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「 コスモテック 『 箔宝石 』 年賀状 2023 制作の裏側 」

コスモテックの青木です。

2023年1回目の note の記事は 箔押し印刷会社 コスモテックの年賀状制作についてご紹介します。 「 コスモテックの年賀状企画にご応募くださった皆さま、そろそろお手元に届きましたでしょうか!? 」

◆ 年始の風物詩 箔押し印刷屋さんの年賀状がほしい!

『 コスモテックの年賀状ちょうだいな2023年 』( 送料無料 )

「 コスモテックの箔押しや紙加工に興味がある人、集まれ! 」

の試みでスタートしたコスモテックの年賀状お届け企画は2017年よりスタートしてから年々規模が大きくなり、2020年・2021年 年賀状ではそれぞれ全国各地 約1000名・2022年 年賀状は約1500名ものご応募をいただく大人気企画となりました。

2023年の応募受付数は去年と同じく1500名様。
約1週間程で定員を満たし、応募受付を締切らせていただきました。


気づけば 2023年。今回もおかげさまで無事この年賀状企画を実施することができました。「 僕ら印刷加工会社の年賀状をほしいと言ってくださる方は本当にいるのだろうか? 」 という不安を抱えながらこの企画をスタートしたのが今から7年前のことです。

箔押し加工に従事する者 / 印刷加工会社ということもあり、毎回箔押し加工を盛りに盛って 「 コスモテックの今が旬な加工はこれだ! 」 という勢いと思いを乗せてマニアックな年賀状をつくり続けております。この企画を通して7年間で、なんと延べ7000~8000通のコスモテックの年賀状を皆さまにお届けさせていただきました。

「 コスモテックの年賀状をコレクションしてくださっている方もいらっしゃるそうで、本当に励みになります! 」

◆ 2020-2023年 年賀状デザインは前田瑠璃

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『 デザインのひきだし 』 1000種類の箔押し表紙 と 前田


「 コスモテックの前田瑠璃 」 と聞いて、 「 『 デザインのひきだし 』 の1000種類の箔押し表紙を加工した人だ! 」 「 あの 『 箔宝石(はくほうせき) 』 をデザインされている方ですよね? 」 と、 ピンと気づいてくださる方が多くなってきました。


前田の仕事や様々な創作活動にも注目していただきまして、本当にありがとうございます! 2020年から2023年までの4年間にわたるコスモテックの年賀状は前田瑠璃がデザイン、加工を手掛けました。

【 2020年 】 箔押し加工による写真表現 

【 2021年 】 箔押しマスキングテープの端材を年賀状に埋め込む

【 2022年 】 彩光腐食(さいこうふしょく)という特殊な版を使う

例年、どんな年賀状にするか考える際には加工技術を中心として組み立てていました。 「 さて、今年はどうしよう? 旬な加工は何かな? 」 「 来年はこの加工技術を推してみたいなぁ。 」 と前田が加工技術に軸足を置いてどんどん想像を膨らませていき、その後、その加工にマッチする図案やグラフィックを組み立てていきました。

◆ 2023年の年賀状について

今までは僕らコスモテックの 「 推し 」 の印刷加工を主題として制作していた年賀状ですが、2023年は少し趣向を変えて、「 『 応募してくださったお客様が年始からハッピーな気持ちになる年賀状 』 ってなんだろう? 」 ということから考えはじめました。

僕らが見せたい加工技術・ 「 推し 」 の加工法ではなく、もっともっとお客様に寄り添ったものが作れないだろうか? もちろん! ご応募くださったお客様が毎年とても喜んでくださっていることは SNS 等を通して承知していることなのですが。

そして、熟考の末に前田がデザインした年賀状はこちらです。
2023年は 『 箔宝石(はくほうせき) 』 の年賀状です。

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12個の誕生石を年賀状のサイズ内に配置


2022年( 昨年 )、『 箔宝石(はくほうせき) 』 の便箋や封筒などをたくさんの皆さまにお求めいただけたということ、宝石柄をとても喜んでいただけたこと、図案の伝わりやすさ、 キラキラした宝石が年始から気持ちを前向きにしてくれる期待を込めて、前田がデザインした年賀状には1月~12月の1年間の誕生石で彩られており、各宝石の月( 1~12月 )・宝石名が金箔押しされています。

青木 「 誕生石を箔押し表現するの? 」
前田 「 はい。1年間の誕生石を全て違う色の箔で箔押しします。 」
青木 「 ?????? 12個の宝石全部箔押しするということ? 」
前田 「 はい、12色の箔押し表現です。 」

青木 「 ・・・ 本気か!!!!!!(驚) 」

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前田が分版したデザインデータ 「 一体今回は何工程あるの!? 」


その後、前田からあがってきた版分けされたデザインデータが上のものです。誕生石は12色展開。

しかも、2022年の彩光腐食(さいこうふしょく)がデザインに盛り込まれており、それぞれの誕生石( 1~12月 )の箔色と共に共通の金箔を1色箔押し( ※ )することで完成する 『 箔宝石(はくほうせき) 』 なのです。 ※ 各宝石の月( 1~12月 )・宝石名 も同色の金箔で表現します。

そして実は、これでまだ終わりではなかったのです……

◆ え!? 宝石、盛り上げちゃうの!?

前田からさらに提案があったのは、箔押し加工した誕生石すべてをエンボス( 浮き出し )加工で盛り上げる、ということです。 

通常のエンボス版では表現できない、物質感のある宝石を演出したいという前田の強い思いもあり、今回は彫刻エンボス版を使って製作しようという流れになりました。

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箔の宝石表現をよりリアルな宝石と感じていただくために製作した彫刻エンボス版
4つの宝石が連なって1組になっております


彫刻エンボス版は以前 note で 「 箔宝石(はくほうせき)の立体化  」 の記事でもご紹介させていただいた特殊な金属版です( デザインは今回とは異なります )

さて、ここでふと冷静になって考えてみると、
製作部数( 応募総数 )が1500部 × ( 箔色12色+金箔 )
1部つくるのに、箔を13回( 宝石12色+金箔1色 )押すと考えると、1500部 × 13回 で、1万9500回箔押し加工。さらに、彫刻エンボス加工で誕生石を盛り上げ、裏面の宛名面にも1色の箔押し加工をするとなると…

実に、2万回をゆうに超える加工を手作業で行なわなければいけないデザインなのです。

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デザインデータより製作した、加工で使用する金属版
これらの金属版と箔色を組み合わせてつくる箔の宝石表現


明らかに、加工が( 時間や手間の部分から )途方もないことになる……
ただでさえ忙しい年末に、この作業量はちょっと無理じゃないか?

しかし、「 今回のデザインであれば、きっと年始からお客様の気持ちがグッと上がるのではないか!? 上がってほしいなぁ! 」 という思いが一気に込み上げてきました。 どうすれば膨大な工程をよりスムーズに進行することができるのか、前田も僕も前のめりになって考え、ついに実現に向けて始動したのです。

◆ 現場を知る者のアイデアが光る

前田 「 青木さん、まさか12色の箔全部を1色ずつ押すつもりで考えていませんか? 」
青木 「 え?? これってもしや…… 」
( 定規を出して、誕生石同士の間隔を測ってみる ) 「 おお、そういうことか! これすごい上手い事考えられているなっ! 」

前田 「 ふふふ。発見しましたか! そうなのです。 誕生石の間隔を計算して、1回の箔押しで4色の箔を一度に押せないかと考えました。こうすると、本当は12回押さなくてはいけないことをたった3回の押しで12色の誕生石を完成できるのです。 」

青木 「 これは、現場や箔押しの機械を知っている者ならではの工夫満載のデザインってことだね。 」
前田 「 ありがとうございます! でも12回が3回にはなっても、全工程の盛りだくさんは変わらずですよね。 」
青木 「 それは・・・・・ 確かに。 」

前田との会話内にもあるように、 『 現場を知っている者 』 ならではの経験やテクニックがデザインにも活かされております。誕生石をレイアウトする位置次第で、12回箔押ししなければならなかったものが、たった3回の箔押しで済むのです。ちょっとした工夫の有無が作業工程数・手間や時間にも大きく影響してくるのです。

例えば、
1500部製作 × 12回( 色 )箔押し = 1万8000回
1500部製作 × 3回( 4色1発 )箔押し = 4500回

現場を知って、それをデザインに活かすことで、本当は1万8000回箔押ししなければならないものを、たった4500回で12色の誕生石を箔押し表現することができるのです。その差、1万3500回分( 1万8000回-4500回 )の手作業を、ちょっとしたレイアウトの工夫で省略することができるのです。


箔押しの仕上がりを変えずに手間を省く。
言われなければ分からない、マニアックな工夫が日々箔押しと向かい合っている前田の血となり肉となってデザインに活かされておりました。制作の打ち合わせをする中で、前田の成長を感じ、嬉しい気持ちになりました。

◆ 前田瑠璃からメッセージ

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コスモテックの前田です。コスモテックの年賀状のデザインと加工に携わるのは今回で4年目になります。 「 今年2023年が一年間とおして、皆さまにとって素晴らしい一年でありますように… 」 という願いから、箔押し加工で1年間の誕生石を紙面上に表現するデザインを考えました。


年賀状を見た瞬間に、平面でありながら 『 鉱石を納めた標本箱のような雰囲気 』 を感じることができるように、デザインするうえで試行錯誤しました。

箔押しは全14色、さらに彫刻エンボス加工して宝石を立体的に仕上げております。加工もりもりの設計なのですが、あまりくどくならないようにシンプルな誕生石12個が映えるよう全体のバランス調整を行いました。

誕生石のエンボス具合は加工時の圧が強すぎると紙がやぶれてしまうので、
やぶれない程度のぎりぎりを狙っている


自分でデザインして、そして自分で加工してみた素直な感想は、加工の位置合わせが本当に難しかったということです。


一見するとシンプルな佇まいながらも、加工の位置が少しでもくるってしまうと全てが台無しになってしまうという綱渡りの加工を強いられました。箔押しによって表現した誕生石を彫刻エンボス加工で ぐっと盛り上げた瞬間、紙に誕生石が整然と埋め込まれたような、嵌め込まれているような雰囲気が出て、想像していた仕上がり以上のものに落とし込むことができ、ほっとしました。

彫刻エンボス加工をする際、機械の土台にセットした凸状の宝石のエンボス版
12個の宝石を1度に浮きあげるのではなく、4個ずつ3回に分けて盛り上げている


さて、箔押し加工による誕生石の表現は今回のコスモテック2023年年賀状にとどまらず、年始からオンラインショップで数量限定発売した箔押し福袋の製品にも展開しました( 2023年1月1日 発売初日に完売しました! )

今年も皆さまの新しい一年が宝石のようにキラキラと輝きますように。


【 箔押し加工 】

有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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