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時間旅行者レポートVol.25 note de 小説


「よい子のみんなー。
たいへんお待たせしましたー

これからみなさんで
呼んでみましょう。

『ミヒャエルおにいさーん』と
お姉さんがいいますので

そのあと続いて呼んでくださーい。

はい!
せーの!

ミヒャエルおにいさーん!」


「ミヒャエルおにいさーん!!」

とボクは100人くらいの
ちびっこたちに呼ばれた。

時の人。
ミヒャエルお兄さんの出番が
やってきた。

無垢な天才たちからの
質問は忖度ない。

より科学を追求した
鋭いものだった。

亜空間はなにいろですか?
タイムパトロールはいますか?
昔のフランス料理をたべましたか?
ドラえもんに会いましたか?

などだ。
そうか、あの青いぬいぐるみは
ドラえもんというキャラクターだった
のか。

かわいらしい天才たちに
囲まれ、1時間ほどの
有意義な時間を過ごした。

真実への追及、という
科学者が持っていなければ
ならない素質を子供たちは
全て兼ね備えていた。

だが、その中で気になる質問を
投げかける子供がいた。

「ナチス党の存在をそもそも
なかったことにできなかったのか?」

これは子供のする質問ではない。
意地の悪い大人に言わされての
事だろう。

ピリッとした空気が
立ち込めたがやんわりと
その質問にはやり過ごす
ようにした。

それに返答してしまうことの
リスクを、子供にそそのかした
大人はきっと知らない。

でも、でもだ。
世界中の興味が一身に
注がれる理由は、かえって
人々の不安を掻き立てる
側面もあるのだろう。

ボクが一番記憶に残る
子どもがいた。

たしか
Takumu Yaida

という子だった。
その子の質問は
こうだった。

『亜空間がもし
壊れちゃったら
お兄さんは戻って
これないの?

だったらずっとそこで
過ごさなきゃいけないの?』

という内容だった。

「Ich Nicht Kenne.
Bitte・・・
(わかんないや、ごめんね)」

という、答えを曖昧なまま
やり過ごそした。

「もし、そうなったら
助けに来てね」とだけ
伝えてこの子供たちの質疑を
終えた。


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08が時計を指すゼスチャーを
して、司会者に終わるように指示した。

とても楽しかった子供たちとの語らい。

この時、「きたる未来」で
その時、「さかのぼる過去」に
命を助けられることになろうとは
思いもしなかったのだが

」とは不思議なものである。
この時、確かにこの「」は
つながったのだ。

今後の日程が、子供たちから
大人たちへとシフトが変わる。

よりシビアで、利害関係が
より明確な記者会見という
地獄が待っているだろう。

明日の晩餐会後にそれを迎える。
各国首脳が続々と到着し始める
明日の懇談会に合わせて
やってくるのだ。

ボクが
Dimentionz社代表で
スピーチと質疑応答を
しなければならない。

ーーーーーーーーー

子供達との語らいの後、ボクは
Dimentionz社のツアーの一環で
青峯山正福寺を訪れた。

その昔、2016年に
時のカナダ首相トルドー氏が
お忍びで訪問し話題になった
場所と記憶している。

なぜDimentionz社が
このツアーを企画したのかは
そのときは分かっていなかった。


ボクは同行する一行のなかにいる
08に今回のこの寺院の訪問の意図を
聞いた。

「さぁ、よくわかりませんねぇ

でもハーバー博士から、ぜひ
あなたをここにお連れするように
とのことだったので。

それにここなら護衛するのに
申し分ないですね。

周囲を林に囲まれてはいますが
真っ正面に海があるんですから」

そうか、ハーバー博士の・・

なにか深い意図があるのだろうか?

ボクはこの寺の住職と
挨拶を済ませて
しばし本堂の見学をしたり
座禅を組ませてもらったり、と
本当の東洋の和のテイストを
味わった。

標高336mに建つこの寺院は
外界との接触を全て絶っていた。

アンビエント。

とでもいうのだろうか。

これはボクが先行する
精神医学に近いなにかを
感じざるを得ない。

東洋で生まれた禅の思想である
瞑想が西洋文化と出会い
「マインドフルネス」
として広くビジネスや政治
に採用され浸透されて久しい。

大昔の2013年からアメリカ合衆国
主体ではじめられた

BRAIN構想

によって、重度のうつや神経疾患を
抱える患者さんへの治療の
一貫としてこのマインドフルネス瞑想が
取り上げられたのだった。

そう、抗うつ剤や薬物依存性のある
薬に変わっての療法だ。

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ぼくはまだ勉強段階であり
論文を発表するまでには
至っていないものの、いちおう
その道を知っているものの一人である。

ここはありがたく
本家、ヤーパンの寺院で
マインドフルネスを堪能しても
いいのでは、という考えだった。

「オリバー様、どうじゃね?

この山奥の寺においでなすってのぉ

気に入っていただけましたかね?」

ヤパーニッシュの通訳を介して
住職とのしばしの語らいだった。

「ええ。Vielen Dank
(ありがとうございます)

とても気に入りました。

庭がとてもきれいですね。

いたく気に入りました。
ありがとうございます」

「ところでオリバー様。

オリバー様は時空を超越して
またこの世界に帰ってこられた。

それはそれは
阿弥陀さまのような
行いをなさったのじゃな。

ご存じか?

阿弥陀の本願という
言葉がござってな。

阿弥陀さまは神様より
上に後鎮座なさる

それはそれは
偉い神様じゃて。

その阿弥陀さまの
願いが48種類ござる。

そのなかの18番目が
阿弥陀さまの本当の願い
なそうな。

18番を「オハコ」と
いいましてな。

それだけは絶対不可欠な
ものなそうな。

それは

すべて。
悪人であろうが
善人であろうが
すべてを救済すること。

これじゃて。

阿弥陀さまのお力を
お持ちのオリバー様に
それができますかいね?

精進なされよ」

「え・・いや
そんな・・

自信ないな。

あと、あの庭の石。

あれはまるで・・」

「鯨じゃて。

むかしこの大海原から
本尊の11面菩薩さまが
ここに鯨に乗っておいでならさって
この庭にある池の石になんなさったん
じゃて。

オリバー様。
あなたと一緒じゃて。

時空を越えて
この薄汚い山寺に
おいでになった。

ありがたいことじゃて」


ボクは神なんかではない。
ただDimentionZ社に選抜され
Zeitmaschineに乗り込んだだけの
医学生に過ぎない。

こんな極東のこんな寺院に来て
ボクは神格化されてしまうとは
思いもしなかった。

それにしても
ここ青峯山正福寺の
訪問でボクの心に
なにか素晴らしい変化が
到来しようとしていた。


善人だけでなく
悪人をも救済する神

AMIDA-NYORAI

神の上に鎮座する
神の中の神。

阿弥陀の本願。

ボクにしか出来ない
ことをしたい。

それが救済なのだ。

全人類を救済する
手だてを打ちたい、と
思い始めた。

それと同様に
いささかの暗黒も
心のなかに
生まれはじめていたのも
事実だった。

https://note.com/connie1160_/n/ne92f9f399316

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つづきます。

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