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今週の一冊『残酷すぎる 幸せとお金の経済学』

こんにちは。紀藤です。さて、本日は最近読んだ本をご紹介させていただく「今週の一冊」のコーナー。今週の一冊は、

『残酷すぎる 幸せとお金の経済学』
佐藤 一磨 (著)

です。

この書籍では、皆が気になっている結婚や幸せにまつわる、各種の最新データが紹介されています。しかも、その内容がなかなか刺激的です。

それは、皆が気になる「お金」「昇進」「健康」「子供」「夫婦関係」「離婚」のデータを扱っているからです。

それでは早速内容を見てみましょう!

お金と幸福度の最新のデータ

まず、最初はお金と幸福度のお話。通説では「年収は1000万円以上(7.5万ドル)になると幸福度は頭打ちになり、年収が増えても幸福度が上昇しない」という指摘がされていました。しかし、2023年に公表された研究では、年収のさらなる増加と共に幸福度が伸び続けることがわかった、というお話が紹介されます。

例えば、見方によっては年収を一定程度に収めておきたい経営再度からすると不利な話かもしれませんし、お金が全てではない、という信念を強く持つ場合、耳障りが悪く感じる人もいるかもしれません(結局カネかよ、という話とも捉えられる)。

他にも、子供の幸福とお金の話もあります。
たとえば、「国が経済成長をすると、子供の幸福度が低下する」という事実もわかりました。これは豊かになろうと努力し、子供が勉強する時間が増大するほど、疲弊し、その結果幸福度が下がる傾向があることが示唆されています。

お受験戦争の是非を考えさせられるデータですね。。。

管理職になると、健康が悪化する?!

また、最近は「管理職になりたくない問題」が話題になっていますが、このお話に触れる調査結果もあります。

データは慶應義塾大学が実施している男性1万4000人を対象とした、2011~2020年のもの。この対象に、管理職への昇進と幸福度や健康の関係を分析しました

その結果を見ると、

1)「管理職に昇進しても幸福度は上昇しない」
2)「年収は増加するが、所得に対する満足度は上昇していない」
3)「管理職に昇進した1~3年後に自己評価による健康度が悪化した」

という結果になりました。
昇進しても幸福にはならず、所得に対する満足度は上昇せず、健康度(自己評価)も下がる。。。こんな実態があるならば、誰も管理職になりたがるはずがありません。

この状況を推察すると、業務量、責任の増大、また部下のマネジメントやハラスメントなど、やることが多くなることで「割に合わない」と感じる人が多くいる、と感じるという最近の話題にも共通します。

P46

子供がいる VS 子供がいない どちらが満足度が高いのか?

次に「子供がいることと幸せの関係」。

このこともデータを元に紐解いています。昨今の少子化の問題もあり、出生率を高めることの重要性はしきりに叫ばれています。しかし、実際に「子供がいることで女性の生活満足度はどうなるのか?」ここが気になるところ。

蓋を開けてみると、ショッキングな現実が見えてきました。日本において2万2000人の既婚女性を対象に、1993~2017年までの分析期間のデータで「子供の有無と幸せの関係」を調査した結果、

「日本では、子供のいる女性のほうが生活全般の満足度が低い」

という結果になりました。これは年齢、学歴、世帯所得などので影響を調整した結果であり、信頼性が高いと考えられます。

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しかも、子供の数が増えるごとに、既婚女性の生活満足度はどんどん低下している結果となっています。

P114

ちなみに、子供が大きくなるごとに既婚女性の生活満足度は下がっていき、思春期(13-17歳)で最も低くなり、18歳以降になると少し上がる、という結果になっています。

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そして、この理由として以下3つが挙げられました。
それが「1,お金」「2,夫婦関係」「3,家事・育児負担」の3つです。

「1,お金」「2,夫婦関係」や「3,家事・育児負担」の懸念が高まる→ 生活満足度が低くなる →そして第二子を生むことを躊躇する、という構造が見えてくるようです。

データを見ることは現実を見ること

こうしたデータを見ると「子供が増えない理由」も「管理職を目指さない理由」にも合点がいきます。データを見るとは現実を見ることであり、その背景を丁寧に議論することでしか、今を変える事はできないのでは、と思わされました。結局、人は合理的に選択しているものです。

面白く、興味深いデータでございました。


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