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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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2022年6月の記事一覧

SHK制度における排出係数の調整について

省エネ法及び温対法の報告期限が7月末に迫る中、担当部署はデーター収集及び整理に多忙な毎日ではないでしょうか。 義務化されている、毎年1%の原単位削減も達成できているか否か、集計してみて初めて判明する現実もあることでしょう。 SHK制度は国内法に基づいて実施され、国内のエネルギー使用量及び排出量を削減することを目的としていることから、以下のカーボン・クレジット等を用いて「調整後排出量の調整」を行うことができます。 国内認証排出削減量 ・国内クレジット ・J-VER ・J-

検証の実際〜その6

現地検証の実際、5回目。 ようやく、クロージングミーティングに辿り着きます。 前回まではこちら 算定担当の方と発見事項をお互いに確認する作業に入ります。ここはしっかり合意しておく必要があります。「発見事項確認書」などの書面に、サインを頂くことが多いです。 まぁ、一緒に廻っていますので、意見が食い違うことはあまりありませんが、契約に従って実施していますので、必要な手続きです。 午前中に依頼したエビデンスがここで用意できていれば、ラッキーですね。修正事項については、後日と

空港カーボン認証のすすめ

ある空港から、クレジットの発注がありました。 Airport Carbon Accreditationに適用できるクレジットを調達したいと。 エアラインのCORSIAは知っていましたが、空港の方は初めてでしたので、調べてみました。 Airport Carbon Accreditation(空港カーボン認証)とは、国際空港評議会(ACI:Airports Council International)が2009年からスタートさせた空港のCO2排出を管理、削減する取組みを評価し、

検証の実際〜その5

現地検証の実際、4回目。 午前の流れを紹介した前回に引き続き、今回は午後の紹介です。 前回はこちら。 工場を見せてもらうに当たっては、検証側は非常に気を遣います。 立入禁止区域があったり、服装・手順が決まっていたり、機密保持上の制限があったり。特に、食品工場は大変ですね。キャップ・マスク・防護服の上、手洗い、消毒、エアシャワーは当然として、筆記用具の持ち込みも不可だったり。 最近は、スマホNGの事業所も多いです。一方、デジカメはOKだったりします。「撮影している」という

検証の実際〜その4

現地検証の実際、3回目。 前回はこちら 今回は、冒頭からの流れを見てみます。 スケジュールは、こんな感じです。 1.オープニングミーティング 2.デスクレビュー 3.現地ウォークスルー 4.発見事項取りまとめ 5.クロージングミーティング 1では、検証の目的や検証規準、検証方法、検証チーム等の説明をします。 このオープニングには、算定プロジェクトの責任者、担当者の出席でよいです。ISOの審査のように、トップマネジメントの出席は必要有りません。インタビューをするわけ

再度「合目的的」に考えてみた(2)

「合目的的」と言う言葉が妙に納得させるワードなので、果たして、これで説明していていいものか、という不安になる方もいらっしゃるかも。 と自分自身不安に思ったので、払拭するお話をしてみたいと思います。 前回はこちら。 スコープ3基準の第4章「算定と報告の原則」には「スコープ3インベントリーのGHG算定と報告は以下の原則に基づく必要がある。」とあります。 その原則とは、以下の5つです。 ちょっと難しいので、簡単に言うと、 関連性:公開されるデータは、ステークホルダーの意思決

再度「合目的的」に考えてみた(1)

先日、排出係数の扱いについて説明しました。 「排出係数の更新はどのようにすべきか」というFAQに対して、CDPの目的に着目し、「合目的的に判断しましょう」という話です。 今回は、もう少し突っ込んで、特に皆さんの関心の高いスコープ3について、考えていきたいと思います。 ここで、スコープ3の目的を考えましょう。 企業が自社の事業活動が、手の届かない範囲において排出にどの程度影響を及ぼすかを把握し、また自社の活動の変化により上流/下流においてどのような変化をするかを推測する

検証の実際〜その3

前回のnoteで「最初に言っておきたいことが、2点あります」 として、以下を挙げておりました。 1.担当者への周知徹底 2.エビデンスの準備 1は説明しましたので、今回は「2.エビデンスの準備」について、現役の検証人として、アドバイスさせて頂きたいと思います。 「エビデンス」「証憑類」と言われると、難しく捉える方もいらっしゃるかもしれません。こんな言葉を使うが故に、とっつきにくいイメージを持たれることもあったりしますね。 簡単に言うと、計画書や算定結果に使用されている

排出係数は最新に更新すべきなの?

CDP回答絡みで、もう少し。 算定を毎年継続していると、どんどんスキルが上がってきますよね。 データ収集の粒度が細かくなったり、カバーする範囲が拡がったり。 それに併せて、使用する原単位も、産業連関表ベースの粗い2次データから、より現状に即した2次データへ、さらには、サプライヤーとの協力により1次デーが得られるようになったカテゴリーもあるかもしれません。 となると湧いてくるのが、この疑問。 過去の排出量に関しても、排出係数を更新すべきなのか。 基準年の排出量を元に、短

スコープ1・2と温対法報告の違い

温対法の報告は7月末まで。CDPの回答は7月27日まで。 担当部署の方は、集計・算定真っ盛りではないでしょうか。 いずれもWEB上で提出できますから、以前よりは楽になったとは言え、CDPは今年からという方も多いでしょうから、大変なことには変わりないかも。 さて、実務を行っていると、次々に現れる「???」 実際、私の所にも矢継ぎ早に問い合わせメールが届きます。 すぐに回答できるものもありますが、後日ということも普通にあります。 ファクトを抑えておかないと、自信持ってお応えでき

排出量算定〜スコープ3 カテゴリー2

カテゴリー2は「資本財」 つまり、財務会計上「固定資産」として扱われているものです。 ですので概念としては分かりやすいのですが、いざ算定しようとすると分かりにくいのが、このカテゴリーの特徴ではないでしょうか。 算定に着手したばかりの企業であれば、このカテゴリーは、最初は「ざっくり」かなり「ざっくり」捉える程度でよいと思います。 ・カテゴリー1と重複するところがあるため仕訳に悩む ・複数の事業者が関与する場合が多い(建築物や製造ラインなど) ・導入や建築が長期にわたる場合

検証の実際〜その2

前回は、検証の流れをご紹介しました。 今回は、特に現地検証(サイトレビュー)についてご案内したいと思います。 一番気になりますよね。 ISOの審査を経験なさった方は多いかと思います。 形式的にはほぼ同じと考えてもらってOK オープニングがあって、インタビュー、マニュアルやエビデンスの確認などを行った後、現地を見て回るサイトビジット、戻ってきて審査員同士での内部ミーティング、クロージング、という流れです。 さて、最初に言っておきたいことが、2点あります。 1.担当者へ

検証の実際〜その1

CDP質問書への回答や、SBTiの目標設定、TCFDに基づいた情報公開等、バリューチェーン排出量算定結果を多方面で利用することが多くなりました。 その際、Mustでは無いものの、ほぼMustとなっているのが、第三者検証。 一体、どのように「検証」されるのか、不安になりますよね。 ISOの審査を想像される方も多いかと思いますが、ほぼその認識でOKです。 算定結果の検証も、 1.算定がISO14064-1(組織の排出量)に従って行われているかを 2.JABからISO1406