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あなたの「力」にブレーキをかけているもの

こんにちは!

こしあんです。

人がパフォーマンスを発揮するためには「睡眠」「運動」「環境」といったものが大切になりますよね。
睡眠不足でも、運動不足でも頭は働かなくなります。

ただ、良い環境が揃っているのになぜ力が発揮できないのか?

もちろん、実力不足もあるでしょう。
経験が足りない、知識が足りないといった問題はあります。
でも、この問題は本人が気づくことができます。
だから「もっと勉強しなきゃ」とか「自分には無理だ」と感じることがありますよね。

ただ、能力を発揮できない理由に「自分でブレーキをかけているのかも?」と考える人はほとんどいません。
あなたは「一生懸命やっているのに、自分の力にブレーキをかけるなんてありえるのか?」と思うかもしれませんね。

でもこれって無意識のうちに行なわれ、ほとんど気づくことはありません。

それは一体なんのか?

今回は、あなたが無意識にブレーキをかけてしまう「ステレオタイプの脅威」「固定マインドセット」の話をしていきます。


【ステレオタイプとマインドセット】

聞きなれないかもしれませんが、「ステレオタイプ」というのは誰もが持っているものです。
簡単に言えば偏見や型にはまった考え方を指します。
思い込みとも言えますね。

人間は今までの経験や見聞きしたことなどを総合して「○○はこういうもの」という型を作り出します。
「日本人なら」とか「夫なら、妻なら」といったものもそれに含まれます。

人は自分の持っているステレオタイプで様々なことを素早く判断するのですが、これには良い面も悪い面もあります。
ステレオタイプは素早く物事を判断できる反面、決めつけが酷くなったりします。
これは行き過ぎれば偏見や差別につながることもあります。

次にマインドセットについては「物の考え方、捉え方」といったところでしょうか。
失敗や成功、努力といったものも、あなたが持っているマインドセットで意味が変わってきます。

チャレンジすることに意味があるのか?

それとも結果を出さなければ意味がないのか?

歳をとっても成長できるのか、できないのか?
といった考えもこのマインドセットで変わってきます。


【ステレオタイプの脅威】

社会心理学者のクロード・スティールが、「ステレオタイプの脅威」というものを発見しました。

この「ステレオタイプの脅威」は、一般的に自分の属性にとって苦手とされる場所にいる個人は、その属性に関する不安が引き金となって実力が発揮できない場合がある。
というものです。

否定的なステレオタイプの対象になった人は、そのような見方で自分が見られる可能性がある状況に置かれると、そのステレオタイプを実現させる行動を取ってしまいます。

たとえば、あなたが「日本人はスピーチが苦手」というステレオタイプを持っているとします。
そうすると、日本人であるあなたが壇上に上がると、しどろもどろになり上手くしゃべることができなくなります。

また、工学部で学ぶ女性は男性よりも能力が低いと感じたり、一流大学に通うアフリカ系の学生は、ほかの人種の学生より劣っているように感じるといった事が挙げられています。

もちろん、実際にはそんな事実はないにも関わらずです。

そして、「女性は数学が苦手」と見られそうな状況では、実際に女性の数学の成績が悪くなったりします。
こうした現象を「ステレオタイプの脅威」と呼んでいます。

このステレオタイプは「人の知覚の偏りや社会化の過程を通して獲得されるだけでなく、集団に所属すること自体によっても生み出される」とされています。
つまり、所属する集団によってもステレオタイプが作られていきます。
私たちのステレオタイプは友人はもちろん、住んでいる場所の地域性などにも影響されます。

そして、私たちは自分の周りに起きていることを全体で見れば「非常識」だとしても、それを「常識」だと捉え、社会生活を円満に過ごせるように調整していきます。
また、このステレオタイプは3~4歳になる頃にはすでに表れてくるそうです。


【マインドセット】

スタンフォード大学心理学教授にマインドセットの研究をしているキャロル・ドゥエックという人物がいます。
ドゥエックは、生徒は自分の能力に関する暗示的・明示的なメッセージに強く影響されることを発見しました。

たとえば、「知能とは持って生まれた財産であってほとんど変化しない」、という考えを植え付けられた生徒たちは、「凝り固まった心」を持つようになり、知能の欠如をさらす可能性のある難しい問題を避けるようになりました。

反対にがんばれば知能は伸びるという「しなやかな心」をつくるメッセージを取り込むと、生徒たちは大いなる課題、より難度の高い問題に取り組むようになっていきました。
つまり、物事をどう捉えているかによってチャレンジ精神が旺盛になったり、成功とは、努力とはといった考え方にも違いが出てきます。

「固定マインドセット」によって、「やっても無駄!」「これ以上伸びるはずがない」と自分自身でブレーキをかけている人がいるかもしれません。
しかもこの「固定マインドセット」で厄介なのは、やる前から失敗を恐れ、チャレンジすることなく諦めることがあります。

このマインドセットで考えている場合、失敗は自分の能力の無さを証明することになると考え、それが嫌でできることしかしなくなります。

【マインドセットの記事はコチラ↓】


【逆境を乗り越える】

ごく幼い時期に逆境(貧困や虐待など)を経験すると、子供たちは挫折したときに自分を責め、他人の行動を敵意や偏見の表れとみなし、自分に何か良いことがあってもどうせ長くは続かないだろうと思うようになります。

実際、逆境にあった子供たちは、脳がつねに緊張状態にあります。

いつも何かを警戒しているため、良いことがあってもすぐにセンサーが働き「浮かれている場合じゃないぞ、警戒を怠るな!」と脳が指示を出してしまい、「どうせ長続きしない」と考えてしまう事がります。
しかし、こうした子供たちに介入して、何とかしてあげたいと立ち上がった研究者がいます。

スタンフォード大学のデイヴィッド・イェーガー、ジェフリー・コーエン、グレゴリー・ウォルトンという3人の研究者が、共同でこうした見方をする若者たちへの介入方法を調査しました。
3人はいくつかの実験で、小さな介入にも効果があることを突き止めました。

まず、年上の生徒が帰属意識を持てずに苦労したことを話すビデオを見せたり、「しなやかな心」による脳の発達について書かれた雑誌の記事を読ませたりすることで、低所得の生徒やアフリカ系アメリカ人の生徒のような「ステレオタイプの脅威」にさらされている子供たちの成績を著しく改善することに成功しました。
つまり、思い込みを取り外すことで、今までブレーキをかけていた能力を開放することに成功したんです。

この実験にはコーエンが開発した「思慮深い介入」というテクニックを使っています。
やったことはそんなに難しいことではありません。
生徒たちの不安を解消するため、生徒と先生の短く控えめなやり取りをしただけです。

生徒は、先生は自分を個人としてではなく、あるステレオタイプのグループの一員として判断しているのではないか?という不安を持っていたりします。
つまり、個人を見ているのではなく、「あいつら」とか「○○な生徒」といった感じで一括りにされていると感じています。

アメリカなどでは、特に貧困層の生徒と教師の関係はお互いに不信感を持っていたり、敵意さえあったりと、往々にして多くの問題をはらんでいたりします。
そして、教師と生徒の信頼関係が築けていない状態だと様々な問題が生じます。

これは、教師が生徒の取り組みを批判するときにとくに深刻になることがわかっています。
信頼関係がない状態では、教師が勉強のやり方を批判してくるとき、改善の手助けをしてくれようとしてるのか、それともただの嫌がらせなのかと考えたりして、この教師は敵か?味方か?という二極的思考に陥ってしまいます。

逆に、恵まれた環境で育った生徒は、あまりこうしたことに疑問を持つことはないそうです。
勉強のやり方を批判されても、こっちのやり方が好きだから注意されても気にしない、といった感じで軽く受け流す生徒が大半です。

しかし、幼少期の逆境によって、ずっと不利な状況に置かれた生徒にとっては、このやり取りが差し迫った極めて重要なものに感じられ、学校生活に多大な影響を及ぼします。

では、生徒が「まわりの大人は敵だ」と思っているような心理状態のとき、先生や親たちはどんな方法で介入すればいいのでしょうか?

【ジェフリー・コーエンとジュリオ・ガルシアの実験】

2006年、ニューイングランドの日本でいう中学校でこうした不安を解消するために考えだされた「思慮深い介入」が行われました。
この実験では、成績の悪いグループを対象に導入され、生徒たちは自分にとってのヒーローについて作文を書くように言われます。

作文は担任によって添削され、普段通り余白に疑問点や提案が書き込まれています。
その後、生徒を無作為に対照群と処置群に分け、添削済みの生徒の作文に教師の手書きの付箋を付けました。
対照群の付箋には「作文に対するフィードバックとして、コメントを書き込みました」という定型文のような文章を書きました。

一方で、処置群の付箋には高い期待を寄せていること、また、生徒がきっとその期待に応えられると確信していることを示すメッセージが書かれていました。
その文章にはこんなコメントが書かれていたそうです。

「作文にコメントを書き込んだのは、きみに大いに期待しているから、そしてきみがそれに応えられると思ったからです。」

コーエンによれば、不安のある生徒にとって最も効果のある介入方法だと言います。
あなたは、自分が期待されているといったコメントをもらったとき、どんな気持ちになりますか?

私は単純なので、うれしくなってウキウキしている自分が簡単に想像できます。
そして、次第にプレッシャーを感じます。笑

作文を返却された生徒たちは、成績を上げるためにコメントに応じて作文を書き直すかどうか選ぶ権利を与えられました。

人種のステレオタイプによって、教師から不利な判断をされる心配のない生徒たちの間では「高い期待」の付箋を受け取って書き直した生徒はわずかに増えましたが、効果はあまりありませんでした。

しかし、アフリカ系の生徒の間では、対照群と処置群の間に大きな差が表れました。
定型文のような文章を書かれた付箋を受け取ったグループ(対照群)では、書き直した生徒は17%だけでしたが、「高い期待」の付箋を貼られたグループ(処置群)は72%も書き直したそうです。
しかも、「高い期待」の付箋を受け取ったグループは、実際に作文の質も高くなっていることがわかりました。

この結果についてコーエンとイェーガーは、「添削は攻撃ではなく、もっと上手く書けるという信頼の表れだと思わせたことにある」といっています。

ただ、イェーガーによれば、「付箋をべたべた貼り付ければいいと言っているのではなく、教師は変化を起こすチャンスをつかまえて、学校を脅威の場所と思っている生徒と接するときに、コミュニケーションの方法を変えることで、彼らが感じている脅威を和らげることができる」としています。

子供たちを変えようとするのではなく、大人が接し方を変えることでそのことを教えるのです。
日本でも小学校低学年の漢字のテストがよくTwitterで流れてきたりします。
「少しの間違いも許さない!」と感じる先生の採点もありますが、そうでない先生もいます。

これはどちらが正しいという話ではなく、結局、先生と生徒の信頼関係が重要なのかもしれません。
学校を脅威と感じている生徒からしてみれば、厳しすぎる採点は「私のことを嫌いなんだな」といった所で思考が止まってしまいます。

そこで、もう一歩踏み込んで「あなたならできる」というメッセージを大人たちからすることができれば、生徒の考え方も変わってくるのかもしれませんね。



最後に、

もし、あなたが生活するうえで息苦しさを感じているなら、誰かの「思い込み」を押し付けられ、それを律義に守っているのかもしれません。

実際、この「ステレオタイプの脅威」を使って、自分の立場を優位に立たせようとする人たちもいます。
そういう人が親や上司にいる場合、この脅威から抜け出すのはかなりのエネルギーを使うことになります。
その間、自分の発想や考え方にずっと蓋をして生きている感じです。
言い方を変えれば、ブレーキを踏んだままあなたは一生懸命アクセルを踏んでいるのかもしれません。

ご存知の通り、「常識」といわれるものの中には、数年で変わってしまうような流動的なものがあるにもかかわらず、頑なにそれを守ろうとする人達がいます。

保守的といえば聞こえはいいかもしれませんが、変化を恐れているだけの人もいます。
(もちろん、「伝統」といったものは守っていかなければならないものもあります。)

「ステレオタイプの脅威」は思い込みです。
そして、「マインドセット」はモノの捉え方です。
この二つにちょっと気をつければ、見える世界も変わってくるのではないでしょうか。
ぜひ、ブレーキをかけている思い込みを捨て、自分の持っている能力をもっと伸ばして欲しいと思います。


今回はここまで

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参考にした資料(主に読んだ本)をもとに考察したもので、私の主観が多分に含まれています。
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