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EC事業を立ち上げる際に知っておくべきポイント〜法律篇〜

本記事の目的

ECサイトを立ち上げる際に知っておきたい、EC事業を運営する際に避けては通れない法律について、その重点ポイントを解説します。

よって、これからEC事業の立ち上げに携わる方や、EC運営の実情に興味のある方の参考になれば幸いです。

ECサイトを運営するにあたり知っておくべき法律とは?

ECサイト運営に知っておくべき法律は多くありますが、まずは中でも経済産業省が定める「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の11のものを下記に一覧でご紹介します。

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今回はEC事業を運営する際に特に重要となる「景品表示法」「特定商取引法」についてご紹介します。

景品表示法とは?

正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、商品の及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的として定められた法律です。

商品やサービスの品質・内容・価格などを偽って表示することを厳しく規制すると共に、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限し、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るものです。

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”不当な表示”には何が該当するか?

商品やサービスの品質や価格について、消費者に実際よりも著しく優良または有利であると誤認を与える表示は「不当表示」とされ、景品表示法において禁止しています。

また、テレビや新聞、インターネット上の広告はもちろん、メールマガジンでの表示や、動画での宣伝文句、商品のラベルや包装、店内でのポップ等は、いずれも「表示」に該当し、表示規制の対象となります。

不当表示のケース①:優良誤認
優良誤認は、自社が提供する商品やサービスの品質や性能について、一般消費者に対し、実際よりも著しく優れたものであると誤解させたり、他社製品よりも著しく優れたものであると誤解させるような表示を指します。

<参考例>
・実際には全く効果がないにも関わらず、「飲めば痩せる」などとダイエット効果があるようにうたう
・国内産の原料のみを使用していると表示しているにも関わらず、実際には国外の原料も混っている など

不当表示のケース②:有利誤認
有利誤認は、商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を指します。

<参考例>
・値引きの実態は全くないのに「今なら3万円値引き」と表示して販売する
・「先着10名様限定プレゼント!」と表示していたが、実際には3名にしかプレゼントしない など

不当表示のケース③:その他
その他、優良誤認、有利誤認のいずれにも当てはまらない場合でも、一般消費者に誤認される恐れがあると内閣総理大臣が指定される不当表示があります。

<参考例>
・商品に原産国が明示されていないなど、原産国の判別が困難な場合
・一般消費者を誘引する手段としておとり広告のような表示をおこなう場合 など

”過大な景品類”には何が該当するか?

景品類とは、顧客を誘引するための手段として、商品・サービスの取引に付随して提供する物品、金銭などを指します。(※値引き、アフターサービス等は除く)

それぞれ景品の種類に応じて、金額は下記のように決まっています。

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それぞれの懸賞の定義は下記の通りです。

一般懸賞
商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性や特定行為の優劣によって景品類を提供すること。

<参考例>
・競技、遊戯等の優劣により提供する場合
・一部の商品にのみ景品類を添付しており、外観上それが判断できない場合 など

共同懸賞
一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供すること。

<参考例>
・一定の地域(市町村等)の小売業者またはサービス業者の相当多数が共同で実施する場合
・歳末セール、お中元等の時期に、商店街やショッピングビル等が共同で実施する場合 など

総付け景品
懸賞によらず、商品・サービスを購入したり、来店したりした人にもれなく提供される景品類を指します。

<参考例>
・来店者全員または、入店の先着順に提供する場合
・商品・サービスの利用者全員に提供する場合

商品の販売・使用に必要な物品、見本及び宣伝用の物品、割引券、開店記念で提供される記念品などには景品規制は適用されません。

オープン懸賞
商品・サービスを購入したり、利用したりせずとも、誰でも応募できる懸賞を指します。

検証を実施するメーカーが資本の大半を出資している、フランチャイズ契約をしている店舗の場合は、店舗に検証への応募用紙を設置しても、オープン検証とは認められません。また、総付け景品同様、開店記念で提供される記念品もオープン懸賞には該当しません。

景品表示法を違反した場合、どのようなリスクがあるか?

事業者に対して調査をする権限は、公正取引委員会並びに都道府県も持っています。調査の結果、違反につながるおそれがある場合は「指導」、違反が明確にある場合は「措置命令」が出されます

事業者は、措置命令や課徴金納付命令が出される前に、一定期間、書面による弁明・証拠提出の機会が与えられます。

措置命令
違反があると判明した場合に実施。一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の遂行、その違反行為の中断を命じられます。※報道発表あり

指導
違反につながるおそれがある場合に実施。※報道発表なし

もし、措置命令に従わない場合は、事業者の代表者等に対して、【2年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはこの両方】。また、事業者に対しては、【3億円以下の罰金】が科されます。

また、消費者庁は、商品・サービスの取引について不当な表示をした事業者に対して、事業者に弁明の機会を付与した上で、不当な表示を行った商品・サービスの売上額に3%を乗じた金額を賦課することができます。これを「課徴金納付命令」といいます。

特定商取引法(特商法)とは?

次に、特定商取引法です。特定商取引法とは、消費者トラブルが生じやすい特定の取引を対象に、トラブルを防止し消費者の利益を守ためのルールを定めた法律を指します。訪問販売や勧誘行為、通信販売など特にトラブルが生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールとクーリング・オフなど消費者を守ルールが定められています。

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ちなみにECサイト事業は「②通信販売」に該当するため、法律に準拠する必要があります。

通信販売は、事業者が新聞・雑誌・インターネット等を利用して広告を行い、消費者が郵便屋電話、インターネット経由での申し込みをする取引を対象としています。

ネットオークションサイトやフリマアプリなどでの販売も、営利の意思を持って運営しているとみなされる場合には、通信販売に該当し、特定商取引法の対象になることがあるので、注意が必要です。

ECサイトを運営する際に守らなければならない内容と罰則

特定商取引法では、各取引類型によってそれぞれに行政規制が定められています。通信販売における行政規制は主に下記の6つです。

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行政規制のみならず、民事ルールでも下記の通り定められています。

契約の申込みの撤回または契約の解除(法第15条の3)

「消費者が商品を受け取って8日間以内であれば、消費者は事業者に対して契約申し込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができる」※ただし、事業者が広告であらかじめ、契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります。

通信販売にはクーリングオフ(一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度)はありませんが、返品特約を記載しておく必要があります。

事業者の行為の差止請求(法第58条の19)

事業者が通信販売における広告について、不特定かつ多数の者に誇大広告などを行い、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、事業者に対し、行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。

万が一規制に違反した場合は、業業務改善の指示(法第14条)や業務停止命令(法第15条)、業務禁止命令(法第15条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となりますので、注意しましょう。

「特定商取引法に基づく表記」を書く理由

特定商取引法で準拠すべき内容を踏まえ、事業者は運営するECサイトに「特定商取引法に基づく表記」という必要事項を開示したページを用意する必要があります。

これは、初めてECサイトに来訪したユーザーに対し、安心して購入できるECサイトであることを示すためにも、重要なページとなります。特定商取引法では表示義務項目が定められているので必ず守りましょう。表示義務内容を記載することは、お客さまの安心感を高め、トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。

「特定商取引法に基づく表記」のページで記載する項目

「特定商取引法に基づく表記」のページでは下記項目を記載することを推奨します。

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販売業者名
法人が運営される場合は法人名、個人が運営される場合は個人名を記載しましょう。

運営統括責任者名
販売に関する責任者名を記載しまそう。法人は代表者名、個人は個人名となります。

所在地
本店(本社)の所在地を記載します。店舗がない場合は、運営元の住所となります。
※バーチャルオフィスでも可能です。

商品代金以外の必要料金の説明
送料、消費税、手数料などがある場合は全て記載しましょう。クレジットカード決済の手数料は、購入者負担ではなく販売者負担となりますのでご注意ください。

申込有効期限
商品が申し込み制の場合は、いつまでの申し込みが有効なのかを記載しましょう。同時に、品切れの場合の対応も記載する必要があります。

不良品への対応
不良品の場合の交換や、返品の条件を記載しましょう。

販売数量に関する内容
商品の販売数量の制限や、何か特別な条件がある場合は記載しましょう。

引渡し時期
前払いの場合・後払いの場合に分け、注文日より何日以内に発送できるかを記載しましょう。地域、条件により期間が異なる場合は、最長で何日以内になるかも表示する必要があります。

お支払方法
代引き、銀行振り込み、郵便振り込み、クレジットカードなど、自社のECサイトで扱うお支払方法を記載します。

お支払期限
前払いの場合は注文日から何日以内、後払いの場合は納品より何日以内に支払うべきかを記載しましょう。

返品期限
納品日より何日以内であれば返品が可能かを記載しましょう。返品不可の商品がある場合は、その条件を記載します。

返品送料
返品の際は、購入者側と販売者側のどちらが送料を負担するのかを記載します。

資格・免許
ECサイトで販売する商品に、販売資格・免許が必要な場合は、その資格を記載します。

例:古物商、旅行業者代理業、酒類販売業 など

屋号・サービス名
ECサイトの名称を記載しましょう。

電話番号・メールアドレス
ECサイトの連絡先電話番号、メールアドレスを記載しましょう。

本記事のまとめ

ECサイトが準拠すべき法律
 - 景品表示法
 - 個人情報保護法
 - 資金決済法
 - 通則法
 - 電子契約法
 - 特別商取引法 と11つ

景品表示法とは
 - 不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止し消費者の利益を保護することが目的
 - そのため、不当な表示の禁止、過大な景品類の提供を禁止している

不当表示に該当するパターン
 - 優良誤認
 - 有利誤認
 - その他、一般消費者に誤認される恐れがあると内閣総理大臣が指定した場合

特定商取引法とは
 - 消費者トラブルが生じやすい特定の取引を対象に、トラブルを防止し消費者の利益を守ためのルールを定めた法律
 - ECサイト運営も当てはまる

通信販売における行政規則
 - 広告の表示(事業者の氏名・住所・電話番号を必ず表示する)
 - 誇大広告などの禁止
 - 未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
 - 前払い式通信販売の承諾などの通知
 - 契約解除に伴う債務不履行の禁止
 - 顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止

特定商取引法に基づく表記に記載すべきこと
 - 販売業者名 / 運営統括責任者名
 - 所在地
 - 商品代金以外の必要料金の説明 / 不良品への対応
 - お支払方法 / お支払期限
 - 返品期限 / 返品送料 など

以上が、ECサイトを始める際に最低限知っておきたい法律の解説となります。

今回取り上げた「景品表示法」「特定商取引法」以外にもECサイトで扱われる商品のジャンルに応じては、他にも理解しておくべきものはありますが、また別の機会に解説記事をあげられればと思います。

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