40歳の新人
40歳で「新人になる」という経験を再びすることは、
心理的なぜい肉を落とすのに最適だ。
年度の最終日である本日、また引っ越しをした。
移住してから1年半ですでに2回目だ。
退居したばかりの前の家では、
コロナ禍の影響で始めたライターの仕事を、
うんうん悩みながら進めた。
机に座って
手だけを動かし続ける作業に慣れず、
3分と同じ姿勢で居られなかったり、
整骨院通いを余儀なくされたりした。
頭をひねってなんとか書いた文章も、
回りくどくて的外れ。
最後まで読めたものじゃなかった。
さらにどんなに急いでも〆切を守れず、
クライアントに平謝りすることも
何度もあった。
新人とは、
なんと不器用で、下手くそで、仕事に時間がかかるのだ。
それに加えて
移住先で就職した美容室でも、
最年長の新人だ。
一回り以上歳下のスタッフに、
えらく先輩ヅラをされた。
ほんの1年ほど前までは、
責任者として偉そうにしていた自分が、
なんとも惨めな姿に変わってしまった。
生活の全てを新しくするということは、
全ての面で
新人からやり直すということだ。
それは思った以上に
大変で、
プライドがズタボロになる。
思った以上に
物事を前に進められない。
そして思った以上に
素直さを取り戻せる。
いくら美容師として20年以上のキャリアがあっても、
働く「箱」を変えたら
分からないことばかりだ。
しかし、
この経験があったからこそ、
自分の枠を変える事ができたと思っている。
慣れ親しんだ環境で、
ドカッとあぐらを組んでいては、
絶対に知り得なかったことばかりだ。
40歳で、
そこそこ仕事の実績を積み、
気持ち的にも「ぼちぼち第一線は退くか…」など思い始めたころに、
こうやって人生を丸ごと巻き回した
「40歳でもう一度新人やってみるプロジェクト」。
(言うまでもなく、自分一人で勝手にそう言っているだけだが)
心にへばりついたぜい肉を取るための良いエクササイズになった。
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