僕がフィルムで写真を撮っていた頃① 2013年、年末年始
気が付けばもう8年以上経っているけど、僕にもフィルムで写真を撮っていた時期があった。まだ本格的なフィルム人気の再来、という時期ではなかったし、僕自身”エモさ”を求めて使っていた訳ではなくて(多少はそういう気持ちもあったかもしれないけど)、理由は単純に35㎜フォーマットを安く使ってみたかったから。当時、α7(初代)が発表されてそれはもう熱烈に憧れたものの、貧乏学生が世界初のフルサイズミラーレスという最新機など買えるはずもなく、さりとて大きなボケを体感してみたいという思いは捨てられず、辿り着いた結論が「フィルム使えばいいんじゃね?」だった。
この頃すでにフィルム自体決して安くはなかったけど、それでもLomoのカラーネガ36枚撮り3本パックが1000円前後だったと記憶している。モノクロもFujiのPRESTOが1本500円くらい。Lomoは今や3倍の値段だし、PRESTOに至ってはその後まもなく生産終了になってしまった。
初めて買ったフィルムカメラはPENTAX ME。フィルムで撮る、と意気込んでもフルマニュアルで正確に露出する自信はなかったので、絞り優先で撮れるお気軽カメラ。金属のずしっとした重みが心地良くて、巻き上げレバーをジジっと回す感触は新鮮で楽しかった。そして何より、大きなファインダーを見ながらスプリットイメージを合わせていくと、被写体が文字通り浮かび上がってくるのには何度も息を呑んだ。
不思議と1枚撮るのにも丁寧に、慎重になる。出掛けついでに持ち出して構えても、何かがしっくりこなくて、結局1枚も撮らずに帰ってくることもよくあった。
年末。2013年の暮れが押し迫っていた。
帰省してフィルムで撮っていると言うと、母は「懐かしいなあ」と言い、父は「まだ売っとんか」と呆れたように笑った。犬たちはデジタルだろうがフィルムだろうが興味はないようだった。
田舎の冬には枯れた景色しか転がっていないのだ。
改めて見ていると、もっと撮っておけば良かったと思う。家族の写真。
否、なんでもっと撮っておかなかったんだろう…。
記憶と感情を喚起するのは、フィルムの力か?そうでないのか?
私的な写真でした。何か空気感が伝われば幸いです。
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