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いきなり!ステーキは本当にそこまでダメなのか? -カンブリア宮殿

カンブリア宮殿 レジェンドVS外食猛者90分SP ~絶品店で苦境の外食を変えろ!~は、私も興味深く見た視聴者の一人だ。

この回だけを見ると、「すかいらーく」の創業者横川氏が正しく、自分中心の一瀬社長がダメダメのように見える。しかし、本当にそうなのだろうか?ネット上の記事やSNSの反応は、現在の「いきなり!ステーキ」の業績低迷もあり、一瀬社長に否定的であり、その比較の対照として横川氏が持ちあがている。

「いきなり!ステーキ」のダメなところ今回のカンブリア宮殿ではなく、同じテレビ東京のガイアの夜明けでいかんなく発揮されている

じゃ、お前もダメだとおもっているんだろ!と言われれば、そう思っているところは多分にある。しかし、それがマーケティングなのか、店舗オペレーションなのか、経営の話なのか?で話は変わってくる。レイヤーが違うという考えだ。

すかいらーくについて

さて、話はまず「すかいらーく」創業者の横川氏の話からになる。番組中、横川氏を「会長」と呼ぶ場面があるが、それが「すかいらーく」の会長ではなく、「株式会社 高倉町珈琲」の会長であり、横川氏は「すかいらーく」の創業者であるが、現在の「すかいらーく」とか関係がない。横川氏は「すかいらーく」を解任されているのである。また、「株式会社 高倉町珈琲」は「すかいらーく」のグループではない。

2006年12月1日、すかいらーく会長・横川竟が2007年1月1日付で社長に就任、会長職は兼務する人事を発表。現職の社長伊東康孝はすかいらーく副会長兼バーミヤンカンパニーCOOに就任。収益が悪化しているバーミヤンの立て直しを図るが業績回復は果たせず、2007年8月31日付で伊東は副会長ならびにバーミヤンカンパニーCOOを引責辞任、特別顧問に退いた。しかし、横川の再建計画は原材料価格の高騰で暗礁に乗り上げ、サントリーに増資案を持ちかけたものの、SNCインベストメントが同氏の解任を模索。労働組合も投資会社に同調し、同氏の解任条件であった融資銀行団の同意も取り付けた。2008年8月12日、臨時株主総会と取締役会が開かれ、野村プリンシパルとCVCキャピタルパートナーズが提案した、横川竟社長の解任と谷真常務執行役員の社長就任が決議されたことにより、株主主導の再建策へ移行した。
ウィキペディアよりhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F

また、みなさんがご存じのように「すかいらーくホールディングス」には、現在「すかいらーく」というファミリーレストランは既にない。

また、「すかいらーく」の創業者の横川四兄弟で現在、「すかいらーく」の経営に関与していないのは、既に他界されている次兄と横川竟の2名であり、横川氏の長兄と弟は現在も「すかいらーく」に席がある。

だからといって、横川氏がレジェンドでないとか、飲食の経営者としての実力がないと言いたいわけではない。カンブリア宮殿が意図的に、その辺りに触れないように、横川氏が現在も「すかいらーく」と関係があるように意図的に話の流れを作っていたように感じられたため、現状の整理をしたまでである。

株式会社ペッパーフードサービスについて

「いきなり!ステーキ」を運営する「株式会社ペッパーフードサービス」は波瀾万丈である。番組中も何ども「社員の不祥事と食中毒」と言われている「ペッパーランチ」の事件、「社員の不祥事」と一言で片づけるのには少々ヘビーな内容だと思うし、様々な疑惑が飛んだ事件だった。詳しく知りたい方は下記リンクをどうぞ。

そんな不祥事とその2年後の食中毒事件を経て企業として再生しているのである。これは、とてもすごい。食中毒だった1店舗ででたとかではない。

(2009年)9月11日、厚生労働省は「ペッパーランチ」でのO-157による食中毒患者数は、11都府県の23人、疑わしい事例も含めると全国で33人になると発表した。

全国規模だったわけである。その「ペッパーランチ」も2017年になるとこんな記事がでるのである。

「いきなり!ステーキ」のオープンは2013年である。そして、破竹の勢いで出店し、ついに2017年にアメリカに進出する。この頃から雲行きが怪しくなり、アメリカでの不振が伝えられるようになると、つるべ落としのように国内の業績不振に陥り、その後は皆さんの知る通りである。

上記で、「ペッパーランチ」の業績があがっているような記事を紹介したが、売り上げの構成が下記であるため、「いきなり!ステーキ」の不振が「ペッパーフードサービス」の不振となる。

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https://www.pepper-fs.co.jp/_img/ir/session/PFS20200226.pdf

また、株価は2007年をピークに下がり続け、現在はピーク時の1/10以下になっている。


経営者としての立ち位置

マーケティング領域を生業としてそれなりに仕事をしてきた身としては横川氏の言う「客の求めるものが 売れるもの」というのは、P&Gの「コンシューマー イズ ボス」を持ち出すまでもなく、当然のことのように思われる。

しかし、一方で”客が求めているものだけを売っていたら商売にならない”のである。

人は「100万円でポルシェ」が欲しいのだ。今の時代、いくらでもあっても車はいらないという人もいるかもしれないが、数千万円するポルシェが100万円なら、みんなポルシェを買う。ポルシェがピンとこなければ、3000円でルイヴィトンのバッグでもいいし、1000円で高級フレンチのフルコースであってもいい。質がいいものを安く手に入れたいというのは人の常である。

そんなことは実現しない。(ここではブランド価値とか、そういう話はしない。)実現しないから、どうやったらそれに近いものを出せるかを創意工夫することになる。

一瀬社長は言う「自分が美味しいと思ったものをお客様に食べてもらいたい」は本当に間違っているのだろうか?もし、本当に間違っていたなら「いきなり!ステーキ」の店舗の前のは行列はできなかったはずだ。なぜならお客は立ち食いのステーキなんか求めていなかったはずだから。でも、実際には大きなブームを呼んだ。つまり、

自分が美味しいと思ったものをお客様に食べてもらいたい

は間違ってなんかいない。それは番組中、横川氏も言っている。

村上龍:一瀬さんは”自分が行きたい店””自分が食べたいメニュー”出店を出す、横川さんは”その地域の人が好むもの”いわゆる顧客目線みたいな感じ。それって全く違うもの?
横川氏:いや、同じです。自分が食べたいものがお客が求めているものだと思えばそれでいい、私はそうは思わなかった(から自分ではなくお客に味と素材の組み合わせを選んでもらった)。基本は、お客が求めているものを売らない限り売れない (*一部省略、意訳があります)

ネットを見ていると勘違いが多いのがここで、明確に横川氏は同じといっているのである。番組を見た人ならわかると思うが、番組の冒頭の方で、横川氏は新メニューの開発の時に、結構自分の意見を言っている。おそらく、それはメニューに反映されたはずで、横川氏もすべてのお客の舌でメニューを開発して、まったく自分の意見を言わないなんてないのである。

しかし、大きく違うのは、経営者としていの立ち位置が、自分の考えを中心にするのか、顧客(実際には横川氏は、商圏の人口と世の中の大きなトレンドをみている)にするのかである。それはどちらが正しいとか正しくないとかはない。なぜなら、彼らは創業者であるから。

創業者とサラリーマン

私もそうだが、多くの人は雇われである。創業者とサラリーマン(いろいろひっくるめて)はマインドが全く違う。創業者は、その事業を自分の想いだけで立ち上げて、その事業の行く末までも全部まるっと自分の責任において行う。しかし、サラリーマンは役割分担の一機能である。それは、雇われの社長も同じ一つの機能である。

テレビの視聴者も媒体社の記者もだいたいが雇われサラリーマンである。その雇われサラリーマンにとってわかりやすく共感しやすいのは、横川氏の方であるのは間違いない。なぜなら、自分たちが普段仕事で言われていることのまんまだから。前出の「コンシューマー イズ ボス 」だから。

そんな視聴者がテレビを見て思うのは「俺が美味いと思うものを食え!」と言っている一瀬社長は傲慢だな、だから業績が低迷するんだ!と。

でも、それは逆なのだ。業績が低迷しているから、傲慢だと思うのだ。これが業績絶好調な時であれば、「なるほどー、さすがですねー!」となる。

外食産業は浮き沈みが激しい。かつて業績が悪かった頃のマクドナルド、吉野家あたりはみんなで踏んだり蹴ったりだったが、業績が良くなっている現在はとても持ち上げられている。

言ってしまえば、「勝てば官軍、負ければ賊軍」なのである。ことわざにもある通り、本来であれば「敗軍の将は兵を語らず」でいれば良いものであるけれど、一瀬社長は人がいいので、いろいろなことをテレビで語ってしまう。そうなれば、「池に落ちた犬はたたけ」ばりに言われてしまうのである。そういうことがあらわているシーンが番組の後半にある。

(一瀬社長が想いを語った後)
村上龍:そうやって誤解される人って、いい人なんですよね
横川氏:全部言っちゃうから
村上龍:そう。
横川氏:だから誤解される。黙っていると誤解されないから
村上龍:いい人なんですよ
一瀬社長:黙っていたら話にならないじゃない

テレビだけではない、店頭にも想いを書き、ホームページにも書いている(ホームページには今月の標語がある)。

そんな想いが強い社長だから、サラリーマンにとって叩きやすい状況になっている。

また同じ創業者の横川氏が自分の失敗談を語る箇所があるが、それを上記の業績低迷だとか、再建計画とか、臨時株主総会で社長を解任という事実を知ってから見ると、単なる飲食グループの話でなく、いろいろな背景が想像されてより味わい深いコメントになる。

では、いきなり!ステーキは本当にそこまでダメなのか?

では、「いきなり!ステーキ」は本当にダメなのだろうか?業績不振の原因はテレビの中でいかんなく説明されている。基本的にはオーバーストアと価格の上昇。

出店モデルの業態は、出店が止まった時点で売り上げは横ばいになり、オーバーストアになった段階から既存店売り上げが下がってくる。これは飲食に限らず、家電量販店でも、服飾でも同じだし、amazonでも同じ。amazonも取り扱いカテゴリの拡大が止まった時点で売り上げは止まる。だから、取り扱うものを増やすし、変えていく。店舗の仕組みを売ったりね。

上記であげた、株主総会の資料時よりも踏み込んだ店舗の閉鎖を打ち出しているので、オーバーストアは少しは解消されるはず。でも、一番難しいのは、フランチャイズ事業をしていること。これはコンビニ業界も同じだけど、既にオーバーストア状態なのに、フランチャイズオーナーを募集しなければならないのはキツイはずなので、どうなんだろう?

また、これは創業社長が現役だからしょうがないのだけど、いつ一瀬社長のワンマンから脱却できるかが大きなカギだと思う。それはガイアの夜明けを見ると本当に思う。この会社大丈夫か?って。でも、それは「高倉町珈琲」も同じで、横川会長が一番偉い席に座って、試食を食べて指示をだしているのは、これから先は厳しいんじゃないかなと思う。

創業者が会社を離れるのは想いが強い分だけ難しいと思われ、ソフトバンクの孫さんもなんだかんだで自分でやっている、どこの会社か忘れたけど、創業者が後任にバトンタッチした後で、任せられない!と言って社長に復帰したりね。

会社概要に社長しか載っていなく、社長のプロフィールだけがある。確かに、こういうところはダメだと思うけれど、浮き沈みが激しい飲食では、一時的に業績が悪くなっても、そんなに心配する必要はないと思う。なので、そこまでダメか?って言われると、そこまではダメじゃないんじゃない?って思っている。多分、他の創業社長と大きく違っていないと思う。ただ余計なことを言うのが多いだけ。

でも、長期トレンドでここまで株が下がっているのはどうなんだろうか?

この回はすごく面白いから、見ていない人は見た方がいいよ!Twitterとかで、切り取った動画を見て、分かった気になっている人はちゃんと見ないとダメだよ!

(長くなって途中で文体が変わっている気がするけど、とりあえずあげる。後で直せるなら、直す)

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