強みを見極める能力があった⁈「ストレングス・スポッティング」の研究論文
「同僚の”強み”を見つけろ、と言われても難しい」
ある日、某企業様で行わせていただいた
ストレングス・ファインダーの研修において、
「お互いの強みをフィードバックしてみましょう」と伝えるワークがありました。
その件について、アンケートで参加者が書かれて言葉。
一方、同じ研修に参加した別の参加者からは
「強みをお互いにフィードバックすることで自分に自信が得られた。
職場でもぜひやりたいです!」
というコメントもありました。
*
この時、興味深く思ったのが
”どちらも同じ時間、同じ研修を受けた上での感想である”
ということ。
「強みに着目しよう」と同じテーマをお渡ししても
そのお題に対して
強みへの注目について
「肯定的」にとらえる傾向がある人と
「否定的」にとらえる傾向がある人がわかれる
ことに、ハッとさせられました。
「強み」に対する捉え方に違いがある。
強みに注目するのが好きな人もいれば、そうでないという人もいる。
「キャラじゃないから」と強みについて伝えたくない人もいれば、
「この人は強みとか、いわなさそう~」という人もいます。
この違いは、一体何なのだ??
*
そんな疑問に対して、
疑問を解き明かすヒントをくれたある研究に出会いました。
それが以下の論文、
というものです。
この論文では、
1)「強みを見極める能力」を測る尺度の開発
(ストレングス・スポッティング尺度)
2)「強みを見極める能力」と「他の特性(性格や知識)」との関連を調査
したという研究を行って、まとめています。
これが、なかなか面白く、
なるほどなあ、、と納得させられたのでした。
では、一体どんな内容なのでしょうか?
*
■まず確認したいのが
「ストレングス・スポッティング」ってなんだ?
という話です。
一言でいえば、
「自分自身や他者の強みを見極めること」
(Linley et al. 2010b)
です。
そしてこれは、心理療法やコーチングにおいて
重要なスキルとされています。
*
■では次に、
「強みを見極める能力」とは、
具体的にどのようなものを指すのか?
ですが、このことについて、強みの専門家6名が、
「強みを見極める能力」を測る尺度(ストレングス・スポッティング尺度)
を開発し、検証をして、実際に使えるようにしました。
開発した尺度とは以下の内容です。
早速見てみたいと思います。
とのこと。
*
■なるほど。
「強みを見極める能力」を
能力/感情/頻度/動機/適用 の5つの尺度
で整理をして測定すると
人により違いが明らかになりますね。
「強みに基づいた組織風土を作ろう」としたらこうした尺度を用いて、
全体スコアが上昇していくような目標を立てトレーニングする、
というように使うこともできそうです。
*
■一方、論文の2つ目のテーマにも
関連するのですが、気になることがあります。
それは、
「じゃあ、このストレングス・スポッティングのスコア、
どうすれば上がるのさ?」
という話。
残念ながら、この鍛え方については
この論文では具体的に記述がないのですが、
そのヒントとなる調査は実施されていました。
それが
2)「他の特性(性格や知識)」との相関を調査
です。
ここでは2つの調査がされていました。
まず1つ目が、
性格特性で有名な「ビックファイブ」との相関を調べました。
ビックファイブとは、人の個性は5つの因子によって分類できるとされる考え方で、その信頼性が知られています。
その5つの因子とは、「Openness(開放性)」「Conscientiousness(誠実性)」「Extraversion(外向性)」「Agreeableness(協調性)」「Neuroticism(神経症的傾向)」の5つです。
そのビックファイブの5つの因子と
ストレングス・スポッティングの5つの尺度(能力・感情・頻度・動機・適用)
それぞれでどんな相関があるのかを調べたのでした。
その結果、
ビックファイブとは「外向性」「協調性」に相関がある
ことがわかりました。
そして次に、調べたのが、
ストレングススポッティングとその他の一般的な項目との相関です。
ここでいう「一般的な項目」とは
・楽観性
・ポジティブな感情
・否定的な感情
・強みの知識
の4つです。
結果は
ストレングススポッティングと
「楽観性」「ポジティブ感情」「強みの知識」は正の相関があった
ことがわかりました。
逆に、ネガティブ感情があると、
若干ではありますがマイナスの相関がある部分が見られたのも
興味深い事実です。
結論を申し上げると、
”「強みを見極める能力」と
正の有意な相関がある要素(性格特性や知識)”
として、以下の5つが挙げられました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「強みを見極める能力」と正の相関がある要素>
・「外向性」
・「協調性」
・「楽観性」
・「ポジティブ感情」
・「強みの知識」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
また、その他で言えば、若干ではありますが、
・年齢(年齢が高いほど強みを見極める能力が高い)
という傾向もありました。
*
■なるほど、これまた興味深い結果です。
わかったことは、
「強みを見極める能力」は
ビックファイブなどに含まれる”性格特性”が影響している、こと。
ゆえに、これを大きく変えるのは正直、なかなか難しそうです。
ただ、希望が持てるのが
ストレングス・スポッティングに相関するものに、
『「強みの知識」が含まれている』
ことです。
「強みの知識」とは「自分の強みをどれくらい知っているか」などで
構成される8項目の尺度(Govindji and Linley, 2007)
で測定することができます。
*
■強みへの活用は、
個人の幸福度や成長、生産性、創造性などに
ポジティブな影響があることがわかっています。
その第一歩が、「強みへの注目」をすることです。
そして、
「強み」に注目したければ
まず、強みに対する理解も深める。
(→「強みの知識」を増やす)
すると、自分にも、他者に対しても、
強みを見極める能力が高まる。
(→ストレングス・スポッティングの向上)
そして、強みの活用へと繋がっていくのかもしれない、
そんな事を考えさせられた研究でございました。
2010年の研究ですが、
その後の後続研究にも何度か登場する影響力のある内容であり、
新しい視点をもたらしてくれる研究でした。