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美しき時間

秋の木漏れ日の中で
やさしさに溶けていた思い出は
美しいものばかりではなかった

つらいものはオブラートに包まれたように
心の内壁を傷つけないようにしていた
それに気づかなかっただけなのだ

風が変わった日に
それをぼんやりと思い出す
日差しはやさしくとも風は刺すように吹いた

短い秋がきた
長い冬の前座のように
そのわずかな時間に美しいものは咲きほこる

見逃すまい
一生の美しき時間を
見えない傷跡も癒すほどに凝視するほどに


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