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起業してからの15年を振り返る~自己紹介を兼ねて

プロローグ:オーラがなくても「それでええやん」

「岩井さまには正直申して、そのようなオーラがないのです。なぜないのかはよくわかりませんし、 どうやったら、そのようなオーラがでるようになるのかわかりませんが、とにかくそれがない限り、岩井さまがご自分の人脈を作り上げて、大きく成功することは難しいと思われます。」

このようなメールをもらったら皆さんはどのように思われるでしょうか。

さすがに、私もこのメールをもらった時はへこみました。

送り主は前職の時にお世話になった方で、起業後も時々情報交換させていただいておりました。

ある会合にお誘いを受けたので、翌日お礼のメールをお送りしたところ、突然このようなご返事が・・・。

私の何かが気に入らなかったのか、それとも、私を発奮させようとした愛のムチだったのか。その後、さすがに連絡が取りづらかったので、その真意は分かりません。その方とのご縁はそこで終わってしまいました。

ちょうど、12年前のことです。

はたして、現時点で私にオーラがないのか、あるのかは分かりません。

でも、一つ言えるのは「オーラがなくてもいいじゃないか」ということです。

現在推進している「考トレ」にしても、「1ヵ月で売上が倍になる」とか、「キャッシュフローが3ヵ月で急速に改善する」といったような劇的な成果をコミットするものではありません。

3~6ヵ月間のコンサルティングと各回に出る課題に地道に取組んでいただくことで、徐々に会社の体質が改善されるという性格のものです。このため、かなり地味です。しかしながら、10年、20年と長期に渡って会社を続けていくためには、地味な努力をどれだけ重ねられるかにかかっています。

そこで、自己紹介も兼ねて、起業してから今までを振り返ってみたいと思います。


1.勢いのまま起業してしまった結果は・・・

「USPが大事」

「やっぱり、ポジショニングが一番」

「『誰に』、『何を』、『どのように』を決めないと」

マーケティングについて学ぶと、「自社の商品を売るために大切な基本はシンプル」であることが分かります。

しかし、理屈は頭で分かっても、「ウチの場合はどうすればいいのか」というのはそれほど単純な話ではありません。

私自身は、現在主に業務改善や人材育成に取り組んでいます。しかし、起業してからもうすぐまる15年、ここまで来るのには紆余曲折がありました。

私の場合、準備をしっかりしてから起業したのではなく、勤務先の業績悪化に伴い、「こんなことになるのなら自分でやろう!」と、勢いのまま独立しました。

このため、起業した際はマーケティングのマの字も知らず、

・自分のウリは何なのか?
・どうやったら商品が売れるのか?
・お客さんを見つけるにはどうすればいいのか?

も、まったく考えていなかったのです(汗)。

幸い最初の3年ぐらいは、知人、友人や私の仕事振りを知っている方々からのご紹介があったので、取りあえず目の前の仕事に集中することでなんとか仕事が回っていました。

けれども、3年を過ぎた頃から「このままではちょっとマズイかも・・・」と思い、いろいろな本を買ったり、起業家向けの勉強会に参加したりして、会社の経営者が本来やるべきことを学び始めたのです。

すると、それまで、ホームページはおろか、ブログさえ書いたこともなかった私は「自分は何にも知らなかった!!!」ということを改めて思い知りました。

それから、いろいろなコンサルタント、コーチ、専門家の方からたくさんのことを学びました。

しかし、それでも今のコンテンツである「考トレ」にたどりつくまで約15年かかったのです。

この間、試行錯誤の連続で、あっちへフラフラ、こっちへフラフラという恰好悪い状況だったので、正直、あまり人には言いたくありません。

また、中には「ずいぶんお金をかけたけれど、全く効果がなかった・・・」と今でも後悔しているものもあります。

一方、時には「なんで、この人にこんなことを言われなアカンのか!」と、はらわたが煮えくる思いをしたこともありました。

このため、「ブランディング的には書かない方が良いのかも」という気もします。けれども、あっち、こっちとフラフラしてしまったからこそ、ようやく今のコンテンツが完成できたとも言えます。

そこで、少し長くなりますが、「考トレ」ができるまでを振り返ってみたいと思います。私の事例を他山の石として成長のスピードを加速していただければ幸いです。


2.やってきたことがそのまま自分のビジネスへつながるとは限らない

起業した当初、メインの業務にしていたのは「資金調達のサポート」です。

これは

・私が元銀行員であること
・銀行退職後もネット専業銀行の開設やベンチャー企業の立上げ時に資金調達に関わったこと

から、なんとなく「資金調達のお手伝いならできるかも」という軽い感じで始めたのです。

15年前は一時のIPOブームは去っていましたが、まだまだ「将来的には株式公開を目指します!」と宣言してお金を集めている企業がたくさんありました。

私はエンジェル投資家のグループにも入会。毎月行われる事業説明会に参加して、「このビジネスは面白そう」と思った会社には詳しい話を聞きに行ったりもしていたのです。

しかし、そのうちに「なんだか、ちょっと違うかも・・・」と思うようになりました。

すべての会社がそうだとは言いません。けれども、大半の会社は欲しいのはお金だけであって、私の知識やノウハウも必要としていないということに気づきました。

つまり、資金調達を希望する会社にとって興味があるのは、「私がお金をたくさん持っているかどうか」、もしくは、「お金を持っている投資家や銀行と私がつながっているかどうか」ということでした。

このため、「どうやったら将来にもつながる形で資金調達ができるか」ということを説明しようとしても、私がお金の出し手ではないということが分かると、相手は急に興味がなくなり、その後一切連絡が来なくなるというケースが大半だったのです。

もちろん、私自身が「この経営者なら大丈夫だ」「このビジネスは将来性が大きい」と思った会社については知っている個人投資家やベンチャーキャピタルに紹介したりもしました。

しかし、「この経営者は脇が甘いなあ」「この計画はもっと詰めないとダメ」と思った先については、紹介しても「なんでこんな会社を紹介したの?」と先方から言われるのが分かっていたので、一切話をつながなかったのです。

当時は、起業したばかりでそれほどの実績もありません。しかも、大きな看板もない会社なのに、自社の情報発信を全くしていない状態。今にして思えば、そんな会社にいい案件が回ってくること自体が奇跡です(苦笑)。

けれども、当時の私は、「まったく、ロクな案件がないなぁ」とぼやいていたのでした。

3.資金調達から方向転換して内部統制へ

「この仕事を一緒にやりませんか?」

起業してから半年ぐらい経った時でしょうか、以前の職場で知り合いになった公認会計士の先生からお声かけいただきました。

その頃、世間では企業の相次ぐ不祥事を背景に

「会社の内部統制をしっかりしよう」
「財務報告で不正が起こらないよう経営者がきちんと管理体制を作ろう」

という動きが活発になりました。アメリカで生まれたSOX法を日本でも導入し、「J‐SOX」と呼ばれる制度を上場会社に適用することになったのです。

知人の会計士の先生は、内部統制という言葉をまだほとんどの日本人が知らない時代にアメリカでその制度をご経験されたベテランの先生。新しく会社を作って、内部統制の仕組みを日本にも定着させるという理念を持って事業を始められました。その時、ありがたいことに私にもお声掛けいただいたのです。

先生のお話をお聞きし、難しいところは正直よく分からなかったのですが(汗)、とにかく、「良い会社をきちんと作るための仕組み」であることは分かりました。

最初に始めた資金調達のサポートに「なんだかなぁ~」と閉塞感を抱いていた私は、「是非やらせて下さい!」と返答。先生にも教わる一方、自分でも「CIA(公認内部監査人)」の資格取得に向けて勉強を始めるなど、業務の内容を方向転換したのです。

この内部統制の仕事を始めたことは、現在の仕事に将来的にはつながっていくことになります。このため、お声掛けいただいた先生にはたいへん感謝しております。また、今でも時々仕事の件で、ご相談にのっていただいております。

けれども、会社経営という観点で見た場合、この方向転換にはいくつかの落とし穴がありました。

つまり、私の場合は「将来的には○○がしたいから今やるべきことはこれだ」と考えて方向転換したのではなく、「今の仕事がパッとしないので、面白そうなものに食いついた」というのが実態。このため、やがて「目の前の仕事を一生懸命やって売上も確実に上がるようになったが・・・」という落とし穴が待っていたのです。

4.紅茶キノコと内部統制の共通点とは?

紅茶キノコ

朝バナナ

ビリー・ザ・ブートキャンプ

これらは、「身体にいい」「続けていると痩せられる」といった評判を生んでテレビでも盛んに取り上げられ、一大ブームになりました。

けれども、少なくとも私の周りには、「今でも毎日紅茶キノコを飲んでいる」「ビリーの体操を続けている」という人はいません(笑)。

実は、私が取り組んだ内部統制という仕事も、当時は法律が制定され、すべての上場会社には内部統制報告制度が適用されるということで、一大ブームとなっていました。

もちろん上場会社の中には法律が変わる前から自主的に内部統制の仕組みを取り入れている会社もありました。しかし、中には「内部統制って何?」「何をどうすればいいのかよく分からん」という上場会社もあり、内部統制についてコンサルすることが一つのブームになったのです。

そして、私もそのブームに乗っかった一人でした。

ちなみに、今でも法律上は内部統制報告制度の仕組みは生きています。このため、すべての上場会社は、内部統制に関する報告書を毎年内閣総理大臣宛に提出しています。けれども、最初は「内部統制って何?」と戸惑っていた会社も、今ではそのほとんどが自主的にその仕組みを回しています。つまり、一時に比べると、内部統制に関するブームは去ったと言えるのです。

仕事をやる上で時流に乗るというのは必要なことです。しかしながら、本質をとらえずに、表面的なものに便乗するだけでは、5年、10年と長く事業を続けていくことは不可能です。

CIA(公認内部監査人)の資格を取り、実務としても上場会社2社の内部統制の仕組み導入を経験した私は「これは一生使えるかも」と内心ほくそえんでいました。このため、クライアント先に一応形ができあがり、「来月でこの仕事はいったん終了です」と告げられた時は、「あっちゃー!」という感じでした。

紅茶キノコや朝バナナのブームが終わっても、健康やダイエットに対するみんなの関心が高いように、「いい会社を作るにはどうすれば良いのか」ということに関する経営者の関心は今でも非常に高いものがあります。

一方、紅茶キノコだけ飲んでいれば健康になるとは限らないのと同じく、内部統制だけやっていれば会社がよくなるものでもありません。このため、今推進している「考トレ」においても、内部統制の仕組みは要素の一つとして取り入れています。

この点、最初の方向転換をした後、まだ理解の浅かった私は内部統制のコンサルティングを習得できれば、「一生使えるかも」と勘違いしていたのでした。


5.社長は動物園のライオンではなく、野生のライオン

「1円で簡単に買えるけど、維持するのは難しい称号」

これは、小学館の国語辞典「大辞泉」の新聞広告の中で「あなたにとって社長とは?」という質問に対して、株式会社シー・レップの北田浩之社長が回答されたものです。

これ以外にも

「尻をまくる人ではなく、腹をくくる人」
(株式会社フィールド・デザイン・ネットワークス 見山謙一郎社長)

「会社ではトップの地位だが、家庭では子供やペットより下の序列にもなる役職のこと」
(株式会社イエローハット 堀江康生社長)

など、個性あふれる回答が並んでいて、思わず読みいってしまいました。

さて、内部統制というブームに乗っかって、その仕事に力を入れ出した私ですが、社長として大切な仕事を疎かにしていました。

それは、「将来の見込み客を開拓するために次の一手を打つ」ということです。

内部統制の仕事がピークを迎えた頃は、週5日、毎日のようにクライアント先に訪問して仕事をやるということもありました。とても忙しかったのですが、クライアント先の中にだんだんと仕組みができあがっていく一方、収入も増えるで、「仕事をやっている!」という充実感がありました。

けれども、この内部統制の仕事に関して言えば、知識や経験の違いもあり、次の仕事を獲得するという役割は業務提携先である公認会計士の先生任せです。そして、弊社は「与えられた仕事をひたすらこなす」という立ち位置でした。

表現を変えれば、動物園のライオンであって、飼育員さんが餌をくれるのを待つという状態だったのです。つまり、野生のライオンのように獲物の狩り方を知らなかったという訳です。

動物園のライオンの場合、自分で獲物を獲得できなくても毎日お腹が一杯になるので、ある意味とても居心地のいい状況です。そして、一定の安定が得られると、やはり「このままなんとかなりそう」という気になります。

サラリーマンであれば、それでも一生なんとかなるのかもしれません。でも、会社経営者の場合は、常に「次はどうするか」を真剣に考え、将来に向けての布石を打っておくことが必要です。

「餌を自分で取れるようになって一人前」

動物の世界では常識とも言えることを半人前の私は分かっていませんでした。

遅ればせながら、その常識にようやく気がついた私は、将来に向けての布石を打つためにやるべきことに時間をかけるよう軌道修正し始めました。

6.日本にいるのに日本語が通じない

「中小企業のゴーイングコンサーンをサポートします。」

これは、私が最初にホームページを作成した時、ヘッダー部分のキャッチコピーとして使ったものです。

ゴーイングコンサーンを日本語に訳すと、「継続企業の前提」、つまり、「企業が無期限に事業を継続する」という前提のことです。

毎年赤字が続いたり、資金繰りが回っていなかったりすると、会社は事業を続けていくことができません。また、ワンマン経営の会社で社長がすべてを決めるという体制の場合、社長がいなくなると事業が回らなくなるという状況に陥るかもしれません。

いずれにせよ、

・お金が回る
・人が回る
・仕事が回る
・情報が回る

という仕組みができていないと、会社が長期に渡って事業を続けていくということが難しくなります。このため、私は、サラリーマン時代によく耳にした「ゴーイングコンサーン」という言葉を使いました。

しかし、本格的にマーケティングや起業の進め方を学び始めて、コンサルタントの先生から言われたことは

「これでは意味が分かりません!」

私が「ゴーイングコンサーン」という言葉を最初に知ったのは、楽天銀行(当時はイーバンク銀行)の開業準備を進めている時でした。

当初から株式公開を目指していたので、監査法人もついていました。しかし、最初はシステムを作ったり、必要な人材を採用したり、といった準備期間だったので、すぐには売上が上がらず、赤字状態に。この時、監査法人からは、監査報告書に「継続企業の前提に疑義あり」と記述する旨の通知があったのです。

監査報告書に「この会社は続くかどうか分からない」という意見が書かれると、その後の事業展開に差し障りがあるので、我々は猛烈に抗議。交渉の結果、ゴーイングコンサーンに関する記載は外してもらったのですが、私には「ゴーイングコンサーンは大事である」と強く印象に残ったのです。

しかし、コンサルタントの先生曰く、「『ゴーイングコンサーン』って言っても多くの中小企業経営者はその言葉を知らない」ので、「知らない言葉ではメッセージが伝わらない」。

そして、「伝わらないメッセージはダメ」。

ようやく、将来に向けて布石を打つために、ホームページの作成に着手した私でしたが、いきなり、言葉の壁にぶち当たったのです。

7.無料のオファーを作って集客する

普通の人が、名も知られていない会社からまだ知名度のない商品を買うことはまれ。特に高額になればなるほどそう簡単には売れません。

経営の基本について学び始めた当初、「最終的に売りたい商品を販売するためは最初に売る商品を用意する」ということをマーケティングの先生から教えてもらいました。

当時は、会社との顧問契約がバックエンド商品でした。そこで、最終的に顧問契約に結びつけるために、「どんなフロントエンド商品を用意するか」を考えるよう課題が出されました。

いろいろと考えた挙句、最初に作ったのが、「マネー・レスQ」という資金管理用のテンプレートでした。

言ってみれば、資金繰り表の雛形のようなもの。

経営者から見て

・今月はお金が足りているのか、いないのか
・手元にある現金のうち、いくらまでなら使ってよいのか

を分かるようにしたエクセルのフォーマットです。

実際にクライアント先用に作っていたものをベースに汎用性の高いものに修正。「お名前とメールアドレスをご登録いただいたら、 『マネー・レスQ』を無料で差し上げます」ということで売り出しました。

マネー・レスQのレスはless。

会社経営をやっている以上、お金に関する問題をゼロにする(ress)はできません。けれども、「お金に関する問題(question)を減らす(less)ことはできる」という考えに基づいてネーミングしました。

さんざんにダメ出しをくらったキャッチコピーも修正し、「資金繰り」「資金繰り表」といったキーワードで検索されるようネット広告を出すと、思ったよりも登録がありました。まだ当時はキーワード広告もそれなりの効果があったのです。

「やはり、いきなりバックエンド商品を売るのではなくフロントエンド商品を作らなきゃダメなんだ」というのを実感した私。少し手ごたえを感じました。

ただ、いくら無料の商品が売れても残念ながらそれだけでは会社への利益貢献はゼロ。

そこで、次のステップに進むべくメールアドレスをご登録いただいた先にコンタクトを始めたのですが、意外なことが分かりました。

8.ニッコリ微笑む女性があなたに気がある訳ではないという現実

目をじっと見つめられてニッコリ。

妙齢の女性にこんな態度をされると、たいがいの男性は、「この子、俺にちょっと気があるのかなぁ?」と思ってしまうかもしれませんね。

昔私が赴任していたフィリピンは国民性なのか、初めて会った人に対してもとってもフレンドリーな人が多いです。実際、職場では皆が初対面の時から「ハ~イ!」と言ってにこやかに接してくれるので、私もずいぶん緊張がほぐれました。

このフレンドリーさはパブやクラブなどいわゆる夜の世界では、さらに一層磨きがかかります。そして、目をじっと見つめられてニッコリに、勘違いしてしまった日本人も何人かいました(笑)。

さて、無料のフロントエンド商品で、一定のリストができた私。

早速申込んでくれた人に対して、「お申込いただいたフォーマットを御社に合わせた形でカスタマイズしませんか?」というオファーをしました。

フロントエンド商品である「マネー・レスQ」は、資金管理用のテンプレートで、どの会社でも使えるよう汎用性のあるものになっています。そこで、「御社の業態や資金繰りに応じた形でより使い勝手がいいように修正します」というのを次の商品にしたのです。

しかし、メールで連絡しても反応はほとんどゼロ。

カスタマイズ費用を有料にしたからダメなのかと思って、途中からは「本来は○○円かかるのですが、今回は特別に『無料』で対応します!」というふうに変更しても、一向に反応がありません。

こちらとしては、「興味を持って申込んでくれたはずなのにどうして反応が悪いのだろう???」と不思議に思うばかりです。

それまでは、紹介ベースで仕事につながることがほとんどでした。この場合、紹介された先の人は、紹介者との関係もあるので、仮に弊社のサービスに興味がなくても一度は会って私の話を聞いてくれました。しかし、ホームページを通して弊社のことを知り、最初の商品を申込んでくれた人は私の話を聞いてくれないのです。

先の例で言えば、ニッコリ微笑んでくれたので、「ちょっとは気があるのかなぁ?」と思って、デートに誘ったのに全然返事がないという状況です。

ホームページを作り直し、キーワード広告でリストが取れ始めて、少し手ごたえを感じ始めた私は大きな勘違いをしていました。

つまり、ニッコリ微笑んでくれた女性が相手の人を好きなのではないのと同じく、インターネットを通して集客できた人は弊社のことを信頼している訳ではないということです。

これって、インターネット集客では当たり前のことなのかもしれません。また、レベルの高い人は、ホームページに書かれた内容だけで高い信頼を獲得し、高額の商品を売る」ことに成功しています。

しかし、そんなレベルにはほど遠かった私は自分の勘違いに気がつくまでに「なんでだろう?」とかなり時間がかかってしまいました。

9.石の上にも三年、継続は資産なり

「それってどこで身につけたのですか?」

ある月刊誌の取材を受けた時のこと。

今仕事でやっていることを話している時、「過去の経験の内、どれが今に活かされているのか?」ということを何回か質問されました。

中には、質問されて初めて「そう言えば、昔○○をやったことが今につながっているのかもしれませんね」と気づいたというように、自分でもあまり意識していなかったもののもあります。

一方で、「あの時こんな経験をしたので今の仕事につながっている」と明確に言えるものもあります。毎週発行しているメールマガジンは明らかに後者。つまり、過去との因果関係がはっきりしているものの一つです。

要因の一つは良い師匠に巡り合えたことです。

メルマガを書く際の基本的な心構えから、句読点の打ち方、改行の仕方に至るまで、小学校の先生のようにみっちり基本を教えていただきました。

そして、もう一つの要因は書き続けたことです。

私がメルマガを書き始めたのはちょうど10年前、東日本大震災の後です。

それまでは、「書こう」「書かねば」と思ってもなかなか重い腰が上がらず、結局やらず仕舞いでした。

震災をきっかけにようやくメルマガを書き始めましたが、最初は思うように筆が進みません。

師匠にも手取り足取り教えてもらいましたが、頭では理解できても、

・思ったようには書けない
・書いても内容がつまらない
・読者の方からの反応がまったくない

という状況がしばらく続きました。

しかし、とにもかくにも書き続けたことで、少しずつ内容が改善され、今では「毎回楽しみにしています!」という声もいただくようになりました。

実は、前述の月刊誌の取材も私が毎週更新している専門コラムを編集長が読んで下さり、編集会議の時に「いい人がいるよ」ということで、私を推薦してくれたことがきっかけでした。

私は子供の頃から手紙を書くのが苦手。文章を読むのは好きでも、書くのはそれほど好きではありませんでした。けれども、最近はメルマガやコラムを書くのが少しずつ好きになっています。そして、好きになればなるほど質もより良くなるのも実感しています。

成果が出るまで時間がかかりましたが、「やり続けていて良かった!」と言えることの一つです。

10.嫌われる勇気を持つまで8年

メルマガを送ると、何件か登録解除があります。また、セミナーを開催すると、中には「期待外れだった」という感想を残される人がおられます。

最初の頃は、メルマガを解除されるたび、「今日の内容は役に立たなかったのかなぁ」「何か気に障ることでも書いたかなぁ・・・」と落ち込みました。

セミナーの反応が悪い時も「前回の時は理解してもらえたのにどうして今回はダメなんだろう?」と悩むこともありました。

当然のことですが、私のメルマガにしても、セミナーにしても完璧なものではありません。まだまだ成長途中です。このため、毎回反省すべきことは反省し、修正すべきことは次に活かさなければなりません。

そして、その成長途中の段階において、「つまらない!」「こんなの要らない!!」と言われることがあるのもこれまた致し方ないことです。

銀行など大きな組織にいると、一つの小さなクレームに対応するために多大な労力とお金をかけるといったことがあります。もちろん、大会社の場合は取引先も数万社に及ぶので、一つの特殊な事例に対応することで他の事例にも応用が効くことにつながります。

一方で、弊社のような中小企業の場合、取引先が多くても二桁ということも少なくありません。

この場合、世の中の大半の会社は取引先とはならないので、たまたま会社のことを知ってくれた人から文句を言われたとしても、そのクレームが自社にとって本当に対応すべき課題とは限りません。

よく、「お客様の声に耳を傾けなさい」「答えは市場にある」ということが言われます。

もちろん、何百億円、何千億円という売上を目指す会社であれば、広くニーズを拾い上げることが必要です。

しかし、

・当初目指すのは売上高1億円
・5年で30億円の売上高達成が当面の目標

というような会社の場合、「外部の声に振り回されない」ことも必要です。

・本来のお客様にならない人の声に耳を傾けると迷いが生じる
・儲かりそうだというだけで、そもそも自社が狙うべきではない市場をリサーチしても探している答えは見つからない

のです。

結局のところ、自分の軸がぶれていると他人の軸に振り回されることになります。

そして、他人軸と自分軸の方向性が一致していれば問題ないのですが、方向性が微妙にずれているのに無理やり合わせようとして、かえって自分の軌道を見失うことも少なくありません。

すべての人に好かれることは無理。振り返ってみると、このことが自分の腹に落ちるまで私は8年近くかかったのかもしれません。

11.昔の名前を紹介します

・会社の土台作りコンサルタント
・お金が回る仕組みづくりコンサルタント
・事業計画診断士
・がんばる会社のビジネス展開サポーター

過去に私が使った肩書き(名称)です。

中小企業の場合には絞り込みが大事と言われます。

資金繰りや資金調達をメインに仕事をしていた時も、「建設業に特化した資金繰りコンサルタント」とか、「飲食業向け資金調達コンサルタント」というように「業種で絞ってみては?」というアドバイスをもらったこともありました。

また、地域で絞り込んで、「調布でNo.1の〇〇」や、「多摩地区に特化した△△」というのも、検討したこともありました(注:この当時の本社は東京都調布市だったため)。しかしながら、どうも自分の中でしっくり来ません。

銀行の時も、百貨店からミュージカル劇団まで様々な業種の会社を担当しました。このため、私の場合、「特にこの業種に詳しい」「この業界のことなら何でも知っている」ということはありません。

一方で、昔から仕事をする際は、その場限りのやっつけ仕事ではなく、

・どこでも通用するもの
・いつでも実行可能なもの
・人が代わっても継続できるもの

といったように、

・汎用性の高いものを作ろう
・次につながることをやろう

というのは自然と意識していました。

そのせいか、絞り込みと言われても、業種や地域による絞り込みにはどことなく抵抗感があったのかもしれません。

そして、ある時私が今まで経験したことや、やってきたことをすべて棚卸ししていろいろと検討していた際、ある方から「岩井さんの場合は『総務』ですね」と言われました。

そこで、今度は「総務」という観点から今までのコンテンツを再構成し、「新しい総務を作る→成長支援部作り」というコンセプトが生まれました。

振り返ってみると、「成長支援部作り」の中に盛り込まれている内容は、従来、「会社の土台作り」「お金が回る仕組みづくり」等で言ってきたことや実践してきたこととそれほど大きく異なる訳ではありません。

しかし、明らかに違うのは焦点の当て方です。

同じ内容でも、資金繰りという観点から光をあてるのと、総務という観点から光をあてるのとでは見え方が異なります。そして、私の場合は、総務という観点から光をあてた方がより私らしいコンテンツになるということが分かりました。

結局、絞り込むと言っても、業種や地域で絞り込むのではなく、カメラの絞りのように、光の当て方を変えることでぴったりピントが合ったという感じです。

「成長支援部作りコンサルティング」の場合、コンサル費用もそれなりにかかります。また、ある程度時間をかけて取り組むプロジェクトになります。

このため、「今月末の資金繰りが厳しい」「何が何でも1週間で成果を出したい」といった会社は対象外になり、どんな中小企業でもご利用できるというものではありません。また、既にしっかりと会社の仕組みができているので、「ウチには今さら『成長支援部』なんて要らない」という会社もたくさんあります。

よって、結果的には対象先は絞り込まれることになります。しかし、この絞り込みは私としても、自分の力が一番発揮できる先を対象とするということですごくしっくりきています。

起業してまる8年、ようやく、自分がもっともやりたいことと自分が一番貢献できることが一致した」気がして、非常にスッキリした気持ちになりました。

12.納得のいく商品も売れなくて泥沼に

ようやく自分でも納得のいくコンテンツができ、ホームページを大幅に作り変え、パンフレットの作成し、メルマガでも「成長支援部作りコンサルティング」をご案内しました。

しかし、・・・・・これがまた売れない(汗)。

今度こそと思って出したサービスも、結局は売上的に不発に終わってしまったのです。

もうこうなってくると、自分ではどこをどう直したら良いのか、分かりません

知人の経営者から薦められて、新進気鋭の若手コンサルタントの先生の所にも教えを請いに行きました。自分より30歳近く年下の方に習うのは正直気恥ずかしい面もありましたが、そんな悠長なことも言っておられません。

そこでは、厳しい指摘を受けながら、どうにかこうにか新しいサービス「一人バイト総務部」を生み出すことができました。これは、先の「成長支援部」のより簡易版で、一人社長や個人事業主向けに、社長が抱えておられる仕事を見える化し、アルバイトにも引き継ぎできるような流れを作るというものです。

対象がハッキリしており、コミットする成果物も明確だったので、LPを作って説明会を開くと一定の集客ができ、そこから成約するという流れを作ることができました。少し上昇する流れが生まれてきたのです。

けれども、このサービスも、こちらの業務負担の割には値段がそれほど高くないため、自分の中で、「これを続けていて、本当に良いのだろうか?」という疑念がだんだん広がってきました。このため、目先の売上を確保するためにはやらざるを得ないけれど、「ずっと続けていきたいか」と問われれば、「No」と答えざるを得ない状況でした。


13.救世主現る!

そんな時、救世主が現れます。

それは、弊社の取締役(私の妻)です。

彼女は設立当初から取締役に就任してもらっていました。けれども、しばらくは銀行での支払いやセミナーの受付など、いわゆる雑務的な仕事ばかり、任せていたのです。

そんな彼女に、以前私が一年間お世話になった先生が「マーケティング・コーチ」の養成講座をやるので、興味あったら、行ってみればと軽い気持ちで伝えたのです。

それまで、取締役は主に専業主婦として20年間頑張っていましたが、お客様と相対する仕事は全然やっていませんでした。けれども、その養成講座に通って才能が目覚めたのか、それ以降、本格的にコーチとしての仕事を始めるようになったのです。

そして、だんだんと仕事が面白くなってきた時に、知人である経営者から「才能心理学協会」を教えてもらいました。そして、その協会の理事長である北端先生が新しく「才能プロファイラー養成講座」を開催されるということを知り、その講座に通うことになったのです。

そこで、学んだのは自分の才能の源泉である「コアコンセプト」を見つけるという手法。人は「感情→思考→行動」のプロセスに沿うという前提の下、感情の動きをプロファイリングすることで、自分の価値判断の基準となる「コアコンセプト」を見つけるスキルを取締役は身につけました。

そして、私も取締役にプロファイリングしてもらい、自分の「コアコンセプト」を見つけることができました。

その結果、私は

なぜ、起業以来、いろいろなことを学び、スキルも身につけたのに、自分の思ったような成果につながらなかったのか

がようやく分かったのです。

このコアコンセプトの詳しい内容については、ここで書き出すと長くなるので、また別の機会にお伝えしたいと思いますが、自分の価値判断の基準であるコアコンセプトが言語化できたお蔭で、個人として私がやりたいことが明確になりました。

ビジョン(理想の世界):「それでええやん」が自然と通じる世界
ミッション(ビジョンを実現するための使命・役割):知恵の和を紡いで覚醒を促す
セルフイメージ(自分が最も力を発揮できる姿):仮説と検証を重ねて難しい問題に挑戦する人

まぁ、これだけ見ても何のことかよく分からない人もおられるかと思います。しかしながら、子供の頃からの体験を含めて、自分の中ではすべてがつながっているので、今は仮に作ったサービスがすぐに売れなくても、それは仮説と検証を重ねている段階であり、最終的にはなんとか解決できるという確信があるので、気持ちが揺らぐことがなくなったのです。

14.そして「考トレ」

いま弊社ではコアコンセプトのプロファイリングを出発点として、業務改善や人材育成に取り組んでいます。

その中で、最初のプロファイリングの部分については、主に取締役が担当しています。そして、私はプロファイリングを終えて、ご自身の価値判断の基準が明確になった後に、いろいろな仕組み作りを担当しています。

その際、「要となるポイントは何か」というのを取りまとめたのが、「考トレ」でお伝えしている、「お金」「マーケティング」「マネジメント」の3つの項目から行うアプローチなのです。

いま一度その内容を振り返ってみると、機能価値的なものとしては、以前にまとめた「成長支援部作り」とさほど大差はないかもしれません。しかしながら、自分自身の中でいろいろともがき苦しんだ後のもう一度再構築したものなので、中味がより凝縮されたものになっていると感じています。

恥ずかしながら、私はここまで到達するのに起業してから14年以上かかっています。その間、努力が足りないと言われてしまえば、甘んじて受け入れますが、自分としてはその時、その時にベストの選択をして、行動してきたように思います。

しかしハッキリ申し上げて、ビジネス的には時間がかかりすぎです。会社の株主として、社長である私を評価すれば、「お前は経営者としては失格だ!」という烙印を押さざるを得ません。

一方、社長の私が実務担当者としての私に声をかけるとすれば、「無駄な経験は一つもない。これを絶対に人のために活かせ!」です。

こんな紆余曲折を経てできあがった「考トレ」ですが、私の社会人としての経験やノウハウが詰まったコンテンツになっています。

私のように余計な回り道をせず、着実に成果につなげて、仕事を楽しむために、人材育成の一つの方法として「考トレ」をご利用いただければ嬉しく思います。

15.終わりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

世の中にはいろいろな成功法則があふれています。しかしながら、その成功法則通りに行動しても、なかなか成果につながらないという現実があります。

一方、「これをやったら絶対に上手くいかない」ということはあります。

実際、弊社の取締役は私の傍で私のいろいろな失敗経験を横で見ていたので、私の3倍のスピードで、かつ、自己投資したお金は私の1/10の金額で、私を上回る成果を出すことに成功しています。

この文章だけでは伝えきれないくらい、引き出しはたくさんありますので、何か一つでも皆さんのお役に立てることがあれば、たいへん嬉しく思います。

追記

この記事を書いたのが2021年であり、その後コンテンツの内容も随時アップデートしているので、若干の補足をさせていただきます。

前述の「コアコンセプト」とあるものは、今は心意気と名称を変え、内容をさらに進化させる形でご提供しています。

なお、2022年10月にはサービス内容のエッセンスをまとめる形で本を出版させていただきました。

また、「考トレ」とあるものは、現在は単独のコンテンツではなく、社長専任チームTOMONI の中でご要望があった際にご提供しています。

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