今すぐ、和菓子を頬張りたい気分。
2020/8/4 読書記録no.1『和菓子のアン』坂木司
本との、出会いとは。
就職のため引っ越すという友人が、
Instagramで呼びかけていたのがきっかけでした。
「本、譲ります。」みたいな感じだったかと。
すぐDMを送り、電車を乗り継いで友人の自宅へ向かいました。
すっかりと片付いた部屋には、本がいっぱいに詰まったダンボールと、
入りきらなかったのか積み上げられた何十冊もの本。
「この中から好きなモノを、好きなだけ、持って帰っていいよ」と、
太っ腹な友人。一つ一つ手に取り、オススメを聞きながら、
あれよこれよと色々ありまして、その中から見つけたのがこの本です。
私はいつも、表紙に惹かれて買うこと、
所謂”パケ買い”することが多いのですが、
この本の表紙の第一印象は、「少し、地味?」
表紙を見ただけだと、私の心はあまり動きませんでした。笑
しかし、、、
裏表紙のあらすじ
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの十八歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー!
あらすじを見た瞬間、
「あ、この子は持って帰ろう。」と即決でした。笑
本を、読み終わって。
シンプルに、読みやすく、次々とページをめくって、
結構分厚い本ですが、あっという間に、読み終わってしまいました。
まず、そこで働く従業員3人のクセが強い。笑
長身の美人さんで、大変な仕事も華麗にこなすのに、
控え室では、図太い声を張り上げて株を楽しんでいる店長。
職人志望で、ちょっと無口な爽やかイケメンなのに、
裏に入ると途端に乙女になるバイトくん。
丁寧な言葉使いで接客を行う、可愛らしい女の子なのに、
実はヤンキーだったという過去を持つ、大学生バイトちゃん。
そのほかにも、
フロア担当の人や、お局的存在の酒店スタッフ、
美の魔術師と称される美容スタッフなど。
とりあえず、アンちゃんが働き始めたデパ地下のスタッフさんが強い。笑
その軽快な会話のテンポが、非常に面白い。
読んでいて思わず笑ってしまう箇所も、結構ありましたね。
心に、残ったこと。
私はいつも、気になった言葉をメモをしながら本を読み進めます。
この本を読んでいる時も、ノートとペンを準備して。
ここでは、数多くある気になった文章の中で、
選びに選んだモノ、2つを紹介します。
P217
ずっとずっと昔から、時間が途切れなく続いている。
その時間の別名を、歴史という。
だとすると、いつか私だって自動的に歴史の一部となる。
本には残らない名もなき人生だとは思うけど、
食べることでお菓子を次の世代へ残していけたらいい。
名もなきおはぎはきっと、
私のような人に支えられて歴史の波を超えてきたのだから。
私たちの生活にも身近にある、「おはぎ」
馴染み深い「おはぎ」という和菓子は、
一般的なところで春ならぼた餅、秋ならおはぎと名前を変えます。
お彼岸と結びついたのは、家庭で作りやすいから。
もち米をお餅みたい完全に潰すのではなく、
つぶつぶが残るくらいなら家でもできるから身近なお菓子になりました。
そして、そんな作り方からいくつもの名前が生まれました。
”地味”なおはぎを季節のお菓子のフェアで出すのはなんでか、
とデパート管轄のスタッフさんが店舗にきた時、
たまたまそこにいたお菓子の師匠が説明してくれた内容です。
それを聞いたアンちゃんの気持ちが、上に引用した文章です。
私はお菓子の知識なんて何もないけど、
この説明を聞いて「なるほどな、、、」と1人で頷いてしまいました。
P301
和菓子職人って、なんて自由なんだろう。
和洋折衷なんて枠を超えて、この国に広まっているモノをモチーフとして
生かす。そして現在ある材料を生かして美味しいお菓子を作る。
和菓子は自由で美味しくて、人生に色を添える。
きっと外国にもその国なりのお菓子があって、
様々な局面で人々のテーブルを彩っているんだろうな。
和菓子なのに、クリスマスをイメージしているモノも本の中に出てきます。
日本とか、外国とか、そういう括りは取っ払って、
ただ純粋に表現する、お菓子の世界は素敵だと心から思いました。
実はこの本には、和菓子の役目についても書かれてあるんです。
でも、ここで全部書いてしまうとなんだか勿体ない気がするので、
あえて書かないことにします。
その役目を知った時、またもや1人で頷いてしまいました。
全部が、学びの宝庫。
この本を読み終わったあと、思わずコンビニに駆け込んで、
どら焼きを買ってしまいました。笑
そのくらい、この本には「和菓子」の愛が詰まっていて、
もっと知りたいと学習意欲を掻き立ててくれる、そんな気がしました。
和菓子職人しか知らない、
所謂”業界用語”みたいなものも出てくるのですが、
それを謎解きのように主人公と解決していく時間がなんとも楽しい。
さらに、小さな和菓子に込められた気持ちなんかも、
心がムズムズするくらい、胸キュンしました。
奥ゆかしくて、儚くて、そして尊い、
昔の人はそうやって気持ちを伝え合っていたのかと思うと、
さらにキュンキュンします。
食べることは大好きすぎるけど、お菓子の知識は全くなかった私にとって、
この本は、すごくすごく面白かったです。
お菓子一つでも、その意味や、そこに込められたストーリーを知るだけで、
何倍も、何十倍も、美味しくなる気がしました。
食べることが好きな方、和菓子が好きな方、
歴史や恋愛などに興味がある方、様々な世代の方にオススメの一冊。
また明日、どら焼き、買いに行こうかな。笑
おりょう☺︎
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