見出し画像

肉じゃがを作る女性

はじめて「肉じゃが」を食べたのは大学1年のときです。

当時、女子学生だけの2階建てアパートにひとりで暮らしていました。
そしてある日、となりに住んでいた大学4年生の女性が「肉じゃがを作ったから、おすそ分け。どうぞ」と持ってきてくれたのです。

廊下で会えばあいさつする程度の面識。あまりくわしいことは知らないけれど、たしか「卒業後は早稲田の大学院に行くの」と言っていたような気がする。年上の女性って、あんな感じなのね?という印象でした。

で、話を戻すと、その「肉じゃが」、それはそれはホクホクで、おだしのきいたいい香りがしました。大きめの器によそっていて、きれいな緑色の”きぬさや”がのせられてたのをおぼえています。ひとり暮らしなのに、なんでこんなに大きなお皿を持っているんだろう?とも思いましたね。

ちなみに、ひとり暮らし中は一度も「肉じゃが」を作ったことはありません。なにせうちの母親はあまり料理が得意ではなく、肉じゃがはスーパーで買ってくるものだと思っていましたから、作りかたもわかりませんでした。

ですから、なおさら「大学4年生のお隣さんからいただいた肉じゃが」が神々しく見えましたね。

・じゃがいもはタテ二つ切り、皮つきのままなんだ
・おだしで煮ているみたい
・にんじんは大きめの乱切りなのね
じっくり観察して、ゆっくりいただきました。

おいしいかったです。
だって、だれかのために作られた「肉じゃが」ですから

そのうち、隣の部屋から男性の声が聞こえはじめました。なにやら楽しげな雰囲気です。ははーん、そういうことね。だから「肉じゃが」を作ったのね。道理でおいしいわけですよね。

誰かのために料理を作っていて、なんだか上手に作れたから、うれしくなっちゃって隣の子におすそ分けしよう、こういう流れだったんですね。


このできごとは、わたしの人生に大きなインパクトを与えました。
「もし彼ができたときには、肉じゃがを作ってみよう」
が刷り込まれた瞬間でもあります。


月日は立ち、お隣さんは卒業して引っ越していきました。
そして、はじめて肉じゃがを作ったのは大学3年のとき。
もちろん、失敗しました。だって料理したことないんですもん。
たしか煮汁が少なすぎて焦げちゃったんですよね。
結局、ふたりでラーメンを食べに行きました。

ふと、そんなことを思い出しました。今夜は肉じゃがにしようかな?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?