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天を向く梅、地を向く桜

まだちいさい蕾の桜がたずねた。
「梅の花さん、どうして空を見上げて咲いているの?」
「ぼくは空から春を感じるんだ。」
春告げ花の梅の花はこたえた。
蕾の桜は、まだ冷たさが残る風の中で
空を見上げる梅の姿がまぶしく映った。

今度は、梅の花が問うた。
「桜さん、君はいつも下を向いて咲くのはなぜだい?」
「わたしは、咲いた姿を見てくれる人たちに
 笑顔を見せたいの。」
まだちいさい蕾のままの桜はこたえた。
少しはにかんでほおをあかくした桜の花を想像して
梅の花は素敵だと思った。

ふたりの会話の間を
何も言わず、春風が通り過ぎて行った。


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