桜の季節はすでに遠く、ツツジの花もあらかたが散り、今はあちこちでまだ若い葉を控えめに伸ばした紫陽花の蕾がわずかに膨らんでいます。これから雨の季節になれば、この蕾…
「ほら、弁慶の泣きぼくろっていうじゃない」 東雲さんがまじめな顔でそういうのを私は昼食に入ったお食事処春日のカウンター席で聞いた。そのとき私は運ばれてきたば…
kiyo
2020年9月12日 21:53
桜の季節はすでに遠く、ツツジの花もあらかたが散り、今はあちこちでまだ若い葉を控えめに伸ばした紫陽花の蕾がわずかに膨らんでいます。これから雨の季節になれば、この蕾もいっせいにひらきはじめるのでしょう。梅雨間際の心地よい空気に誘われたのか、ふと旅に出たくなりました。のんびりと寝袋とテントを持って初夏の東北を回ってみようと思ったのです。思えば大人になってから、時間を見つけて日本のあちこちに出かけ
2020年8月6日 21:43
「ほら、弁慶の泣きぼくろっていうじゃない」 東雲さんがまじめな顔でそういうのを私は昼食に入ったお食事処春日のカウンター席で聞いた。そのとき私は運ばれてきたばかりのお椀の蓋を開けて、味噌汁を口にしたところだったのだが、思わぬ不意打ちを受けてむせてしまい口内に軽いやけどを負った。 春日の女将さんは炊事場に戻ろうとしてくぐりかけたていた暖簾から振り返り「東雲さん、それ、どういう意味?」と聞い