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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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#検証

サステナ担当悩みどころ(2 )

サス担の方々が、日々の実務の中で直面するお悩み事、様々ありますよね。 前回単発で書いたところ、また、色々と質問を受けました。 なので、時折ご案内していこうと思います。 2回目の今回は、「検証を受けるときのデータ」についてです。 SSBJが日本版S1・S2の確定基準を今年度末までに公表することに加え、金融庁が、有価証券報告書において、財務情報と併せてサスティナビリティ関連情報についても開示義務化を目指しているなど、開示周りが俄然盛り上がっているのは、ご案内の通り。 自主開

審査?検証?どうちがうの?

審査(Audit)と検証(Verification)に違いを認識して使い分けている人は、どれくらいいるのでしょうか。ISOの方が歴史がないため「審査」の方が馴染みがあり、GHG排出量においても、同じように使っている人が大半だと思います。 質問されることも多くなってきましたので、簡単に説明しておきますね。 最初に、ISOは「審査」であり、GHG排出量は「検証」と称呼することを抑えておいて下さい。 区別・整理の仕方は様々ですが、個人的には以下のように考えています。 ちがい 

カーボンプライシングとGX戦略(8)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、8回目です。 7回目では、行動を起こす動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットについて、「ゼロ→プラス」側面。「見える価値」「見えにくい価値」両方の可能性のある取組についてご案内したところです。 今回は、前回ご案内した、吸収・除去系クレジットの種類について、紹介していきたいと思います。 そもそも、どのような種類のクレジットがあるかというと、経

第三者検証〜はじめの一歩(10)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」10回目。 9回目からは、現地検証、オンサイトレビューの説明に入っています。 以下の流れで進めており、会議室で実施するステップまで終わりました。 続いてはようやく、オンサイトレビューの核心、「現地確認」です。 報告書にある「排出源」「モニタリングポイント」が実際に存在するのか、記載漏れがないか、説明されたような手順が現場で運用されているのか、裏付けを取る作業にな

第三者検証〜はじめの一歩(9)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」9回目。 8回目では、リスクアプローチ及び戦略分析から、計画書を作成しデスクレビューを行うところまで紹介しました。 9回目は、ようやく、現地検証、オンサイトレビューに入っていきます。 流れはこのようになります。 「オープニングミーティング」では、検証チームの紹介や検証業務の概要説明、スケジュール確認、その他注意事項等の確認を行います。 現地検証は複数箇所で行う

第三者検証〜はじめの一歩(8)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」8回目。 7回目では、契約を交わした検証機関が実際行う作業についてご案内しました。具体的には、現地検証に至るまでに、「事前調査」と「デスクレビュー」を行うのでした。 最初のステップでは、検証に必要な資料を受審する企業から提出頂くのですが、それに当たっては、繰り返しご案内している、下記原則をに留意しつつ準備をして下さいね、とお話ししました。 さて、ここに来てようや

第三者検証〜はじめの一歩(7)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」7回目。 6回目では、検証を受けるに当たって、受審企業が準備をしておく必要があることについてご説明しました。 「ISO14065」の認定を受けた検証機関についてご案内しました。ISO9001(QMS)やISO14001(EMS)のようなマネジメントシステムの審査機関と同様に、JABの認定を受けて「検証業務」を行う機関のことでした。 お待たせしました。 今回は、

第三者検証〜はじめの一歩(5)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」5回目。 4回目では、依頼する検証機関との合意内容についてお話ししました。 今回は、検証を受けるに当たって、どのような準備をしておく必要があるかについて見ていきたいと思います。 具体的には、次のようなフローになります。 実は、前回の話は、「検証機関」側から見た検証プロセスのスタートについて見てきたのでした。ただ、広義で「検証」を捉えると、受審する企業としては、

第三者検証〜はじめの一歩(4)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」4回目。 3回目では、算定の「基本5原則」をご案内しました。 これを踏まえた算定を行っていることを前提に、受審企業と交わした「保証水準」の契約に基づき、以下の何れかの意見表明を行うのでした。 覚えていらっしゃいますか? 今回から、審査の流れに沿って、具体的にご案内していきたいと思います。 検証プロセスは、このように、事業者と検証内容についての合意することから始

第三者検証〜はじめの一歩(3)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」3回目。 2回目では、とにかく、覚えておいてもらいたい要諦をお伝えしました。 言葉にしてみると簡単で、当たり前のように思えますよね。 ただ「当たり前を当たり前に」がどれほど難しいか。 後になって気づくよりも、先に気づいておきましょう。 さて、3回目は、算定の「基本5原則」です。 検証業務は、「二重責任の原則」の下、事業者と検証機関の共同作業と、前回お伝えしまし

第三者検証〜はじめの一歩(2)

温室効果ガス排出量の算定結果に対する第三者検証を初めて受けることになった担当者を想定した「はじめの一歩」2回目。 1回目は、導入の導入で終わってしまいました さて、系統立てて学んだ方がよいのは当然ですが、まずは、結論から。 この3点を、座右の銘にしておいて下さい。 第三者検証とは、被検証組織(算定を実施する企業)が算定した結果を、独立した第三者がチェックすることです。 これにより、被検証組織は、自社が行った算定方法や結果に誤りが無いことが保証され、算定結果を利用するス

第三者検証〜はじめの一歩(1)

情報開示の道も一歩から。 気候変動で言うと、その一歩は算定でしょう。 ということで、これまで算定方法については、スコープ1・2からスコープ3、カテゴリ別にもご案内してきたところ。 また、実務をやり始めたからこそ気づく、更なるクエスチョンも、出題編と解答編に分けて、説明も行ったりしました。 算定を終えれば、いよいよ「公開」「開示」となる訳ですが、ここで「算定」の目的を考えてみましょう。 繰り返しお伝えしているのは、算定はまさに「はじめの一歩」であり、算定で「見える化」す

GHG排出量の検証について

2月10日に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されたことを受け、嫌がおうにも盛り上がりを見せています。今国会に提出される法案は、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の促進に関する法律案(GX推進法)という、とても覚えられない名称ですね。 排出量算定支援に携わる人間としては、その中でも、GX-ETSが一番関心が高いところでしょう。算定はもちろんのこと、算定結果について要求される「第三者検証」についても気になるのではないでしょうか まずは、さらっとおさらいしていきましょう。

CBAM in motion(4)

2023年10月より導入が事実上確定したEUの炭素国境調整措置(CBAM)について、EY新日本有限責任監査法人が開催したウェビナーの資料を用いながら、内容について見ています。 1回目では概略の説明をしまました。 2回目は、「輸出業務が変わる」ことをお伝えしました。 3回目は、「検証業務が変わる」ことについて考察しました。 4回目は、どのようなビジネスチャンスがあるか、考えて見たいと思います。 CBAM関連業務は、大きく分けて5つあると考えます。 1.CBAM対象品の特定