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海外ノマド-好きを仕事にするからノマドなのかもしれない

ヨーロッパはクリスマスマーケットの時期になった

私がノマドで定職を避ける理由は、きっと地元愛とそれに伴う好きを仕事にしようとしてしまうことだろう。

好きを仕事にする地元愛

私は20年以上フランスの地方都市に住んでいる。だから地元愛が強い。その土地の伝統が好きだ。
その歴史的伝統の一つがクリスマスマーケット

私はお店を一回変えて、このクリスマスマーケットで働く珍しい日本人だ。
私は海外に住む時はその国の人と同じように暮らしたいと思う。
海外に住みたいという人は多い。(かもしれない)。けれど、よく思うのは、海外に住みたいと言っても、その国の人と同じような暮らしをしたいわけではない…。その国で「暮らしやすい」という状況は、決してその国で地元の人と同じように住んだ時にどれだけ馴染めるかということではなくて、どれだけ日本にいた時と同じように暮らせるか、ということを意味することもあると思う。

けれど、私は異国の地で暮らすときは、その国の人と同じような暮らしがしたいと思うのだ。
だから、地元の友達を探したり、地元の有名なものや、産物に興味を持つ。


地元で馴染のお店を作る

町の中にはカフェやいろんなお店がある。よく通うお店では、お店の人とおしゃべりして、仲良くなることがある。これこそが地元での楽しみだと思う。
フランスなどでは人種差別があって、レストランなどで窓際の席に案内してくれない、なんて話も聞くが私はそんな思いをしたことがない。逆に多くの地元の人に覚えてもらって、仲良くしてもらっている。

別に、それで何かいいことがあるということではないけれど、でも、差別はなく、良い席が空いていればちゃんと案内してもらえるし、嫌な思いをすることはない。予約していていなくても、席がちゃんと空いていれば、通してもらえる。

よく行く映画館ですら、スタッフさんに覚えてもらっている。外国人、日本人であることで、映画館でも逆に目立つし、良いことが多い。今ではアジア人だけどフランス生まれの人も多くなってきているし、決して私がアジア人、日本人ということが特別ではないようにも思う。

私の地方で有名なクリスマスマーケット

私の住む地方では、クリスマスマーケットが有名だ。私はそこに日々通い、そこで大好きな小屋がいくつかでき、そこで小屋の人といろいろ話ながら、仲良くなったりしていた。
毎年通う小屋ももう決まっていて、ありがたいことに、この観光地でもそこの人たちにも覚えてもらっている。

本当は1こ売りしていないお菓子を前を通っていつも1つもらって帰り、仲が良いヴァンショー屋さんではたまにおごってもらう。

大好きなクレープ屋さんもあって、そこにも通っていた。

好きを仕事にする

私はクレープというか、ガレットが好きで、よく通っていたお店あった。何年か通って、ある日「ここで働きたい」と言うと
「じゃあ、来年のクリスマスマーケットが始まる1日前に来て。」と言われた。
もちろん、一度小屋の外で会って、ちょっとお話をして、のことだった。

私は自分の住むこの場所が好きで、そこで有名なクリスマスマーケットが好きで、ガレットが好きで、そしてそれが全部できる仕事を選択した。

こう書くと、いとも簡単にこの仕事を得たように思われる。でも、そう簡単でもないのだ。

クリスマスマーケットで働くと言えば、マーケットだし、誰でもできる仕事にも思われる。ただし、私はここでの仕事を得た理由は

①以前にもクレープ屋さんで働いていたので、クレープが焼けたこと
(これは寿司を握る・・・レベルまではいかないが、クレープ専門店があるので、クレープを焼けるというのは意外と手に職の一つになるようだ)

②フランス語と英語ができる
実は観光地では多言語でのコミニケーションが必要になる。決して上級レベルの語学力は飛鳥ないかもしれないが、ある程度のレベルの語学力が必要になる。
私はこのクレープ屋では英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語対応している。簡単な単語も多いが、クレープの具材などはわかるようになった。


好きを仕事は楽ではない

クリスマスマーケットで働く人は基本的に1か月休みがない場合も多い。
私は最初の仕事の時は」朝11時(準備がある時は10時とかだった)~閉店の20時、21時までノンストップ、トイレに行くだけの休憩だった。
1か月間休めない。そんな状況で、立ち仕事、そして、クレープを焼くと腕も手も痛いし、火傷もたくさんする。

モラハラもあったし、セクハラもあったし、いろいろ問題にもぶつかる。
表で見るクリスマスマーケットとはちょっと違う、裏の黒い世界も存在する。

同じクレープ屋同士でライバル意識もあるし、偵察したり、いろいろ調べたり…なんてこともある。

お店がなくなって・・・次の店へ

実は自分が働いていたお店はある日なくなってしまった。そして、その後にまたよく通う別のお店ができた。

とにかく私はガレットが好きだったのだ。そして、また別のお店の人と仲良くなって…何年か後に
「今年は今まで一緒に働いていた子がいないので、働く?」と言われて、働き始めた。

その後フルタイムだったり、パートになったり・・・。仕事がなくなったり・・・。決してずっと働けたわけではない。そして最近オーナーがお母さんの代から息子に継がれ、小屋が大きくなって、また働き始めた。

そんなわけで、私は自分の好きなことは直談判で、何年もかかって得ることもある。好きだからってすぐできるわけではない。そして、好きだからって、それが本当に楽しいだけの仕事ではないこともある。

もしかしたら・・・唯一の(?)日本人として誇りに思う

そして、私はクリスマスマーケットで働く唯一の日本人かもしれない。私が知る限りでは私だけだ。
そして、私はこうして伝統的なこの地方のイベントに参加していることを誇りに思う。
私の幸せは現地の人の中で現地の人に交じってこうして働くことだ。それは日本人だかたという枠を超えて、そして、どちらかと言うと、現地の人が働くべきポジションで働くこと、もしくは日本人という特有を生かして、その国に貢献できる仕事をすること…それを目標にしている。


誰でもできることなのか、誰でもできることじゃないのか

私はなぜかのほほんと生きているように思われ、そしてなんでもこうして好きなことをしてきているという印象を持たれる。
しかしながら、自分がしたいことをするために、結構時間をかけていたり、その前にちゃんと相手との関係性を築いていたり、直談判をしている。

そういうコツコツをした努力って、他人はあまり見ないきがする。
クリスマスマーケットのことを話していたらSNSで
「私はクリスマスマーケットに出店したい。どうしたらいいか教えてほしい。」

なんて問い合わせがあったことがある。
けれど、これは伝統的なイベントで、その場所はお店のテナントと一緒で誰かが借りていて、その権利を放棄する人がいない限り、その場所を得ることはできない。

いろいろ規定もあって、一回申請したら、別のものを販売することもできない(らしい。)自分で自分の小屋も建てるし、そんな簡単なことではないのだ。ましてやそこに住んでいない人が、ひょっこりやってきて、出店できるようなものじゃないと思う。

ただし、以前行政の力でコルマール(COLMAR)に2軒日本の小屋が建っていたことがある。これはANAと岐阜県の小屋で、行政が絡んでいたので2年でなくなってしまった…。こういう伝統的なところに、そういう行政の力を使うことは少し悲しい気がした。

ちなみに、ストラスブール(STRASBOURG)のクリスマスマーケットとは・・・・


伝統伝統と言っても・・・1570年から続くヨーロッパでも最も古いクリスマスマーケット1つで、クリスマスの首都と呼ばれているのがフランス、アルザス、ストラスブール。そんな歴史あるお祭りというか、イベントで、コロナの影響で1年中止になったのが2020年…。

今では日本でもクリスマスマーケットが開催されているが、アルザスでは本当に伝統ある、イベントなのだ。
だから、私はそんな場所が大好きで、好きすぎて中で働くことを選んだ。こうすれば開催時期、ずっとこの空間にいられるのだ。

そんな幸せなことはない。


そして、儚く切ない・・・

そして、このイベントは11月24日から12月24日まで開催され、その後はこの小屋が跡形もなくなくなる。そしてまた、1年後に開催される。

皆また別のことをしたり、いつの間にかいなくなる人がいたり・・・この空間は歴史あるイベントであるが、ある意味期間限定、儚いものでもあるのだ。

その時にしか会えない人たちがいて、その時にしか食べられないもの、飲めないもの、そして買えないものがある。

私はそんな儚く、切ないものが好きなのかもしれない。

ここにいる人たちは意外と自然にノマドの人が揃っている

ということは、ここにいる人たちは普段は別の仕事をしている人も多いし、他の都市から来る人もいる。正にノマドの人が多いのだ。

日本ではノマドなんて言葉があるが、ここではそんな言葉ではなく、そうやって自由に生きている人が意外と多いのかもしれない。そういう人を季節に合わせて働く人として「季節人」なんて呼んだりもする。季節バイトなんて言葉は日本にもあるので、それに近いかもしれない。

安定を求めて定職に就く人も多いが、他国ではこうして意外と遊牧民のように生きている人もいる。だから私の遊牧民生活も、このクリスマスマーケットのせいでもあるともいえる。

このクリスマスマーケットで働くには、1か月身体を空ける必要があって、その間この地にいないといけないのだ。

だから、私自身ももちろんそれが不可能だった時期もあったり、いろいろあったが、今年はまたこうして運よく、タイミング良く、クリスマスマーケットで働いている。

こんな人生も・・・。それはそれで良いと思うのだ。



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