見出し画像

時間旅行者レポートVol.24 note de 小説


ボクは機内の中にいる。
といっても航空機ではない。

スペースシャトル。
つまり宇宙空間にいる。

機内で飲んだハイネケンには
液体ががこぼれでないように
ストローがついていてそれを
飲むたびに酔いを一層
加速させた。

いま、Dimentionz社お抱えの
Space Shuttleの中にいる。

ミュンヘン空港から
セントレア中部国際空港までは
約30分の宇宙の旅である。

この22世紀では
航空機の地球便と
シャトルの宇宙便のゲートがあり
おなじ空港から乗り継ぐことが
可能なのだ。

例えばボクは今回の旅で
ミュンヘンからヤーパンの
セントレア中部交際空港
に行くため宇宙空間を
旅している。

そのあと、乗り継ぎだ。
小型の無人機でそのまま
海上にある特設ポートに降り立ち
そのまま

Shima-Kanko-Hotel
(志摩観光ホテル)。

つまりサミット会場のホテル
に向かう旅程だ。


ーーーーーーーーーーーー


ミュンヘン空港出発から1時間後
ボクはホテルに到着した。

ドイツから日本の地方都市まで
わずか一時間ほどである。

それにしても潮の香りが心地いい。
遠くでなにかを養殖しているようだ。

ボクはふと両親を思った。

海の色、潮の香りは
とうてい及ばないアマルフィに
いる彼らだが

この先の遠い
ティレニア海で遊んで
暮らしているボクの両親。

きっと今も笑っているだろう。

両親を思うと
涙腺がつい緩んでしまう。



「Dr,オリバー。
宇宙の旅のご経験が
あるのですか?」
と08はボクに聞く。

「いえ、これが
初めてです。

飛行機にすら
乗ったこと無い。

何もかもが初めての
事でしたよ」

と言ったボクは
落ち着いていた。

一般人ならば
あまり叶わぬ
宇宙への旅。

憧れであったが
乗ってみると
あっけないものだった。

ただのヤミ。
機内の外は真っ暗闇。
それがたった30分の
出来事だった。

それだけだった。

やがて機内の景色が
炎に包まれた。

あまりの熱線に
ボクはRay-Banをかけ
しばし大気圏突入の瞬間を
楽しんでいた。

やがてヤーパンの上空に
舞い降りた。Mt.Fujiが眼下に
見える。

不思議な経験だった。
しかしボクがした
経験は宇宙すら超越する

なんといっても
時空の超越なのだ。


「比になりません」
それだけをボクは
08に伝えたので

彼は首をかしげた。


ーーーーーーー


信じられないことを
タラップを降りたあと
聞いてボクは驚いた。

この旅程は実は
各国首脳たちよりも
VIPなものだと
いうことだった。

先進国首脳連中は
宇宙からの訪問者では
なく、遠く地球を周遊して
やってくるらしい。

それに海上の特設ポートも
ボクの訪問に合わせての
ことだった。

同じ時間にドイツを出国した
首相はもちろんまだ
到着していなかった。
これから10時間後に
到着するらしい。


すべてがボク、というより
DimentionZ社の特権だという。

ーーーーーーーーー

Shima-Cityにある
海辺のホテル

Kanko-Hotelに先に滞在していた。

もちろん自由行動は出来ない。
ここからは08が誘導する
DimentionZ社計画のツアーに
参加することになった。

あてがわれたのは
22世紀の技術が産み出した
夢の車

Schwimmendes Auto
(浮く車)

だった。
これはDimentionZ社の
新製品で、今回が初披露にして
初の公道での走行らしい。

この時代、エンジンはもちろんない。
それどころかこの車はタイヤもない。
つまり路面に負担をかけない。
動力は

Wasseer(水)
だけなのだ。
大気汚染性ゼロ。
燃料もほぼ無限の
夢の車。

さらに浮いた。
これには世界中が
度肝を抜いた。

むかし、21世紀の半ば
自動運転システムが
各国で法制化された。

たしか、アメリカのテスラ
という会社が世界を先導
しはじめたのもこの頃だったと
覚えている。

しかし、そのテスラも
DimentionZ社に遠く
追い抜かれてしまった。

「兵どもが夢のあと」と
AIKIDOで世話になった
センセイから伺ったことが
あるが・・・。


ーーーーーーーーーーー


沿道を埋め尽くす
人たち。

ヤーパンの国旗
「日の丸」を振りボクを
歓迎してくれている。

しかし途中から
青いぬいぐるみの姿も
ちらほら見えた。

青く丸い
Waschbärhund(タヌキ)
のような
ぬいぐるみだった。


後で知ったことだが
これがかのハーバー博士が
愛してやまなかった
ヤーパンのアニメキャラだったと。


長いパレードが続く。
しかしこの国の人たちは
やはり礼儀正しいのだと
思った。

この間の大学の騒動のようには
ならないのだ。

きちんと車道を確保しつつ
沿道から飛び出さずに
出迎えてくれる様に
ボクは心を打たれた。

その長いパレードは
このShima-Cityにある

Grundshule(小学校)まで
続いていた。
浮く車はそこに入っていった。

そこでボクはこの国の
次世代の天才たちと
楽しいひとときを過ごすのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

つづきます。







この記事が参加している募集

スキしてみて

サポートをお願い致します。 素敵なことに使います。何にって?それはみなさんへのプレゼント! ぼくのnoteをもっと面白くして楽しんでいただく。これがプレゼント。 あとは寄付したいんです。ぼくにみなさんの小指ほどのチカラください。