白杖使用者の日常―公共郵便物の点字表記/配達員とのやりとり
点字図書館から届いた荷物。
点字テープが貼られていることが、写真からでもわかるだろうか。
2個口の説明のある辺り。それよりもう少し上あたりだったかな。
私はこの時、他の商品もいくつか注文していたため、荷物が1つではまとまらず、2,3個の荷物が別々に届きますよ、という意味。2個口というのは、2便に分けて送りましたよ、という意味だろう。
点字テープには、
「ベツビン アリ」
と書いてある。
そう。墨字で書いてあるところの上に貼ってある点字テープは同じことが書いてあるのかな、と思われがちかもしれないが、実は墨字とは書いてあることが違うということが多い。
それに点字テープはこの一言だけ。
寧ろ郵便物はほとんどが墨字であるから、よほど丁寧に荷物の全面を撫でまわして触らなければこの短い点字テープの存在にすら気が付かない可能性もある。
だから視覚情報を利用できない場合、必要な情報を読むには、やはり、支援的な機械や手助けが必要となってくる。
それと同時に、こうして「ベツビン アリ」という一言のみの情報だが、”テープが貼ってある、ということ自体” によって、点字図書館からの郵送物であると、頭で予測判断。
これこそ間接暗示というやつだ。(笑)
ちなみにその翌日、インターホンが鳴り、郵便局から「これポストに入らないので」と、さっと渡されるだけ渡され、誰宛ですかだとかどこからですから聞く暇もなくそそくさと行ってしまった。
非常に重かったので、そして頼んでいた商品が点字資料を作るための用紙の束であったため、ああ、これが別便か、と、判断。
ちなみにその荷物にも「ベツビン アリ」表記があった。
ちなみにこちらの荷物は用紙とファイルであったため、大きかったためか、「点字用郵便」と墨字で書かれたシールが封筒に貼ってあった(だからといって他に点字が貼ってあるわけでもなんでもない)。だから郵便局には、視覚障害関係だということはわかるのだろうか…その割には扉を開けるなり「これ、ポストに入らないので」とささっと渡して即座に行ってしまったので、何とも意味があるのかはよくわからないが…。
ついでに、郵便局や配達の人たちは、そもそも忙しいし、見えていない者や反応に手間取る者が扉を開けて出てくるという概念自体もないのだろう、扉が開くなり即座に荷物を差し出してくれる場合が多く、受け取ってしまうとすぐさま行ってしまったり、即座に「じゃ、これ」とサインのためのペンとシールを差し出して来る場合がほとんど。
まあ、出会い頭の瞬間に私が見えていないことなど気付くわけはないだろうから、まあ無理はないものだ。
ちなみにこの時、その重い荷物と一緒に何か薄いものが何枚か手渡されており、玄関を閉めて中に入ってから気が付いた。郵便局の人が時々そうしてくれるのだが、どうやら郵便受けに入っていた他の郵送物も一緒に手渡してくれたらしい。
さて……これらは誰宛だろうか…。
……そんなことが、よくある。
私もだんだんと、例えば「宛名これなんですが間違いないですか」と突き出してくるような場合には「すみません、読むことができないので、誰宛ですか」と伝えることができるようにはなってきているのだが…この前、夜にインターホンが鳴って、そうしたら、今度は暗くて見えないと思われたのか即座にペンライトを(しかも白い紙に)当てて私にさっと近づけてくれるという私にとっては完全逆効果なことが。
極力手を目に翳しながら「すみません…眩しいのがだめで。〇〇宛ですか?」とこちらから名前を言って確認をしたら、「ああ、そうです〇〇」と教えてくれた。
しかし、こちらから聞く、ということが、だんだんとできるようになってきた。
聞いておかねば、もし扉を閉めて中でよくわからないものであると困ることになる。
ただ、署名を求められペンとシールを渡されると、どこに書けば良いのか迷ったり聞いて相手にも慣れない指示を求められ困惑させてしまうことは本能的に避け、まあいいか、書けばいいのだからと思い、適当なところに書いている。多分、ここには書かないでくれという場所はよほどのことでもない限りないか、止めてくれるだろう。
しかし、郵便物やサインペンや署名する小さなシールも私の手に手渡してくれる場合は良いのだが、差し出されるとどこに手を伸ばして良いのか。そのためこちらからも「はい、渡してくれ」の意で手のひらを差し出すこともあるが、反射的にまだつい、わからねばと、やってしまう。
遮光グラスのまま玄関を出た方がまだわかりやすいし負担も少ないのではないかとも思うのだが、室内から真っ黒な遮光グラスで玄関を開けられると(しかも土地柄もあったりして……)なかなか相手に身構えさせてしまうのではとまったく余計なお世話な予期が働き、つい遮光グラスをはずして出てしまう。
宅配の人は恐らく担当はシフトによって何名かいるだろうが、それでも何度も同じエリアに来ている人であろうし、郵便局などの場合は恐らく本当にエリア担当者が決まっていて数名しかいないはず。この玄関がシェアハウスだと知った風な様子で郵便物を「これは誰宛、こっちは誰宛ね」とくれる人もいるし…。
そのため、やはり知っておいてもらった方がお互い円滑になるのだろう。
つい私が、相手の仕事の支障や思わぬ慣れない手間になってしまう、などと勝手に身構えてしまっているだけで。視覚情報でやり取りしない者や見た目はともかく反応に手間取るような者が玄関を開ける場合もあるのだから彼らとしてはこれも仕事内。
その上、仕事のやり方としては教わっていないのだからその場その場のコミュニケーション力で慣れていく必要のあること。
やはり、私も遠慮なく遮光グラスもしくは閉眼で出よう。万が一思わぬ出で立ちに驚かせたり身構えさせたとしても、最初の一回だけだ。
その上、私との方法を共有してくださったら、ああこういう人もいるのかこういうこともあるのかと、可能性を常に予期しながら他のところでも配慮してくださるかもしれない。
そもそも彼らの方がありとあらゆる人と出会ってあらゆる予期せぬ人や態度や出来事を豊富に体験しておられるのだから。
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