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「お客様のために」だけで思考を止めていないか

「しみずさんお久しぶりです」
昨年11月、あるコミュニティに久しぶりに参加したら同じテナントにオフィスを借りている社長が声をかけてくれた。
「最近会わないねー」
「実はオフィス代わるんですよ」
「えっどこに?」
「近くなんですけど知り合いの社長がワンフロア使っていないところを貸してくれるという話になって。相場よりもかなり安い金額にしてくれるので来月引っ越します。」
「そうなんだー、凄い勢いあるねー」
「そんなこともないですけどタイミングかなと思って。このオフィス、契約期間が4月まであるのでその金額は払い続けないといけないですけど」
「そうなの?契約期間とか見ていなかった、家賃2重払いになるからちょっと大変だね」
「まあしょうがないです、契約なので」
というやり取りを経て12月からメンバーがパート含め3名増えることもあり彼から4月までだがそのオフィスを借りることにした。

我々がオフィスを借りている会社は外資系。
契約書やルールは絶対だ。
その社長も途中解約の相談は一応したみたいだが、「契約書どおり」という回答ひと言だったという。


先月、東京の社長と食事をした。
「今までオフィスが広すぎたんで少しこじんまりした所に引っ越しました」
「確かにめちゃめちゃ広かったですもんね、ここでも十分に広いですよ。どうやって見つけたんですか?」
「知り合いの社長からですね」
「でもすぐによく引っ越し出来ましたね?」
「前のテナントが契約期間残っていたけど事情を不動産屋さんに説明したら即解約させてくれたんです。その不動産屋さんも友達だったので」



10年ほど前のこと。
前職時代にお客様の施設が事情により1か月後に閉鎖することになった。
当時顧問契約を結んでいたのでお客様の社長である医師と話をし、閉鎖完了を持って顧問契約終了と私が話をつけてきた。

会社に戻ると上司から叱責を受ける。
「契約書にはいずれかから解約の申し出があって3か月後に双方の合意を得て解約と書いてあるだろ。1か月後に即時解約ではない。相手の都合だから2ヶ月分顧問料いただく権利はうちの会社はあるので院長にそう言ってこい」

確かに契約書上はそうなっている。
でも院長にも今までお世話になったし、今後のことを考えてもお互い気持ちよく終わるのがいいじゃん、とめちゃめちゃ反発しながらもサラリーマンとして伝えに行かなくてはならない立場。

さあ、どうするか。
院長に2か月間、施設が閉鎖されたうえで「お金を下さい」、簡単に言うとそれを伝えなくてはならない。

考えがまとまらないまま院長と対峙。
「しみずさん、言っていることが分からない。施設閉鎖だよ?何が出来るの?」
そうだよね、私の意見も院長と一緒だしね。

会社に戻る。
「2ヶ月請求書は送っておけよ、払ってこなかったら弁護士に相談して弁護士名で…」

前門の虎、後門の狼である。

再び院長の所に行く。
「院長のお困りごととか介護以外の仕事でもいいので2か月間弊社として何か出来ませんかね?」

必死である。

「無いって、無いから」
「院長、クリニックの方で何かお手伝いできませんか?」
「受付でもやってくれるの?今困ってないけど」
「困っていらっしゃらないならば難しいですが…」

こんなやり取りを会社と院長の間で3往復くらいしあるところで着地した(ちょっと着地内容は書けませんが)

当時は大変だったが、今になって考えると私の交渉は、院長と、交渉している私、お互いwinwinで終われるところを探し、今までお世話になったので、お客様の為なので、という正当性を自分と会社に訴えかけていた。

しかし「契約書通りで行け」となると相手に何か価値提供を考えなくてはならない。
お金だけもらう事もできるだろう、契約書があるので裁判等でも自社は勝ってしまうだろう。
しかしそれではお客様の為にならない。
お金をいただかない貢献の仕方はあっても、お金をいただき続ける貢献をこの状況で考えるのは本当に難しい。

しかししかしその極限な状況で考え考え考え、提案し、例えお金がいただけなくても今までは考えなかった案や行動が生まれたのだ。

この思考ができる人は成長スピードハンパない。
私は当時強制的にこの状況下だったので成長スピードハンパないと思っているが、もうそんな環境の会社は今の時代ないのだろう。

やる人はやるし、やらない人はやらない、ままである。
お客様の為に、とだけ考えるのはプレイヤーであるが、マネジャー層もそうなりつつあるんじゃないか日本。
契約書バリバリの外資に飲み込まれていくのか日本。

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