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インタビュー: 誰もがオリジナルだから、自分をあきらめないで ~ 鈴木順也さん

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鈴木順也さん。デザイナーとして活躍しながら、個人のブランディングのプロデュース・コンサルティングにも力を入れています。
先日は、電子書籍『「あきらめない」のススメ』を出版! 
なぜそんなに懸命に生きられるの? 
その答えは、過去に「あきらめた」苦い記憶と、震災の経験に‥‥。お話をじっくりうかがいました。

聞き手: イノウエ エミ
撮影 : 橘 ちひろ
(2021年3月取材)

◆ レールから外れがち? 不器用な人生

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―――鈴木さんは、スマートでソフトな印象ですが‥‥

いやいや、僕はむしろ不器用で、割とでこぼこした人生を送ってきた人間なんですよ。
性格も、今でこそ温厚だといわれますが、昔は我が強いところもあって、今思えば親は心配だったろうなと思いますね。

―――子どものころはどんな子でしたか?

ごく普通の家庭に育った、ちょっと目立ちたがりの子どもでした。集合写真で、ひとりだけポーズをとっているような(笑)。
少年野球をやっていましたが、中学に入るとイヤになってやめてしまいました。親にはさんざん止められたんですが‥‥。

―――親御さんは続けてほしかったんですね。

「スポーツは心身を鍛えるものだから」と。当時はそういうのがイヤだったんですよね。おしゃれしたいし、髪も伸ばしたいし(笑)。音楽に興味を持つようになっていたので。

―――親御さんを振り切って、野球から音楽にシフトチェンジしたんですね。

はい。その後もかなり紆余曲折です(笑)。


◆ バンドに明け暮れて進級できず‥‥

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―――バンドでは何のパートを?

ギターです。父が使っていたものが家にあって、ギターケースを開けて黒いボディを見たとき衝撃を受けました。「かっこいい! これ弾けたらモテるだろうな~」と。

―――モテたい、が動機(笑)。

はい(笑)。絶対に弾けるようになりたかったので、かなり地道に練習しましたよ。そこまでしてモテたかったということかも(笑)。

―――モテましたか?

どうでしょう(笑)。とりあえず、高校ではバンドをやっている連中とつるんでいましたね。先輩のバンドに入れてもらったり、同級生でバンドを組んだり。学園祭に出たり、いっちょまえにジャケットを着て髪もセットしてライブハウスで演奏したり。

―――たずねにくいのですが、進級できなかったのは、やはりショックでしたか?

それはもちろん。ただ実際、当時は「こんな勉強に何の意味があるんだろう」と思っていて、全然勉強していませんでしたからね。自分が招いた結果だなと。

―――退学してしまおう、とは思いませんでしたか?

思いましたよ~。でも、それも悔しくて。留年して中退するって、いかにもじゃないですか。そう見られるのが嫌だった。でも、卒業までの二年間は苦しかったですね。

――― 十代の二年間は長いですよね。

長かったです。ただ、文化祭の演奏は、ふつうに卒業するより一回多くできたという(笑)。

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バンドをがんばっていたころの思い出の写真を見せていただきました。
すてきですね!!


◆ やっぱり好きなことをして生きていきたい

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―――卒業後は就職。まわりもそうでしたか?

いえ、先に卒業した友だちはほとんど進学していました。親も「行ったほうがいい」という考えだったので家庭教師をつけられたりしましたが、自分は進学に魅力を感じませんでした。学校の勉強が好きじゃなかったのもあるし、かといって大学に行って遊びたい気持ちもなく、むしろ早く自立したかったんです。

―――しっかりされていますね。逆に言うと、安全なレールに乗る気配がない。

やっぱり不器用なんでしょうね。若いころは、スマートな人に対してコンプレックスを感じていました。
スムーズに大学まで行ってやりたいことを見つけ、大きな会社でうまくやっている‥‥そんな人を前にするとモヤモヤしちゃって。
それがコンプレックスだとも気づいていなかったですね。とにかく、なんだか居心地が悪くて苦しかった。

―――最初の会社では営業をされていたと聞きました。

はい。車が好きで入った会社でしたが、やってみると営業はさほど好きではなく‥‥。

就職するとき、バンドも卒業したんです。ちゃんとした大人になるつもりで(笑)。あのまま勤めていれば、何の不自由もなく安定した生活だったでしょうね。
ところが、三年ほど経つと「好きなことで食べていきたい」という気持ちがもこもこと湧いてきた。若いから何でもできる気がしたし、チャレンジしなければ後悔するだろうと、思いきって辞めました。

◆ 「見たくない自分」の時代

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―――「やっぱり音楽だ」と退職して、その後は?

業界に近づくところから始めようと、音楽関係のバイトを探しました。すると、某大手レコード会社のグループ会社がアシスタントを募集していて、運良く潜り込めた(笑)。
バイトしながら音楽活動を‥‥と思ったんですが、結果的にはここで音楽をあきらめることになりました。「見たくない自分」だった時期ですね。

―――どういうことでしょう?

レコード会社の系列なので、バイト先には、アーティストやもうすぐデビューする人の情報がたくさん入ってくるんです。撮影スタジオで実際に会うこともありました。そこで、彼らが積み上げてきたものの大きさをひしひしと感じちゃったんですよね。自分にあそこまでできるかな、と。
年齢的な迷いもありました。当時、僕は25~6歳。この先、30歳、40歳になっても音楽をやり続けることができるのか‥‥。

あらためて考えたとき、自分の次のステージとして視野に入ってきたのが、デザインの仕事でした。

―――アルバイト先がデザイン関係だったんですよね。

CDジャケットやポスターを作る現場でした。自分の中から生まれるものを表現して、形にする仕事って魅力的だなと。僕のキーワードは「つくる」「クリエイティブ」なんじゃないかと思い、音楽からデザインへ舵を切りました。

―――結果的に、デザイナーとして長くお仕事されていますが‥‥。

はい。ありがたいことに、大きなプロジェクトもたくさん経験してきました。デザインの仕事は好きだし、自分に向いていると思います。
でも、情けなさや悔しさも、ずっと残っていました。途中であきらめて逃げた、弱くてダサい自分‥‥。

―――挫折感、ということですか?

うーん。音楽で成功できなかったことそのものよりも、あきらめてしまった自分への失望というか。どこか自分を否定しつづけて生きていました。それが、のちに「あきらめない」を実践する価値観につながっていったと思います。

◆ 「もう後悔したくない」

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―――デザイナーとして実績を積み、ご結婚してお子さんも生まれました。そんな安定した生活に、また転機が訪れたのは‥‥。

震災がきっかけです。多くの方が犠牲になられ、人生には限りがあると痛感しました。しかも、僕はそのタイミングで父親になったので‥‥。
子どもをどこでどのように育て、自分のどんな姿を見せるのか、真剣に考えるようになりましたね。

―――福岡へ移住されたのも、生き方の転換のひとつですね。

はい。同時に、会社勤めだけでなく、もっと自分にできることがあるんじゃないかと思い始めました。これからの人生をどう使うべきかと。

これまでお話ししたように、僕もいろいろなことをあきらめたり、中途半端なままにしてきました。
「もう後悔したくない。それに、僕のような人はきっとたくさんいるんじゃないか? そんな人たちを僕が手助けできるんじゃないか?」
その思いが、個人のブランディングのプロデュースやコンサルティングの仕事につながっていきました。

―――挫折や後悔の経験もしてきた鈴木さんだからこそ、クライアントさんに寄り添えるところがありそうですね。

クライアントさんによく言われるのは、「思わずたくさんしゃべってしまった」ということ。「話してすっきりした」とか、「話しているうちに気づきました」という方が多いです。

コンサルティングというと「アドバイスされる」イメージがあるかもしれませんが、コンサルタントって、クライアントさんが自分で気づくきっかけを引き出し、自分から行動したくなるような、そんなかかわり方をするんですよ。


◆ 本当の幸せ・本当の望みを知っていますか?

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―――コンサルティングでは、具体的にどのような講座やセッションをされていますか?

まずは心のあり方ですね。自分はどんな生き方をしたいのか、どんなことに対して幸せを感じるのか。

ここをおろそかにしたままだと、進む方向を間違えかねないんです。
たとえば「年収を100万円上げたい」と努力して達成しても、人によっては、お金を稼ぐよりもっと大切なものがあるかもしれない。価値観は人それぞれですから。

自分が心から望むことは何なのか? 忙しい日常の中ではなかなか向き合えない、本当の気持ちを探っていくことが大切です。

―――なるほど~。次は?

次は、その人ならではの魅力や強み、役立てる分野の発見です。
「人には何かしらオリジナルの強みがある」というのが僕の持論です。

―――誰にでも?

誰にでも! 案外、自分では気づいていなかったりするんですよ。過去のスキルやリソースを洗い出していくことで、意外な自分と出会えたりします。
僕がデザインの仕事をする中で身につけてきたマーケティングやリサーチの手法を活用しながら、強みを一緒に探っていきます。

―――おもしろそう! 

そして、強みやスキルが見つかったら、それをどう伝えていくか。
良い商品を作ったり、魅力があるからといって、それだけではなかなか手に取ってもらえないものですよね。
SNSの動線づくりも含め、効果的な発信やブランディングについてお伝えします。

―――デザイナーとしての経験やスキルが活かされたパッケージですね。

企業の商品開発に企画段階から関わってきた経験は大きいですね。
もちろん、クライアントさんが宣伝のツールとしてロゴマークやチラシを作るとなったら、デザインも請け負いますよ。最近は電子書籍の表紙も手がけています。

―――デザインまで鈴木さんにお願いできるんですね。ワンストップ!


◆ 誰もがオリジナル。限りある人生だから自分らしく

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―――鈴木さんが出会ってきたクライアントさんは、どんな方が多いですか?

「何かしたいけれど自分の強みがわからない」とか、「やってみたけれどなかなかうまくいかない」という人が多いかな。

講座やコンサルティングを受けて「今すぐ行動したくなった」「自分が本当に大切にしていることに気づけた」と言ってもらえると、本当にうれしいですね。

―――「自分に強みなんてあるんだろうか?」と、一歩踏み出すのをためらっている人も多いと思います。

そうですよね。僕も若いころは自分に自信がなかったのでよくわかります。僕の場合は、「人には必ず終わりがくるんだ」と実感してから変わりましたね。

今でも、横浜で経験した震災を思い出します。
立っていられないくらいすさまじい揺れがなかなかおさまらなくて、電柱がばたばたと揺れて、生後1か月の娘を抱えながら、このまま家がつぶれるんじゃないかと思いました。
信号がすべて消えて道路はパニック、遠くを見るとほうぼうで火事の煙が上がり、スーパーに行くとごった返していてモノはほとんどない。夜は停電、翌日には原発が爆発したという情報。何万人もの人が亡くなられて‥‥。

人の命はいつどうなるかわからない。そして、いつか必ず終わりがくるのが人生です。だったら、後悔しない生き方をしたいと思いませんか?

―――きっとみんな、本当は自分らしく生きたいはず。自分の価値を信じられたらいいですよね。

すべての人がオリジナルの価値をもっていますよ。だって、自分の人生は自分でしか生きてきていないんだから。自分の経験は、唯一自分しか持っていないリソースなんです。
みんながそれを活かせば、関わり合う人同士、お互いが豊かになれるはず。

いろんなことをあきらめてきた僕が、40代も後半になって『「あきらめない」のススメ』という本を書きました。
「あきらめない」って、「自分をあきらめない」という意味です。これからもたくさんの人と出会って、このメッセージを届けていきたいですね。

(おわり)

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電子書籍『「あきらめない」のススメ』、好評発売中です!

鈴木さんのコンサルティングのコンセプトは、【個人の価値のブランド創りとファン創り】。各種SNSでの発信もチェックしてみてくださいね!
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◆編集後記

よりよりインタビュー記事を作り上げるためにアイデアを出していただき、「恥ずかしいけど、せっかくだから‥‥」と過去の写真まで! ひとつひとつの仕事への「あきらめない」姿勢に感じ入りました。しかも、とてもわかりやすく示してくださいます。さすがデザイナーさん!
そして鈴木さんは本当に聞き上手、引き出し上手です。インタビューをしているはずが、私もずいぶんしゃべった気がします^^ ありがとうございました。
(イノウエ エミ)


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