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気候変動も生物多様性も〜持続可能な世界を目指そう

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双子の条約と言われる、「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」だけど、後者はどうしても分かりにくいですね。でも、持続可能な世界の実現には、避けては通れません。どちらも一緒に学んで…
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Verraの「Scope3 Standard Program」に期待(3)

CDPとBCGによる、23年のCDP質問書回答を分析したレポート「Scope3 Upstream: Big Challenges, Simple Remedies」で明らかになった、スコープ3排出量算定の課題について、2回に亘ってお届けしています。 前回はこちら。 今回は、その課題に対し、Verraが「Scope 3 Standard Program」を推進しているのですが、その効果について話をしていきたいと思います。 「Scope 3 Standard Program

CORSIA シナリオ分析からの洞察

以前のnoteで、CORSIA向けの保険が 2.は「CORSIA」対応の保険です。 CORSIAは「(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」の略称です。これは、国際民間航空機関(ICAO)が主導する国際的な取り組みで、エアラインに対し、一定基準を超える排出量をオフセットすることを求めています。 このCORSIAで使用できるクレジットは、フェーズ毎に申請して認証を受ける必要があ

中小企業の脱炭素経営状況は?

日本商工会議所と東京商工会議所が共同で「中小企業の省エネ・ 脱炭素に関する実態調査」を実施し、レポートを公開しておりました。 個人でコンサルしておりますので、非常に助かります。 検証人としては「エビデンスに基づいて」と呪文のように唱えておきながら、他方では何の根拠も無く現状を論じることはできませんから。 で、内容はというと「想定内」でした。 が、それを確認することも重要。 検証時「少量なので算定対象外にした」との説明を受けることも多いのですが、「少量の定義(例えば全体の

排出削減は具体的成果を求めるフェーズへ

Googleは、2024年7月5日に2024年環境報告書をリリースしました。 報告書では、Googleの二酸化炭素排出量が2019年から48%増加していることなど、同社の環境への影響と取り組みについて詳しく説明。データセンターの電力効率が業界平均の1.8倍であることや、AI処理チップ「Trillium」の開発など、積極的な対策も紹介されていました。 ですがサス担としては、日経GXが紹介していた点ではないでしょうか。 (GX会員でないと閲覧できません。申し訳ありません。)

世界銀行のCPレポート 斜め読み(2)

世界銀行(世銀)が毎年リリースしている、「カーボン・プライシング・レポート」の2024年版が公開されたので、その内容を簡単にご紹介。 1回目は、導入で終わってしまいましたので、今回は、内容を具体的に説明していきたいと思います。 まずは、導入されている国・地域についてみてみましょう。 ICAPのレポートと同様、マップで示されていると分かりやすいですね。 世界では、75の炭素税及び排出権取引(ETS)が実運用されており、過去12ヶ月で2国・地域増加しています。この地図を見て

世界銀行のCPレポート 斜め読み(1)

世界銀行(世銀)は、こちらのダッシュボードを通じて、世界のカーボン・プライシング(CP)の情報を発信しています。 説明をしておくと、CPには次の3つの種類に区分されます。 排出量取引(Emisssion Trading Scheme:ETS)のみであれば、ICAP(International Carbon Action Partnership)も重要な情報源です。 導入されている国・地域がマップやリストで示されますし、排出権価格(Allowance Price)のチャー

米国から目が離せない?!

4月9日、SBTiによるスコープ3削減に当たってクレジットの利用を認める旨の声明を発端として、サステナ界隈がざわつき始めたのは、皆さんご承知の通りでしょう。 実際問い合わせも多く、取り急ぎ、個人的な見解をご案内しました。 もしご覧になっておられないようでしたら、是非。 これに至る伏線は複数あり、さほど驚きではありませんでしたが、やはり、足元で起きている現象を俯瞰して、今何が起きているかを把握する「Insight」と、これらを解釈して将来何が起こりそうかを予測する「Fore

クレジットがお店に並び始めた?!

クレジットについては繰り返しご案内しているところですが、そもそも論として、次の欠点がありました。 あくまでも私の見解なのですが、こんな「商品」誰が買うのでしょうか? もちろん、J-クレジットを扱うプロバイダーやコンサルも複数存在していますし、私も利活用をご案内していましたが、やはり相対での取引となってしまい、「気軽に」購入できるものではなかったというのが現実です。 なので、はっきり言って、これまでは商品性(?)を十分に理解している「プロ」のみぞ扱う「商品」だったと言えま

ブルーカーボンのおさらい(3)

皆さんの関心が高まってきたことを受けて、改めてブルーカーボンについて、簡単なおさらいをしております。 1回目は、ブルーカーボンの定義についてお話ししました。 2回目は、ブルーカーボンを取り巻く情勢について。 3回目の今回は、ブルーカーボンの登録・認証スキームである「Jブルークレジット」についてご案内していきます。 「Jブルークレジット」とは、パリ協定の発効に伴い、いわゆるブルーカーボン生態系のCO2吸収源としての役割その他の沿岸域・海洋における気候変動緩和と気候変動適

2023年のVCMを振り返ってみよう(3)

cCarbonのレビューを拝借して、2023年のVCMについて振り返って見るシリーズも3回目。2回目はクレジットの多様性について説明しました。 この4年を見るだけでも、方法論やプレーヤー、使用しているクレジットスキームなど、多様になっていることが、分かってきました。 今回は、発行量の時期的な移り変わりを、一緒に見ていきましょう。 1回目に、償却量(retirement)について見たときに、季節性を考慮しても、12月が突出して多かったことをお伝えしました。他方、発行量(is

2023年のVCMを振り返ってみよう(2)

cCarbonが、2023年のVCMについて分かりやすくレビューをしてくれていました。ですので、それを参照しつつ、個人的なコメントも織り交ぜて、お届けしております。 前回は、カーボン・クレジットの償却量(二度と使えなくする処理で、利用量と考えてもらってよいです)について説明しました。今回は、その種類と発行量について見ていきたいと思います。 方法論毎の発行量がこちら。 2020年から2023年までの4年間という短い期間ですが、再エネ導入からREDD+、そして高効率機器への

ISO14068−1を深掘りしてみた(2)

COP28が始まってすぐの11月30日、GHG算定担当者お待ちかねの、「ISO14068−1 Carbon neutrality」がリリースされました。 それを受けて、第一報をお届け。 引き続き、内容について読み込んでいます。 1回目では、「3.1 Terms related to carbon neutrality」の「3.1.1 carbon neutral」に注目、詳しく読んでいたところ、3.1.1 本文のみだと、吸収除去系(removal)だけでなく削減回避系(

頼もしい、佐賀の仲間~SAGA COLLECTIVE

佐賀を拠点に環境のコンサルティング、とりわけクレジットの利活用を通じた地域活性化に注力してきました。2009年の国内クレジット立ち上げ当初から関わり、県のクレジット創生も支援しましたし、J-VERの販売協力や、県内企業の脱炭素のお手伝いも行ってきました。 名刺も「多良岳・有明海の海」間伐促進プロジェクトのクレジットでオフセットするなど地域密着で活動していたつもりですが、灯台もと暗し。 佐賀に根ざした事業活動を行っている、11の事業者が「SAGA COLLECTIVE」とい

価値基準は、金銭価値から環境価値へ

クレジットが創成されるためには、計画書(PDD:Project Design Document)を作成して実施するだけではダメで、実施した後に検証を受けなければなりません。計画書が登録される際には第三者検証機関による「有効化審査」を受けますが、必ずしも、実施後にクレジットが発行されるとは限りません。 ただ、これでは、実施した後、実績確認を行って検証を受け、めでたくクレジットが発行されてからしか販売できません。プロジェクト実施中は収入が見込めないため、特に初回の場合はこの期間