」につながり、「自己効力感」「ワークエンゲージメント」ひいては「プロアクティブ行動」に影響を与えるという研究です。

エンゲージメントもプロアクティブ行動も組織の成果に影響を与える重要な変数ですので、「強みの活用」の効果を示す有益な論文かと思います。それではまりいましょう!

<今日の論文>
『強みの活用とワークエンゲージメント:週間日誌研究』
Woerkom, Marianne van, Wido Oerlemans, and Arnold B. Bakker.(2016). “Strengths Use and Work Engagement: A Weekly Diary Study.” European Journal of Work and Organizational Psychology 25 (3): 384–97.

論文のざっくりポイント

本論文のポイントについて、以下箇条書きでまとめてみたいと思います。要はこんなお話でございます。

  • 研究参加者はオランダの65人の土木技術者。

  • 参加者に対して「強みの活用に対する組織の支援」に関する一般的な質問票、そして「強みの活用」「自己効力感」「ワークエンゲージメント」「プロアクティブ行動(主体的な行動)」に関する質問票を5週間に亘って毎週記入した。

  • 分析の結果、わかったことは、週ごとの「強みの活用」は「自己効力感」を介して「ワークエンゲージメント」と「プロアクティブ行動」に正の相関があった。

  • 組織は従業員に得意なことを活用する機会(=強みを活用する機会)を与えることで、従業員の自己効力感を向上させ、ワークエンゲージメントやプロアクティブ行動に繋がる可能性が示された。

とのこと。なるほど、「組織の従業員に対する強み活用の支援」の重要性を伝えてくれる論文のようでもあります。

研究のプロセスはこんな感じ

研究のプロセスは、参加者に対して5週連続の日誌形式のアンケートに答えてもらうことが特徴です。その週の「強みの活用の支援」が高かった時に「強みの活用」が高くなっていれば、それは強みの活用の支援が強みの活用に影響を与えているとわかります。逆に、ある週は支援が多く、ある週は支援が少なく、それらの週ごとの違いが結果にあらわれていたとしたら、その影響はより正確につかめるであろう、ということです。

<研究の実施方法>
・参加者は、毎週金曜日に送られる「強みの活用」「自己効力感」「ワークエンゲージメント」「プロアクティブ行動」に関して合計5週間で連続してアンケートに答えた。(そうすることで、週単位で、参加者の個人の感情を正確に認識して報告できると考えたためである)

<測定した尺度>
測定した尺度は、以下の5つの尺度でした。
①「強み活用の支援」8項目
 (General strengths use support/Keenan and Mostert,2013)
②「週レベルの強みの活用」(新たに開発)4項目
③「職業的自己効力感」 3項目
 (Occupational self-efficacy/Schyns and Von Collani,2002)
④「ワークエンゲージメント」 3項目
 (ユトレヒトワークエンゲージメント/Schaufeli et al, 2006)
⑤「プロアクティブ行動」 3項目
 (personal initiative scale /Frese et al.,1997)

<仮説と理論モデル>
今回の仮説、ならびに仮説を理論モデル化したものを以下引用いたします。

・仮説1:「強みの活用に支援」は、「週ごとの強み活用」と正の相関がある
・仮説2a:「週ごとの強みの活用」は、「週ごとのワークエンゲージメント」と正の相関がある
・仮説2b:「週ごとの強みの活用」は、「週ごとのワークエンゲージメント」と正の相関があり、その相関は「週ごとの自己効力感」によって媒介される
・仮説3:「週ごとの強みの活用」は「週ごとの自己効力感」と「週ごとのワークエンゲージメント」を通じて、「週ごとのプロアクティブ行動」に正の相関がある。

理論モデル

<分析方法>
・マルチレベルモデリングアプローチを使用
(個人間効果と、個人内効果を分けて分析する方法)

<研究結果>

仮説1~3まですべて支持された
(上記の理論モデルが支持された)

研究変数の平均値・標準偏差・相関

まとめ

この論文で明らかになったことは、「強みの活用」が「ワークエンゲージメント」を高め、組織における成果に影響する変数である「プロアクティブ行動」に影響を与えるということでした。おおざっぱにいえば「強み活用はパフォーマンスに影響する」ことを示唆する結果といえます。

同時に、「強み活用の支援」が「強みに活用」にも影響を与えていたことも重要な点です。強みを活用しよう、といっても、職場からの強みを活用するための支援(上司の働きかけ、職場の強みにフォーカスする風土、強みを活用できる仕事のアサイン等)がなければ、強みの活用も限定的になってしまいます。ゆえにこの論文では「組織の強みの活用の支援」の重要性を伝えているとも言えます。

そのための手法として、「強みにフィードバック」「フィードフォワードインタビュー」「強みを新しい方法で活用する」なども利用できそうです。研究が進むと、こうしたことが組織内でも活用する正当性を、より説得力を持って語れるようになりそうです。

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