「シンガポールへ OKフロート・パチカ を送った時のこと」
コスモテックの青木です。
先日 『 デザインのひきだし48 』( デザインのひきだし編集部 編 )に 「 コスモテックが手掛けた OKフロート と パチカ の世界 」 を見開き2ページで掲載していただいたことをご紹介しました。
特殊紙OKフロート、そしてパチカを使用した加工事例の最新版を詳しく掲載していただいております。皆さま、ぜひ 『 デザインのひきだし48 』 にてご覧くださいませ。
『 デザインのひきだし48 』 に掲載していただいてから、OKフロート・パチカにまつわる様々な出来事を改めて思い返してみました。今回の記事では、その中から 「 ああ、この製作物は印象深かった…! 」 「 なぜか、どこか、頭にひっかかって忘れられない 」 というものをいくつかご紹介させていただきます。
最新版の加工事例ではなく約10年以上前のお仕事ですが、久しぶりに見返してみると今も色褪せない斬新な切り口と新鮮さが満ち溢れているように思えます。
特殊紙OKフロート、パチカという紙が持つポテンシャルの高さを感じ、さらにはアイデアやデザインによって まだまだ未知の表現が隠されている期待に胸を膨らませるきっかけにしていただければと思います。
◉ シンガポールのデザイン事務所とのお仕事
ご紹介するのはシンガポールのデザイン事務所 [kloo] pte. ltd. とともに製作した製品2点です。シンガポールからコスモテックの加工技術や活動にご興味をもっていただき、お声がけいただいたことがきっかけです。
一つ目は「 ディープインプレッション 」 というコンセプトのもと製作したOKフロートを使用した製品( 2012年 )。そして、二つ目は 「 トレジャーハンティング 」 というコンセプトで形づくったパチカを使った製品( 2010 年 )です。
2023年2月現在、コスモテックはおかげさまで、ゆうに1000を超えるOKフロート、パチカを使用したデザインの加工をお手伝いさせていただきました。印刷加工会社という立場で今もなお、日々一点一点の図案と向き合い、お客さまにご満足いただけるよう挑みつづけております。
今回改めてご紹介する製品2点を私が見て感じたことは、コスモテックが10年以上も前から今もなお挑戦的な姿勢を貫き通し、新しいアイデアに立ち向かっているということです。
◉ コンセプト「 ディープインプレッション 」
・ OKフロートに新聞紙を転写する
白色の無地のOKフロートに、シンガポールの [kloo] pte. ltd から送っていただいた様々なシンガポールの英字新聞を使って、新聞紙の転写加工と、その上に箔押し加工( マットシルバー箔 使用 )してOKフロート製のDMをつくりました。
OKフロートは、紙の中に合成パルプ( プラスチック繊維 )が含まれている特殊紙です( これはパチカも同様です )
この特異性と、海外の新聞紙( ※ )の性質でもあるインキが乾き難い( 指で新聞紙を擦るとインキが指に付着する )ことを活かして、OKフロートと 英字新聞という2つの素材を使用し、箔押し加工の機械の熱と圧力によって英字新聞のインキをOKフロートへ転写加工しました。熱で英字新聞のインキを溶かし、圧することで新聞紙からOKフロートへとインキを付着、定着させたのです。
※ 新聞紙はシンガポールの古新聞( 廃品 )を使用
シンガポールの英字新聞はとてもカラフルな印刷がされているものが多く、転写加工した当時の印象も強く残っています。また、OKフロートへ転写された英字新聞の図案は新聞本体の図案とは反対になって転写されるのが特徴で、転写された文字・アルファベット・写真などは全て反転しています( ex. 印鑑を押すのと同じイメージ )
・ 転写で使い終えた新聞紙も活かす
上の写真はシンガポールから送っていただき、OKフロートへの転写加工を終えた英字新聞。もともとは廃品の海外の古新聞。転写加工を終えれば完全に役割を終えたはず……
と思いきや、転写加工を終えたこれらの英字新聞に対して、今度は白箔押しをしたのでした。箔の隠ぺい性を利用し、新聞の中で見える部分・隠す部分をつくり出しています。これらは英字新聞を転写したOKフロートのDMを包み込むための封筒として再利用されたのです( note 記事、一番上の gif 画像参照 )
転写加工で使用した英字新聞からつくった封筒、そして、その図案が転写されたDMが1セットになっているという製品です。すべてのパーツを余すところなくデザインの中に組み込んでおり、この鮮やかさに当時の私は強く心を打たれたのでした。
◉ コンセプト 「 トレジャーハンティング」
・ パチカをぐにゃぐにゃにする
こちらは2010年の製品です。 「 ディープインプレッション 」 のOKフロートよりも2年さかのぼります。 紙はパチカの中でも一番薄いものを使用して作成しました。
パチカは、OKフロートと同様に紙の中に合成パルプ( プラスチック繊維 )が含まれている特殊紙です。パチカにはOKフロート以上にたくさんのプラスチック繊維が含まれているので、これがパチカの特性でもある 「 加熱型押しをすることで、押した部分が半透明化する 」 という特徴の仕掛けとなっています。
2010年といえば、コスモテックがパチカの加工に本格的に取り組むようになり、約4,5年経った頃かと思います。少しずつ加工にも慣れ、パチカという特殊な紙の性質を理解し始めた頃、この 「 トレジャーハンティング 」 がコンセプトのパチカ製の製品加工をシンガポールからご依頼いただきました。
パチカは熱で半透明化するという特徴を持つ紙であり、その反面、熱に弱いという特性もあります。加工面積が広く、加熱型押しする面( 特にベタ面 )が大きいと、熱によってパチカ全体に歪みやたわみが生じ易くなり、しかも半透明化させるのも困難となります。
通常ではNGとされるであろうこれらの要素をふまえて、シンガポールの [kloo] pte. ltd からのデザインと加工の要望は 『 透け感はほんのりでも構わないので、ぐにゃぐにゃとしたうねりを出したい 』 というものでした。今まで私たちがNGと思い込んでいた現象を逆におもしろい表現として求められているのか!と驚き、目から鱗が落ちた気がしました。
上の写真をご覧いただければわかりますが、デザインは波間を船が航海する図案( ※ )なのです。そのため波の「 うねり 」 を加工で表現したかったのです。
※ 写真内で盛り上がっている部分以外をすべて加熱型押しで凹ませている。広域・特大なため、半透明感の具合もほんのり。
・ はじめての箔押しティッシュ!
皆さまには2020年にコスモテックが加工でお手伝いさせていただいた 『 デザインのひきだし39 』 の表紙、箔押しティッシュ!が記憶に新しいことと思います。
しかし実は、そのちょうど10年前に、シンガポールからのお仕事で市販用の普通のティッシュ!に箔押し加工していたのです。
まさかここから10年後、『 デザインのひきだし 』 の表紙がティッシュで作られ、その箔押し加工をコスモテックでお手伝いさせていただける機会がやってくるとは… 当時の私には想像すらも出来ませんでした。
市販のごく普通のティッシュをスーパーで購入し、シンガポールからご入稿いただいたデザインで地図を箔押し加工しました。「 今回はティッシュに箔押しですよ! 」 と購入したティッシュを持って、今はなき箔押しの匠 佐藤に加工の説明をしに行く時は今までになく緊張しましたし、「 きっとイヤな顔されるだろうなあ… 」 など、色々考えてしまった思い出がよみがえってきます。
箔押しの匠 佐藤はというと、 「 なぬ~!? 」( 青木、なんだって!? )な反応は一瞬で、すぐに 「 まずはやってみるか! 」 と気持ちを切り替えてくれたのはちょっと意外でした。
市販のごく普通でひらひらの、日常生活の必需品であるティッシュに箔がきれいに乗った瞬間、まるで本物の宝物の地図を見つけてしまったような大きな感動が私や箔押しの匠 佐藤の中に押し寄せてきたシーンは今でも忘れられない出来事となっています。
◉ 固定概念にしばられない
10年以上前にシンガポールからのご依頼で、製作・加工でお手伝いさせていただいたOKフロート、パチカの表現は、今も新しさとなつかしさを私に感じさせてくれます。
あれから月日は経ち、さまざまなお客さまからご依頼いただくお仕事を通してたくさんの経験値をこつこつと地道に積むことができました。しかし、経験を積み重ねたことで 「 こうであるべきじゃないか? 」 「 きっとこうなるのではないか? 」 という経験に基づく予測が、時には新しい表現の邪魔をすることもあるのでは? と今回の note の記事を書きながら考えました。
OKフロート、パチカを含め、コスモテックが挑戦した 「 ちょっとやってみよう 」 という小さなジャンプが、10年後の今、私たちの中に生きているような感覚があります。
思い込みや固定概念にしばられないパワフルな発想や姿勢を今後も持ち続けたいという思いと、OKフロートとパチカ 共に、きっとまだ見ぬおもしろい景色があるような気がしてなりません。それを見るために、今日もコスモテックは小さなジャンプをし続けているのです。
【 連絡先 】
ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ
➡ http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/
有限会社コスモテック 青木政憲
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?