基準を示して叱る時に叱るのはパワハラではない
私が新入社員として最初に配属された支店では、総務課にご年配の女性が一人おられました。
電話が鳴ってもご機嫌の良い時しか出てくれません。
代表電話は総務課のところにかかってくるので、我々新入社員がまずやったことは電話の応対。
先輩たちは日中ほとんど営業で外出しているため、支店に残っているのはごくわずかの人数しかいません。
同期と二人で「もうちょっと電話を取ってくれないかぁ」と思いつつ、どんな反応が返ってくるのか怖かったこともあり、ベテラン社員には何も言えずにひたすら電話を取っていました。
ところで、最近では顧客対応のレベルを上げるために
電話は全員で取りましょう
電話は2コール以内に取りましょう
電話を取ったら会社名、部署名、名前はハッキリ言いましょう
というように全社で電話応対に力を入れている会社もたくさんあります。
でも、電話応対は意外と難しいもの。
声のトーン一つでも相手の受ける印象が違いますし、自分は丁寧に言っているつもりでも、第三者から見ると、「もっと心をこめて話せ」と指摘されることがあります。
私も新入社員の時に「A社から電話です」と何気なしに担当者につないだら、営業課長から「『A社さんから電話です』と言わなきゃダメだ!」と叱られました。
電話をつなぐタイミングが悪いと、「A社」と呼び捨てにしているのが相手に分かるし、支店内で他のお客様に聞こえたら、けっして良い印象は与えないから、というのがその理由でした。
最近は「パワハラになるから」という理由で、上司や先輩が部下や後輩を叱らないケースが多いと言われています。
しかし、会社として「ダメなものはダメ」とハッキリ言葉で伝えなければ、けっして良くはなりません。
また、会社として「ダメな基準はこうだ」というのをきちんと示さない限り、知らない人は知らないままです。
なぜか上司もあまり注意をしなかった総務課の女性は転勤するまで、電話を積極的に取ることはありませんでした。
一方、お客様の社名を「さん」づけするよう早い段階で指摘してもらったお蔭で、私は社会人としての常識を一つ身につけることができました。
子供でも自分が悪いことをして叱られた時は、「これはやっちゃいけないんだ」ということをしっかりと理解します。
また、「これは自分のために叱ってくれてるんだ」という場合と、「単に本人の機嫌が悪いから叱っているんだ」という場合の違いは叱られた方にはしっかりと伝わっています。
会社の基本的な考え方や方針と違っている場合に見て見ぬふりをしていないか。
そして、間違っている場合には感情ではなく、事実に基づいて叱っているかどうか。
マネジメントの基本は「当たり前のことを当たり前にやり続ける」。
相手の気分を害するかもしれないと忖度して、会社として当たり前にやろうとしていることを守らない人を放置すると、その当たり前は当たり前ではなくなります。
注意する側の気分で叱るのは論外ですが、基本的な基準を示した上で、その基本を守らない場合は事実に基づいて叱る。基本は徹底してこそ基本として定着します。
なお、会社の持続的な成長を目指す「座組み」で目指すのは、「仕組みあっての人」ではなく「人あっての仕組み」です。
「座組み」は3つのステップに分かれています。
利益の見える化
仕事の見える化
人の見える化
それぞれのステップについて5つ、合計15の質問をしていきます。
ぜひ、チェックをしながらご覧ください。
ちなみに、前述の電話応対の話は「仕事の見える化」に相当します。ある人はやるけれど、別の人はやらないなら、会社の仕事として見える化できていない状況です。