「ブランド」とはなんなのか、とてもわかりやすい話
結構前ですが、小山薫堂さんの本を読んでいて、非常にブランドの説明がわかりやすいな、と思った一節がありましたので、内容を引用させていただきます。
学生向けの授業でのこと。
教授は、とある一人のお母さんをゲストに招いたそうです。そして、集まった学生たちにそのお母さんが作ってくれたカレーを見せ、
『このカレーを食べたい人?』
と食べたい人を募集します。しかし、ちょうどランチの後だったこともあり、誰も手を挙げません。
『でもこれからある情報を伝えることで、きっと食べたくなりますよ。』 そう言ってそのお母さんに質問を始めます。
『これから息子さんのことを訊いていきましょう。息子さんは何をされているんですか?』
「野球ばかりやっているんです」
『どちらにいらっしゃるんですか?』
「アメリカにいます」
『ああ、そうなんですか。息子さんのお名前は?』
「ありふれた名前ですけど、一郎という名前でして」
『つまりこのお母さんは、イチロー選手のお母さんです。イチロー選手がプロになってからも毎朝食べていると言っていたカレーは、まさにこのカレーのことなんです。ハイ、食べたい人?』
今度は、全員が一斉に「食べたい!」と手を挙げます。
そこで小山さんが学生に向かって「これがブランディングというものです。」と教える話。
同じ商品であっても、その背景にどういうストーリーがあるか、どういう思いを元にその商品が生まれて来たか知ることによって、より価値が上がるということ。
非常にわかりやすい、と感動してしまいました。
そして、もちろんこういったことはいろんな会社・商品がブランディング活動として行っていることですが、今日はそのひとつをご紹介させていただきます。
それが「OISIX(おいしっくす)」というブランド。
いろんな地方の安心して食べられる食材を宅配するというサービスを展開している企業なのですが、ただ届けるのではなく、ひとつ配慮している点があると言います。
それは「いちいち食卓での会話が生まれるような仕掛けを作る」こと。 例えば、
「生産者からの手紙が一緒に届く」
⇒「そこにはどんな想いで作っていて、今年の出来はどうとか、お勧めの食べ方などが書いてある」
⇒「それを知った奥さんは料理を作って食事をするときにその話をする」
⇒「旦那さんもその背景を知って食べると、いつもより美味しく感じる」
ここで感動が生まれ、その商品のことがもっと好きになるんですね。
また、こんな逸話もあります。
ある年、台風でたくさんの食べごろのリンゴが地面に落ちて痛んでしまった農家がありました。
普段は美味しくて評判のいいリンゴ。しかし、少しでも傷がついてしまっては、スーパーでは売れなくなってしまいます。
そこで「OISIX」は、【台風りんご緊急予約販売のお知らせ】と題して、その痛んでしまったストーリーと、それでもきちんと美味しく食べれることを広く公開し、賛同してくれる人を募りました。
一般の人は、おいしいリンゴがいつもより安く購入できる。
農家の人は、おいしいリンゴを捨てずに済む。
おまけに、買ってくれたお客さんから、励ましの手紙やリンゴの感想等が手紙で届き、むしろ感動をもらったという話まで。
商品一つ一つに、こういった語れるエピソードがあると、人伝いで広まり、
「それどこで買ったの?」⇒「OISIXだよ」
とブランド価値へつながっていく。その心構えがとてもすばらしい会社だと思いました。
最近ではTwitterなどでブランドとの双方向コミュニケーションが取りやすくなっています。
こういうブランドの背景にあるストーリーや、そのやりとり自体が生活者にとってかけがえのない体験になることによって、ファンになってくれる人が増えるのではないかな、と思います。
以前、SHARPの中の方のお話を聞いた時にも「自分が八百屋の店主だと思って、店頭でのお客さんとのお喋りをTwitterという場所でやっているだけです八百屋さんは、変な押し売りはしないし、困っていたら助けるし、商品と関係ない雑談もします。それと同じです。」という話をしていました。(言い回しは違ったと思いますが)
「Twitterでどうやっていいねやシェアを増やすか」「リツイート数は?」といったKPIの数字も大事ですが、インターネットを通したとしても結局は人間同士。「地道に、時間をかけて仲良くなろう」という意識は忘れないようにしたいですね。
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