見出し画像

『How Can We Win(私たちに勝ち目なんてある?)』 - Kimberly Jones [動画解説]

今のコンテクスト(歴史的文脈)を翻訳するCONYAK・こんにやくです。
今回はアメリカで起きている抗議活動の背景について考えたいと思います。

ミネソタ州・ミネアポリスの白人警官デレック・ショーヴィンによる黒人男性、ジョージ・フロイドさんの殺害が引き金の一つとなり、Black Lives Matter (ブラック・ライヴズ・マター/「黒人の命を尊重しろ」)のスローガンの元、米国はじめ、世界中で大規模なデモが今でも行われ続けている。
そんな中、略奪行為に対する反発の声も上がっているが、その略奪行為やデモ活動を、アメリカの人種差別の長い歴史の延長線として理解し、略奪に至った「理由」を重要視する声も出てきた。

中でも、広く共有されたのが先日Youtubeにアップロードされてから瞬く間にバズった、キンバリー・ジョーンズさんの本動画「How Can We Win(私たちに勝ち目なんてある?)」だ。

動画では、ジョーンズさんが現在のアメリカにおける歴史的な人種差別の構造を、ものの6分で簡潔にわかりやすく、そして情熱的に語ってくれる。
中でも印象的なのは、1920年代、タルサやローズウッドで行われた黒人虐殺事件についての言及だ。皮肉なことに、 ジューンティーンス(奴隷解放の日)として知られる2020年6月19日に、トランプ大統領は次の大統領選に向けての出馬をタルサで行うつもりだ

キンバリー・ジョーンズさんはジョージア州アトランタで活動する作家、映画監督、教育者である。そのほかに、Well Read Black Girl book club(黒人作家を普及するための読書会)のアトランタ支部なども主催し、多岐にわたった活動をされている。

ジョーンズさんのホームページはこちら:https://www.kimjoneswrites.com/

"How Can We Win(私たちに勝ち目なんてある?)"  Kimberly Jones [書き起こし]

注釈を表示するにはこちらをクリック
表示されるハイライト部分をクリックすると注釈が読めます。

最近よくコメントを見かけるんだけど中でもよく発言してるのは裕福な黒人が多くて「暴動起こすな 略奪するな」「自分たちのコミュニティーを引き裂くな」って言ってる。

もう一方の意見では「経済的にダメージを与えるべきだ」「お金を使わないブラック・アウトの日に焦点を当てるべきだ」って。

でも、私はどっちもやるべきだと思うし、どっちも賛同してる。

それはなぜか?

どっちも支持するのは、こういう市民の暴動が起きると3種類の人が街に出てくる:抗議をする人、暴動を起こす人 、そして略奪をする人。

抗議をする人は、地域で起きてることに関心があって声をあげたいと抗議するためだけに来てる。

暴動を起こす人は、怒っていて、アナーキストで何が何でもメチャクチャにやらかしたくて来てる。

そして、略奪する人はほとんどの場合略奪するためだけに来てる。

「そんなことして何が得られるの?」と言う人もいる。

でも「何を取ったか」だけに注目してるかぎり「なぜそうするのか」を
考えてない。

そこが問題だ。

「行動」だけに注目していると「なぜ」が見えてこない。

「そういう人たちは今の状況に本当に怒っているんじゃなくて物が欲しいだけでしょ」っていう人がいる。

仮にそうだとしてみよう。

2020年にもなって、この国では貧しい黒人と他の人との経済格差があまりにも大きく、毎日のように見せびらかされるモノを手に入れるには、壊れた窓ガラスをくぐってまでとるのが 唯一のチャンスだと感じてしまうのはなぜ?

それくらい絶望的なのはなぜ?

そのネックレス、そのテレビ、その小銭、そのベッド、その携帯、何であれ暴動が起きて、略奪のチャンスがあれば、それが唯一のモノを得るチャンスなんだ。

なぜそうなのか、そこを疑問に思うべきだ。

なんでそんなに貧しいのか?

なんで一銭もないのか?

なんでそこまで食事に困ってて、着る服に困ってて、なんで必要なモノを得るために、唯一与えられたチャンスがその壊れた窓ガラスをくぐることなのか?

そういうと今度は「助けを借りずに自立できた人だってたくさんいるのに」
っていう人がいるけど、アメリカの経済について少し説明しよう。

小さい時にPUSHでこれを学べたことに感謝してる。

決して忘れちゃいけないのは、黒人がこの国に連れてこられた理由がそもそも「経済」だ。

南部の農作業と北部の織物作業のために連れてこられた。

それを理解できてる?

南部の農作業と北部の織物作業をしに私たちは連れてこられた。

例えば あなたとこれから「モノポリー」で遊ぶとして、400ターンの間
あなたにはお金を一切あげなくて、ボードに何も建てられない、何もできないようにしたとする。

さらに50ターンやって、そこであなたが得たものは、ぜんぶ奪われたとしよう。

それがまさにタルサとローズウッドで起こったこと。

私たちはそこで自給自足的に黒人の富を築いて、自分たちの店や
土地を持っていたのに彼らに全てを焼かれた。

それが450年。

だから400ターンの間、全くゲームに参加できない。

参加できないだけじゃなくて、相手のためにゲームをやらされる。

相手のためにゲームをして、お金を稼いで、富を築いて、それをぜんぶ相手にあげなくちゃいけない。

その後50年はようやくゲームに参加できる。

だけど、自分のやり方が気にくわない時とか自分が追いついて
自立しようとすると、相手はゲームごと丸焼きにする。

カードを燃やして、モノポリーのお金も燃やす。

散々したあげく、最後には「ほら 追いついてごらん」って彼らは言ってくる。

この時点で追いつくには相手が富を分けるしか方法はないでしょ?

でも、富を分けてもらえても次は心理攻撃されてどうせ機会均等雇用だと言われる。

だから、モノポリーを400ターンやって稼いだお金は取り上げられ、その後 50年間はやり方が気に食わなかったら、タルサやローズウッドでやられたようにゲームごと燃やされるとしたら、私に勝ち目なんてある?

勝てるわけない。

このゲームは仕組まれてる。

「なんでコミュニティに火をつけるの」「なんで 自分の地域を燃やすの」
とかいうけど、私たちのものじゃない。

私たちはなにも所有してない。

私たちはなにも持ってない。

トレバー・ノアが昨日、完璧に言った(動画リンク)。

社会には契約があって、もし誰かが何か盗んだりしたら、権力を持った人がきて、状況を正すことになってる。

でもその状況を正すはずの人が私たちを殺してる。

社会契約は破綻してる。

社会契約が破綻してるなら、アメフト殿堂とかTARGETのクソが燃えてることなんてどうでもいい。

私たちを路上で殺して一ミリも気にしなかった。

あんたらが社会契約を破ったんだ。

400年もの間、契約を破り続けて、ゲームをさせられて、あんたらの富を作ってやった。

私たちがタルサで自ら富を築いたら、あんたらは爆弾を落として契約を破った。

ローズウッドで自分たちの街を建てた時も、あんたたちは私たちを虐殺した。

あんたらが契約を破ったんだから、あんたらのTARGET、あんたらの殿堂なんてどうでもいいんだ。

ここが焼け野原になったって知ったことじゃない。

それでも足りないくらい。

黒人が求めているのは 同等の立場で、復讐じゃないことをありがたく思うべきだ。