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7年間一度も登校していないルカ。その3


前のお話

ルカと私の学校に行けていないのに、行事だけに参加するという所に焦点を当てたお話です。


中3になったルカと、教師2年目の私。

中学校生活が最後だあと始業式でぼやく中3達。

これから全てが中学最後となっていく。

大きなイベントは修学旅行と進路決定と卒業式。

そんな話をしている生徒を見ていて、ルカはどう思っているのだろうと顔が浮かびました。

中3になったからと、特別なことはせず、いつも通りルカと公園で会いました。

学年が上がっただけで急に何かが変わるものではないと、ルカが教えてくれました。

私は教師2年目。新任だからとは言われないプレッシャーが形になって見えるようでした。


修学旅行のハードル。

中3の5月。いきなりの修学旅行。

ルカに予定を伝えましたが、修学旅行には興味を示さず。

しかし、学年の教員からは、ルカに来てもらえるようにがんばれとプレッシャーを毎日かけられました。

それがしんどかったけど、ルカの意思を尊重しようと決めました。

もう一度どうしたいか聞いたら行かないとの事だったので、それを学年主任と管理職に伝えてこれ以上は本人に聞きませんと言い切りました。

それ以降の中学校最後のものも全てルカは参加しませんでした。

ルカは現在でも後悔していないので、それで良かったのです。

思い出は本人のものなので、周りが決めることはないのです。


進路。進路。進路。

中3も中盤を過ぎると、「進路」という言葉を毎日何度も聞くようになりました。

ルカも進路決定を迫られるわけです。

そして、ルカに志望校の話をする日が来ました。

すると、

「デザイン系の専門学校で決めてます。」

と、即答されました。

気が抜けました。

なんと、クラスの中で一番に志望校を決めたのでした。

正直心配はなかったです。本人と母親でたくさん話した結果だったので、応援するだけでした。

それからルカは、家で作文と国数英の勉強を始めるのでした。


合格発表で始めて見るルカの姿。

年明けすぐにルカの試験の結果が出ました。

合格でした。

なんと、国語と英語はほぼ満点でした。学校に行かずして、自分の力でつかんだ結果でした。

そして、その日の放課後。

なんと、ルカが標準服を着て学校にやってきたのです。

母親と一緒に来たルカは以前とは違い、母の前に立ち、真っすぐ前を見ていました。

これが成長かと教師の醍醐味をこの時に知りました。

ルカと母親は私にお礼を言いに来てくれたのでした。

特に勉強を教えたわけでもないのですが、そのお礼を何も言わず受け取ろうと思いました。

ルカたちが帰った後、職員室が大騒ぎだったのは言うまでもないです。


卒業式は雨でした。

いよいよ最後の最後。

ルカとの2年間がこれで終わりです。

ルカは卒業式に参加しませんでした。

やっぱりこれも本人は後悔していないのでそれでいいと思います。

けれど、校長室での卒業証書授与には来ました。

無事卒業です。

正門まで見送りに行く事はしませんでした。校長室の前でさよならをしました。

それがルカだったからです。

そして、靴を履き終えたルカは、

「またね、先生。」

と、言って廊下を歩いていきました。

これが中学生のルカとの最後でした。

そして、ルカは2週間後に専門学生になり、現在は専門学校で学んだことを活かした職業についています。

恐らくだれも、ルカが学校に行ってなかった時期があるなんて思わないと思います。

全てが糧になり、大人になる。心は必ず成長していく。だから、必ず変化が起こります。私やルカがそうだったように。



自分の決断に後悔しないように

私やルカの場合、行事に参加しなかったことに後悔したことはありません。

少しも参加したいと思わなかったからです。

しかし、迷っている場合はどうでしょうか。

後悔する可能性があります。

その場合は考える必要があると思います。

どうしたいのかと掘り下げて自分の本心を再確認してもらうのが良いです。

いずれにせよ、思い出はその人自身のものです。後悔しようがなんだろうが、強制するのは良くないです。

後悔したときの責任転嫁の原因になり、自分の選択を振り返らないようになります。

自分で考えれる年齢ではないのであれば、たくさんの選択肢を用意して、そこから選んでもらうのも良いと思います。

中学生のルカに気づかせてもらえたこと。

「自分で選択することの重要性」

です。

それは、私とルカの共通点です。


これでルカのお話は終わりです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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