チームビルディングの「GRPIモデル」を徹底解説いたします
チームビルディングの枠組みの一つに「GRPIモデル」なるものがあります。
これはチームにおけるGoals(目標)、Roles(役割)、Prosessec(プロセス)、Interactions(関係性)という4つの次元(GRPI)に焦点を当ててチームを開発することで、チームの効果性(生産性や機能)を高めることができる、というものです。
さて、このGRPIモデル、比較的有名なモデルだと思われます。しかし、「そもそもGRPIモデルの出どころはどこなのか?」「学術的なエビデンスはどの程度あるのか?」は、そう言えばよくわからんな・・・、とふと思ったのでした。
ということで、今日はこの「GRPIモデルの先行研究を調べてわかったこと」
について、まとめてみたいと思います。GRPIモデルとは何か?よりちょっとマニアックな話ですが、よろしければお付き合いください。
それでは、まいりましょう!
「GRPIモデル」の歴史
GRPIモデルの概要は、冒頭にお伝えした通り、Goals(目標)、Roles(役割)、Prosessec(プロセス)、Interactions(関係性)という4つの次元に焦点を当てたチームビルディングの枠組みとなります。
この詳細は後ほどまた解説するとして、そもそもこの「GRPIモデル」はどこから生まれたのか? そして、なぜ有名なモデルとして知られるようになったのか? この経緯から深堀りしてみたいと思います。
GRPIモデルは、学術的に有名でない?
まず、「GRPIモデル」の出どころは、Beckhard(1972)の”Optimizing Team Building Effort.(Journal of Contemporary Business, 1, 23–32)”という論文です(GoogleScholarでは元論文を読むことはできませんでした)
ちなみに、Makhalemele(2021)の論文では、「GRPIモデル」の引用元としてRUBIN(1977)の”Task Oriented Team Development”という著書が挙げられており、1970年代に広がった考えであるようにも思えます。
そこで、「GRPI model」をGoogleScholarで検索してみました。
すると、「タイトルにGRPIが入っている論文」or「GRPIを中心的に取り上げている内容の論文」は、見た感じで5本程度でした。それぞれ論引用数も1桁くらい。印象値ですが、”学術的に広く認められている理論ではない”という印象でした(注:あくまで私がざっと調べた印象です。あしからず・・・)
またGRPIモデルの研究のバトンがどう連なっているかを調べるため、論文の関連を調べるツール「Connected Paper」でGRPIモデルを調べてみました。その結果、有効なグラフは作成できませんでした(「十分な論文がないためグラフを作れない」と表示された)
GRPIモデルは、なぜ有名になったのか
さて、そんなあんまり研究では盛んでないようなGRPIモデル。
「なぜGPRIモデルが使われるようになったのか?」が疑問です。
この答えに関して、ある論文にて、興味深い記述がありました。
Zajac(2021)の、GRPIモデルに関して書かれた記述を紹介します。
とのこと。そして論文の後半では、「GRPIモデルはGEでの30年の成功実績があるため、(本論文の研究でも)本モデルを選択をした」と書かれています。
GEが使ったことで、チームビルディングの実際の現場での活用から広がっていったのかもしれませんね。
「GRPIモデル」の概要
さて、そんな「GRPIモデルの概要」について、既存の論文より改めてまとめてみます。
まずGRPIモデルは、Goals(目標)、Roles(役割)、Prosessec(プロセス)、Interactions(関係性)の4つの次元で考えるとお伝えしました。三角形の図式モデルがよく知られています。
GPPIモデルは上から考えよう
このGRPIモデルは、「上から順に設定するのがポイント」というのが通説となっているようです。この根拠に近しい論文として、Raueら(2013)が以下のように述べています。(一部引用し著者にて編集)
「目標が不明瞭であること」が最もチームにコンフリクトを起こしやすい(80%)というのが、この著者の見解の一つのようですね。「関係性」に至っては、Raueらの観察では0.8%のコンフリクトへの影響しかなかった、と述べています。
GRPIモデルの詳しい中身とは
さて、「GRPIモデル」では4つの次元があるのはわかりました。
とはいえ、具体的に「目標(Goals)」やら「役割(Roles)」って、一体何を意味するのさ? というのが気になるところ。単語が抽象的すぎて、具体的に何を意味するのかがわかりません。
これらの疑問に関する論文として、Maneesakprasert(2023)らが「GRPIモデルの構成概念要素」について、タイの流通業界の民間組織で働く283名に対して研究を行いました。GRPIモデルを軸として、チームの有効性に関する確証的因子分析を行い、信頼性と妥当性を確かめました。
結果、以下の結果が示されました。
なるほど。こうして4つの次元それぞれに3つの尺度が示されると、より何を意味しているのかが明確になるように感じます。
ちなみにこの研究では、チームワークにおいて重要な順番は「役割」→「プロセス」→「対人関係」→「目標」となりました。よって、Raueら(2013)の結果とは違うものになっています(まあ、そんなものですよね)。
「GRPIモデル」でチームを診断する
さて、上記の「GRPIモデルの構成概念要素」でも十分使えそうですが、Zajac(2021)らが、「GRPIモデルでチームを診断するツール」を紹介していました。
4つの次元それぞれの項目に対して2つずつ「優れている・とても良い・良い・悪い・非常に悪い」でチェックする、というものです。(ちなみに、GRIPとなっています。順番が微妙に違いますね)
まとめ
改めてGRPIモデルは、「実践者のためのモデル」として知られているのだとよく理解できました。チームの有効性の要素が網羅されていても、それがシンプルでなければ、皆が使えるモデルとしては広がりません。
学術的な観点では、ツッコミどころがある考え方なのかもしれません。しかし、それも含めて探求することで、実践への活用に役立つと感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!