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Amazon Connectで簡単コールセンター

Amazon connectとは

今回はAmazon Connectというクラウドサービスでコールセンターシステムを構築してみましたので、それについてレポートします。
最近は色々な企業でコールセンターが扱われるようになってきましたが、このシステムは通常のWebシステムと比べて複雑です。PBXやCTIなどの音声基盤が必要になり、エージェント(オペレーター)の組織設計、キューなどを、呼量の見積もりに応じて用意する必要があるため専門的で大規模になります。それだけでなくシステム間の連携も必要になるために大手SIerでなければなかなか構築することが出来ませんでした。私も少し仕事で関わったことがありますが、その道を何年も経験しているというエンジニアばかりがいるような状態で、とても太刀打ちできる人たちではありません。ところが、Amazonによってこれまでのコールセンターシステムの常識が覆され、小規模事業者でも簡単に仕組みを構築することが出来るようになったのです。
Amazonはご存知の通りIaaSなどクラウドプラットフォームの最先端を行く企業ですが、Amazon Connectによりコールセンターシステムまでもが完全にクラウドと化しました。導入は本当に簡単で、3時間もあればSalesforceと連携した完成度の高い受付システムが出来上がります。

Salesforceと連携することで本格的な顧客エンゲージメントを実現

そしてこのAmazon Connectと、Salesforceを繋げることで、コールセンターのオペレーターが操作する、完全なヘルプデスクを作ってしまうことが出来るのです。電話を掛ければ、名乗らなくてもどの顧客からかかってきたのか、用件は何か、そしてその顧客がお店でいつ何を買ったのかなどが電話をとった瞬間に筒抜けになってる、あの仕組みです。いちいち自分で説明しなくても、話の前提が分かってもらえると当然話が早いですよね。また過去の購入履歴から新しいものをお勧めされたり、自分の興味関心に沿った商品を紹介されると、何か特別感も出てきます。相手とは一度も会ったことがないはずですが、誰がオペレータでもこのような高いレベルのサービスが提供できるのは、コールセンターのシステムがイケているからなのです。このようなシステムはCRM(Customer Relationship Management)と呼ばれ、企業の顧客一人一人に合った提案や情報提供が出来るようにと、色々なベンダーがシステムを提供しています。特にSalesforceは世界的なクラウド企業で、世界中でこのCRMを軸としたシステムをクラウドという形態で提供しています。出先にいても、スマホでも、家でも顧客管理業務が出来るのです。そこにAmazon Connectのクラウド音声基盤が組み合わさることで、とても素早くコールセンターシステムが作れてしまいます。まさに最強の組み合わせと言えます。

使った分だけの重量課金制

極めつけはこのようなシステムが、使った時間だけ支払う重量課金になっていることです。システムは作るだけで大きなコストがかかりますが、Amazon Connectは通話している時間だけ、1分単位で課金されます。新サービスを始めた時など一般的には多くの問い合わせが予想されますが、そのためにシステムや座席を増やして、実体はほとんど使われず損をするかもしれない、といったことを考えながら必要なリソースを見積もることは業務部門の課題でした。重量課金であれば使った分だけ払えばよいため、時期によって需要が変動するような場合において特に有効です。

コールセンターシステムを作るのに必要なもの

ではここから実際にシステムの作り方をご紹介していきます。まずはじめに用意するものには、以下があります。
・Amazon Web ServiceおよびAmazon Connectアカウント
・Salesforceアカウント
・パソコン
・電話(テスト用)
上の2つはサイトから登録できますので、本当に必要なのはパソコンと電話だけということになりますね。

Amazon Connectの設定

インスタンスの作成
まずはAmazon Connectでインスタンスというのを作ります。これはひとつのコールセンターに相当するもので、電話番号とほぼ同義です。同じ企業でも会員向けサービスと非会員向けとで番号を分けるような場合がありますが、提供しているサービスが異なると、対応部署も異なるために受付ける電話番号を別々にするような場合が考えられます。これに対してIVRという無人音声応答機能でメニュー番号から振り分けるようなこともできますが、会員向けは出来るだけ余計な操作をさせたくありません。そんな時はそもそも番号から変えてしまった方が懸命です。新しくユーザーも作る場合は「Amazon Connect内にユーザーを保存」として管理パネルのURL(インスタンス名)を入力します。電話番号はいくつか用意されている中から選択します。直通用とフリーダイヤル用とが用意されていますが、フリーダイヤルの方が料金が高くなりますのでご注意ください。ここで取得できた電話番号は正式なコールセンターの電話番号となりますので、控えておきましょう。

キューを作成
次にキューとプロファイルを作成します。キューといっても分かりにくいですが、郵便局や銀行の窓口のようなものです。用件ごとに受付番号をもらい、順番が来て呼ばれて初めて窓口に行くと思いますが、キューとは用件を処理する窓口に相当します。この窓口もひとつではありません。振込の用件なら1~5番、年金受け取りなら10番~13番というように、このまとまったセットに該当するのがキューです。ここではキューの名前、窓口の営業時間をオペレーション時間として設定していきます。これらの項目は後で変更できますので、取り敢えずデフォルトのものを設定しておきましょう。デフォルト値はBasicXXとなっています。

ルーティングプロファイルを作成
また難しい概念が登場しました。ルーティングプロファイルとは、オペレータと窓口(キュー)の紐づけです。1~5番窓口には振込みが処理出来るオペレータを配置し、10~13番窓口には年金支払いが出来るオペレータを配置する際の、窓口とオペレータの組み合わせです。一人で複数の窓口が担当出来る人がいれば、全ての窓口と紐づけることも可能にはなりますが、事務処理の効率性から通常は誰がどの窓口を担当するかは予め決めておくと思います。この場合にオペレータ一人ひとりに窓口を割り当てるのではなく、ルーティングプロファイルという概念を設定することで、特定スキルのオペレータ群と誘導する窓口(キュー)を組み合わせておくことが出来ます。オペレータが揃わないときに、別のチームにも窓口を担ってもらいたいような場合、一人ひとり付け替えるのではなくルーティングプロファイルを変更するだけで切り替えが可能になります。大きなコールセンターの場合に割り当てが簡単に出来そうですね。

ユーザーを作成
ユーザーは組織で言う社員や役職を表します。Aさんが管理者、Bさんがオペレーターなら、A=管理者、B=エージェント、といった感じです。電話を受けとる人の数だけ作っていきます。ここで先ほどのルーティングプロファイルやセキュリティプロファイル(権限)を指定していきます。ユーザにルーティングプロファイルを割り当てるとは、窓口にオペレータが座った状態、つまり受付の準備が整ったことになります。

問い合わせフローの作成
ようやくコールセンターぽくなってきます。問い合わせフローは、システムが電話を受けてオペレータに繋ぐまでの流れを設定するシナリオです。総合受付の場合、どの部署を呼び出すのかを無人音声ガイダンスに従い利用者がメニューをプッシュすることで振り分け先を変わえることが出来ます。この時に、どのような音声を読み上げ、何を入力としどの窓口(キュー)に繋ぐのかをダイヤグラムを線でつなぎ合わせることによって設定することが出来ます。特に何もない場合でも、キュー(窓口)に転送する必要があります。注意点として、プロンプトを読み上げる場合には最初に言語を設定するなど、設定と操作、という関係があります。キューに転送する場合もキューの設定、そこへの転送、といった具合で設定していきます。

以上でAmazon Connect側の設定は出来ました。続いてSalesforceの設定を見ていきましょう。

Salesforceの設定

AppExchangeよりCTIアダプターをインストール
 まずはSalesforceでAmazon Connectが使えるように、AppExchangeよりCTIアダプターをインストールします。CTIとはComputer Telephony Integrationの頭文字で、電話からコンピュータを制御するために必要なプログラムです。Amazonだけではなく色々なものが存在しますが、CTIによって電話がかかってきたら顧客画面を表示させるなどすることが出来、今のコールセンターシステムがとても使いやすい仕組みとなっています。Salesforce版Amazon Connect CTIは下記の図の通りAppExchangeよりインストールを行います。

CCP(Contact Control Panel)を設定する
 ここが連携させる部分の直接的な設定となります。先ほどインストールしたCTIアダプターを設定から開き、Amazon Connectのインスタンス情報と連携させます。Amazon Connect CCP URLという部分に、Amazon Connectで作成したインスタンス名を指定するだけです。これで連携の設定が出来ました。

Amazon Instanceの設定
続いて、Amazon Connect側にSalesforceのURLを設定します。
AWSからAmazon Connect⇒該当のインスタンスを選択し、下記の中から承認済みオリジンを選択します。

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アプリケーション統合という画面に遷移しますので、ここでSalesforceのログイン後のURLを指定します。

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ソフトフォンレイアウトの設定
次に同じくコールセンターの設定からソフトフォンレイアウトを設定します。電話がかかってきて、CTIがSalesforceをどのように制御するかをここで決めます。どの画面に何の項目を表示するのか、電話番号で検索した結果一致するレコードがあった場合にポップアップさせる、などをここで設定します。

コンソールにソフトフォンレイアウトを追加
続いてアプリケーションマネージャからソフトフォンレイアウトを追加します。「セールス」というアプリケーションを編集で開き、ユーティリティ項目から「ユーティリティ項目を追加」します。設定を保存した後に標準コンソールの画面に電話マークが出るようになりました。ここをクリックするとAmazon Connectのログイン画面が表示されるため、ログインしておきます。

(ソフトフォンの起動)

さて、いよいよ電話をかけてみましょう。最初にAmazon Connectのインスタンス作成時に取得した電話番号をかけてみます。しばらくすると下記画面のようにソフトフォンが「受話通話」という表示に変わりました。そしてSalesforceのコンソールは顧客画面を開いています。あらかじめ検索でヒットするように仕込んでおきましたので、該当の顧客情報が表示された状態で受電していることになります。これでようやく電話に出る前に氏名や住所、過去にこの顧客がどのような取引をしていたのかなどが分かるようになりました。

クラウドの恩恵は誰でも受けられる

 Amazon ConnectとSalesforceの連携、いかがでしたでしょうか。上記のレポートではSalesforceで検索を行うという連携を中心にしていましたが、この状態でPC上で電話に出ることも出来ますし、Amazon Connectの設定でさらに別の電話に転送することもできます。ユーザの設計も細かく行うことでオペレータ一人ひとりとの通話記録などもクラウドに全て保存することも可能です。コンプライアンスや監査の面からも、通話記録がきちんと残せているのは良いことですね。何より、これらの仕組みはPCと電話さえあれば簡単に出来てしまうことが驚異的と言えるでしょう。
これらを支えるクラウドの技術がここまで発展し、安く提供されてきたことでITの恩恵を受けられる人たちの裾野は大きく広がってきました。ITは過去から大企業、大手の持ち物でしたが、クラウドによって中小規模事業者の方々も彼らに引けを取らないような仕組みを持つことが出来るようになったわけです。これからもこのノートでは、中小事業者に役立つシステムを、システムインテグレーターの立場でお伝えしていきたいと思います。

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