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夏の終わりの密かな告白

「火、もらってもいい?」

無邪気にはしゃぐあなたが駆け寄る、右前方。
赤く染まった花火の光が2人のサンダルを照らし
燃える花火にあなたが触れる。

パチパチパチパチッ
───プシューッ

一瞬の静寂の後、一筋の炎の光が二筋に交わり
明るさを増した夜空に2人の顔が照らされる。

あなたはきっと気付いていない。

あなたが隣に駆け寄って
私の花火にあなたが重なり
炎が移るまでの数秒間、
緊張のあまり息が止まりそうなことを。
少しだけ、またドキッとしてしまったことを。

そして、何も考えずまた他の子から
楽しそうに火を分けてもらってる姿に
胸が痛んでいることを。
少しだけ、また嫉妬してしまったことを。

優しくて気遣いのできるあなたは
みんなの人気者であなたの周りはいつも明るい。
あなたといる私は心から笑っていて
いつも時間があっという間に過ぎてしまう。

いつも、えらいねすごいねって
優しく笑って褒めてくれるあなたには
可愛くて女らしい私じゃなくて
夢や目標がある前向きな私を見てほしい。
そう思ってしまうから、
艶っぽい恋愛話なんてしたことない。

飲み会の帰り道、帰る方向が一緒だから。
その理由だけでいつも2人の時間が生まれる。
並んで歩く2人の距離はお酒のせいで少し近くなる。
肩が触れるか触れないか、そのくらい。

だけどあなたは、それ以上近付かない。
近付いてくれない。
手なんて繋がず駅まで隣を歩き
改札を通る私の背中を手を振りながら見送って
そっと1人で帰っていく。

ただの楽しい飲み仲間だから?
妹みたいな存在だから?
女として見れないから?

ずるいなぁ
意図も簡単に私の心の炎に触れてきて
ちょっとちょうだい、なんて言って微笑むくせに。

このときめきも切なさも、
全部全部夏のせい。
夏が終われば静かに消えていく、はず。

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