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「わしはいやじゃ」と感じた瞬間を思い出させてくれた歴史小説

「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」(和田竜「のぼうの城」より)

石田三成率いる二万の大軍が武州忍城に迫った時の主人公のぼう様こと成田長親の言葉です。小が大に屈するのは世の習い。しかし、のぼう様はそれに対して決然と「No」をつきつけました。 

この後、忍城に立てこもる成田軍と石田軍との熾烈な激闘が始まります。

この場面、私は何回も読み返しました。のぼう様の叫びの中にある「武」を「お金」とか「財」とかに変えれば・・・。

忍城を巡る攻防をなんとかのぼう様たちが凌げたのは、小説を読む限り大きく分けて3つの要因があると私は考えています。

①忍城およびその周辺の構造や地形
②勇猛果敢な武将たちの存在
③のぼう様の不思議な人心掌握術

映画化もされたので、ご存知の方もおられるかと思いますが、詳しくは小説を読んでのお楽しみということで省略します。ただ、いずれにせよ、これらはいずれも一長一短にできるものではありません。

石田軍との決戦を決意した時、のぼう様に勝算があったとはとても思えません。しかしながら、実際にはこれらの備えがあったからこそ、五百人vs二万人という数では圧倒的不利な状況の中で互角以上の戦いができたのではないでしょうか。

翻って中小企業の立場から対大企業とのビジネスで考えた場合、大手企業と単純に真正面からぶつかったり、消耗戦に持込まれたりすると、小さい企業は圧倒的に不利です。

私が前職のベンチャー企業にいた時、某上場会社と某大手企業の子会社連合が仕掛けてきたのは、

・資金の締め上げ
・技術情報の模倣
・悪評の流布

というような対応でした。

兵糧攻めから、略奪、風説の流布に至るまでまさに何でもありという状態でした。多勢に無勢、業況は一気に悪化し、あえなく落城の憂き目に会いました。

このため、私は起業を決意し、現在に至っているのですが、その時、心の中に秘かに思っていたことはまさに冒頭で引用したのぼう様の叫びとほとんど同じでした。

突然大軍が襲ってきた場合、日頃からの備えや鍛錬がないと、あっけないほど簡単に負けてしまいます。そのために、今日何をやり、どうやって明日を迎えるか。

「のぼうの城」は起業の時の私の気持ちを再度思い起こさせてくれました。良書との出会いに感謝です。

なお、自分がどのような時に「わしはいやじゃ」と感じるかを自分の言葉で自覚することは、仕事においても、日常生活においても、すごくプラスになります。

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