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相手の話が理解できない時に考えたい、視点と視座の話。

先日Twitterを眺めていると、 #AV新法に反対します というハッシュタグがトレンド入りしていました。

 自民党など与野党6党は11日、アダルトビデオ(AV)への出演契約の被害に関する会合を開き、若者らの被害防止に向けた新法の制定を今国会中に議員立法で目指す方針を確認した。
 背景には、4月からの民法の成人年齢引き下げで、18、19歳が親権者の同意のないAV出演契約を後から取り消せる「未成年者取り消し権」の対象から外れ、出演を強要される被害が広がりかねないとの懸念がある。

産経新聞「AV出演被害防止、超党派で議員立法へ」より引用

これに対し作られたハッシュタグで、その主張に反対意見があれば賛成意見もあり、便乗して自分の意見をぶつける人もいたりと、様々な意見が飛び交っていました。

こんな風に、一つの事象に対して他者の意見が理解できなかったり、他者と衝突したりすることは、仕事でも私生活でも至るところで発生します。こうした現場に出くわすと、なんで建設的な議論ができないのかと悲しい気持ちになってしまいますね。

建設的な議論ができない時。それはきっと、「視点と視座の違い」が両者の間で発生しているからなのかもしれないなと、最近思うようになってきました。今日はそれについて書いてみます。

視点と視座って何?

視点と視座、辞書で意味を調べるとこんな感じになります。

し‐てん【視点】
1 視線の注がれるところ。
2 物事を見たり考えたりする立場。観点。「視点を変えて考える」「相手の視点に立つ」
3 透視図法で、画像と直角に交わる仮定の一点。対象を眺める位置。

webio参照

し‐ざ【視座】
物事を見る姿勢や立場。「人道主義的な視座で発言する」

webio参照

辞書だと結構似たような意味で語られていますね。

僕の解釈では、もう少し明確に、「視点=角度・切り口」「視座=立場・役割」という二つに分けて考えられるかなと思っています。

視点は「事象を見る角度」のこと

視点というのは、「一つの事象をどの角度から見るか」という話です。

「エビフライって、しっぽから頭までを横に寝かせて見たらエビフライに見えるけど、真正面から見たらウ○コみたいに見えるよね」

これは、僕が新卒で求人広告の制作をしていたころに、上司に言われたことです。

求人広告は、転職を考える求職者に振り向いてもらえる表現を広告という形に落とし込む必要があります。しかしながら、通り一遍等の表現で書いても陳腐になってしまい、求職者に刺さりません。そうなった場合に、「募集職種をどの視点で求職者に訴求するか」が必要になってきます。当時の上司はそれをエビフライの見える角度で説明してくれようとしていたんですね。

例えばカルピスについて考えてみます。僕が小学生の頃は、お歳暮お中元に贈られてきてとても嬉しかった記憶のあるカルピスです。あの頃はカルピス原液が贈られてきて、原液と水を3:7くらいのバランスで入れると美味しいカルピスを楽しめました。

そんなカルピスを起点として、今ではものすごい豊富な種類の商品が出ています。もともと薄めた状態で提供されるカルピスウォーター、甘さの中にもスッキリ刺激が入ったカルピスソーダ、ゼロカロリーで楽しめるゼロカルピス、優しい味わいをひとつまみできるカルピスゼリー、上質な甘さとコク深さを楽しめるザ・プレミアムカルピス、リラックスタイムにぴったりの上質な濃さを味わうカルピス THE RICH……etc. 

挙げればきりがないくらい、カルピスっていろんな商品が出てて驚きました。きっと企画会議で「そもそも原液を割るのめんどくさい」「いろんな味楽しみたいな」「甘い以外の味覚がほしい!」「大人になっても飲みたいけどカロリーが気になる…」「逆に、大人になったしもっと濃厚なのが欲しい…」とか色々出たんでしょうね。

カルピスという一つの商品を「味」「飲むシチュエーション」「健康」「贅沢」などいろんな視点(=角度)から議論がなされたのだろうなと妄想します。とっても楽しそうです。

何が言いたいかというと、こんな感じで、「視点」はアイデアに繋がるので、広ければ広いほどいいということでした。

この辺の話については、創作や企画に関わる職種の人や会社ならよく理解できるのではないでしょうか。

視座は「事象を考える立場や役割」のこと

翻って、視座は「一つの事象をどの立場から見る(語る)か」という話になります。

よく聞く話として、現場と経営陣との衝突があります。これが起こるのは、まさに「視座の違い」が原因であることが多いです。

例えば一つのトークイベントを開催する時に、経営目線では「何のためにやるのか」「全体予算をいくらにするか」「目標設定・目的をどうするか」「誰に責任者を任せるか」「いつまでにやるか」などをまずは考えます。

次に運営目線では、「どんな規模でやるか」「どんなコンセプトにするか」「誰を巻き込むか」「どこでやるか」「オンライン/オフラインどっちにするか」「いつやるか」「どんなテーマで誰に出演してもらうか」などを考えます。※このあたりは、どこまで経営陣が考えてどこから運営側に託すかは組織によって変わってくるかもしれません

そして運営当日の現場目線では、「自分の立場が何か」「誰に指示を従うか」「何時に何をやるべきか」などを考えます。

このように、視座(立場)の違いによって、考えるべき内容が変わります。考えるべき内容が変わると、そもそも同じ議論のテーブルに乗りません。

もし上司や部下との対立が絶えず「何言ってるんだろうこの人」「なんで私の言ってることが理解できないんだ」と思うことがあったら、相手の立場的には重要じゃない・関係がない話と思われている可能性があります。

視座の違いは本質的な理解が難しい

しかし、この「視座の違い」は厄介なもので、実際にその立場に立たないと分からないこと、見えないことがたくさんあります。

経営者がお金にシビアだということは皆さんご存知のとおりですが、じゃあどれくらいシビアなのか、具体的にどんな気持ちなのかは経営者にならないとわかりません。

僕自身も、前職のスタートアップでは創業期に入ったため経営者に近い立場で仕事をすることが多かったので、経営者は色々大変だという感覚は、なんとなく理解しているつもりでした。しかし、やはり起業して自分で経営する立場に立って初めて、本当の意味で「経営すること」の大変さやお金に対するシビアさを思い知ります。

カルピスにしたって、いろんな商品アイデアが生まれますが、「その商品は何を目的に作られるのか」「原価はいくら掛かるのか」「宣伝予算はいくらかけるのか」「いつまでに何本売れたらヒットとするか」などを考える人がいて、それに基づいてさまざまな判断がなされます。ただいろんなアイデアを出してたくさん商品を作っていればいいわけではないですからね。

理由は、役割が違うからです。お金を出す人と、やりたいことを実現する人、役割の違いによってそれぞれの正義があり、意見が衝突することが発生してしまいます。

視点は「多いほどいい」が、視座は「高いほどいい」というわけではない

以上が、僕なりに考える視点と視座の違いです。

難しいなと思うのは、視点は多ければ多いほどいいのに対して、視座は高ければ高いほどいいというわけではないということです。

複数視点を持つということは、視野が広がり問題解決のスピードも上がるし、多様な価値観に触れることで許容する力がつくし、結構ポジティブな要素が大きいです。

それに対し、視座というものはただの役割です。低いからダメか、高いからいいか、複数持てるからいいか、と言われるとそうともいい切れません。

もちろん、プレーヤーから管理職に上がれば視座が上がる(上げざるを得ない)し裁量も責任も大きくなるので収入アップ・キャリアアップに繋がるというメリットはありますが、管理職はあくまで役割です。管理職になると態度も大きくなる人はいますが、その会社で、過去の実績や適性を踏まえて抜擢されるだけで、それが人としての格が上がるわけではありません。

そもそも、視座を複数持つ=複数の役割を一人で担うのはあまり現実的ではありません。プレイングマネージャーが一番疲弊するよねと言われる所以も、そこにある気がします。

プレーヤー(現場)経験のある人が管理職に立って、プレーヤーの苦労や悩みを理解した上で管理職の役割をまっとうできれば一番良いのかもしれませんね。

視点はたくさん持てる努力を。視座は役割によって変わることを理解する努力を。

ということで、他者との対話の中で衝突が起こる原因としての「視点と視座の違い」について考えてみました。

日常生活や仕事においては、この違いに加えて自分と他者の「気分の浮き沈み」という変数が加わることですべての衝突を避けて生きることが難しくなるわけですが、「視点と視座」の考え方を持っていれば、無益な衝突は少なくなるのではないでしょうか。

こんなに偉そうなことを言っておきながら、僕自身もときどき「視座」の違いに思いを馳せることができず、問題を解決したいのか自分の主張を通したいのか分からなくなることがあります。建設的な議論って、難しいですね。

日々精進しなければならないことばかりですが、みなさんも周りの意見衝突や対立を見かけたら、視点と視座の違いを見極めて問題解決へと導いてみてください。

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