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気候変動も生物多様性も〜持続可能な世界を目指そう

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双子の条約と言われる、「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」だけど、後者はどうしても分かりにくいですね。でも、持続可能な世界の実現には、避けては通れません。どちらも一緒に学んで…
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記事一覧

EU-ETSのこれまでとこれから(2)

ETSの草分け的存在、EU-ETSについて振り返りをしております。 前回は「これまで」をお届けしました。 今回は「これから」とその先を考えてみたいと思います。 開始からの20年間で、対象範囲は段階的に広げられてきました。当初は電力とエネルギー産業が主な対象でしたが、2012年からは域内航空、2021年の第4フェーズからはアルミ、セメント、化学品などの産業に範囲が及ぶようになり、現在の制度のカバー率は、EU全体の排出量の約40%に達しています。 今後、更なる対象拡大と制

世界銀行のCPレポート 斜め読み(2)

世界銀行(世銀)が毎年リリースしている、「カーボン・プライシング・レポート」の2024年版が公開されたので、その内容を簡単にご紹介。 1回目は、導入で終わってしまいましたので、今回は、内容を具体的に説明していきたいと思います。 まずは、導入されている国・地域についてみてみましょう。 ICAPのレポートと同様、マップで示されていると分かりやすいですね。 世界では、75の炭素税及び排出権取引(ETS)が実運用されており、過去12ヶ月で2国・地域増加しています。この地図を見て

小坪ブルーカーボンPJ 着々

時折お届けしている、小坪ブルーカーボンPJの進捗状況。 前回は、生長している様子をお届けしました。 今回は、その収穫の様子を…と思っていたのですが、残念ながら、養殖場での収穫作業や収穫後の天日干し作業等々、都合がつかず参加叶わず。天候にも左右されるので、時期を合わせて九州からというのは、中々ハードルが高いことを痛感。やはり、移住すべきか?と悩むこの頃です。 前置きはこれくらいにして、今回は、ワカメの様子をお届けするのではありません。養殖は、11月末に種付けして、翌年2月

世界銀行のCPレポート 斜め読み(1)

世界銀行(世銀)は、こちらのダッシュボードを通じて、世界のカーボン・プライシング(CP)の情報を発信しています。 説明をしておくと、CPには次の3つの種類に区分されます。 排出量取引(Emisssion Trading Scheme:ETS)のみであれば、ICAP(International Carbon Action Partnership)も重要な情報源です。 導入されている国・地域がマップやリストで示されますし、排出権価格(Allowance Price)のチャー

CDRの真実 マイクロソフトとバイオ炭

IPCC第6次報告書(AR6)において、1.5℃削減経路達成のためには。二酸化炭素除去(CDR)が必要不可欠であることが明らかにされたことは、皆さんもよくご存知のことでしょう。 AR5とAR6の間、2018年10月にリリースされた「1.5℃特別報告書」において、すでにCDRの重要性については明記されていたので、驚くべきことではありませんでしたが。 これを機会に、CDRの創生や利用を検討し始めた企業も多かったものと推測しますが、マイクロソフトもそのような企業の一つでした。

EFRAGのアウトリーチ半端ない

EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group)ご存知ですか? 欧州委員会の支援を受けて設立された民間組織で、欧州連合における財務報告基準の策定と承認に重要な役割を担っています。 EFRAGは欧州委員会の依頼を受けて、専門的な知見に基づき様々な法令のドラフトを作成します。欧州委員会はこれらのドラフトを参考にしつつ、最終的な法令化を行います。 CSRDにおける開示ルールである「ESRS」も、依頼を受けて作成。 欧州委員会

お客様との約束を果たそう

SBTiによるスコープ3削減に当たってクレジットの利用を認める旨の声明を受けて頂いた質問は、主に2つあります。 「何の話?」と思われた方は、まず、こちらご覧下さい。 1つは、「何故今頃?」「何のために?」というそもそも論です。 これについては、私なりの見解をお届けしました。 もう1つは、「SBTiをやる意味があるのか」というもの。 この声明を受けて、「脱炭素の旗振り役が、その手を緩めるのか」のような批判や、それこそ、内部からのクーデター(?)もあったりと、端から見ると

自動車業界の事例を他山の石に

世間を賑わしている、自動車メーカーの型式指定申請における不正問題。 この問題に関する一連の報道は「メディアのメシの種」になったきらいがあり、個人的には首肯しかねるところ、「なるほど」と思わせる記事に遭遇しました。 どの点を「なるほど」と思ったかは記事を参照してもらうとして、サスティナビリティ情報開示業界としては、これを他山の石としたいですね。 今回の問題の背景にあるのは、次の3点だと思います。 規則の不備・不在を一番認識しているのは「現場」である「メーカー」であるとこ

米国から目が離せない?!

4月9日、SBTiによるスコープ3削減に当たってクレジットの利用を認める旨の声明を発端として、サステナ界隈がざわつき始めたのは、皆さんご承知の通りでしょう。 実際問い合わせも多く、取り急ぎ、個人的な見解をご案内しました。 もしご覧になっておられないようでしたら、是非。 これに至る伏線は複数あり、さほど驚きではありませんでしたが、やはり、足元で起きている現象を俯瞰して、今何が起きているかを把握する「Insight」と、これらを解釈して将来何が起こりそうかを予測する「Fore

クレジットがお店に並び始めた?!

クレジットについては繰り返しご案内しているところですが、そもそも論として、次の欠点がありました。 あくまでも私の見解なのですが、こんな「商品」誰が買うのでしょうか? もちろん、J-クレジットを扱うプロバイダーやコンサルも複数存在していますし、私も利活用をご案内していましたが、やはり相対での取引となってしまい、「気軽に」購入できるものではなかったというのが現実です。 なので、はっきり言って、これまでは商品性(?)を十分に理解している「プロ」のみぞ扱う「商品」だったと言えま

サスティナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG(第2回)

グローバルでホットな話題となっている「サスティナビリティ情報開示」 日本における、制度の枠組みを検討しているのが、金融庁。 「サスティナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG」です。 1年をかけて議論し結論を出すとして、3月に第1回が開催されました。 その議論を受けて5月14日、第2回が行われましたので、レジュメの内容を簡単に見ていきたいと思います。 内容に入る前に苦言を呈しておきたいのですが、会議の模様が、ライブでは公開されるものの、終了すると非公開となる点。アー

GXリーグ戦略?

GXリーグについては、noteで何度かご案内してきています。 賛同及び参画している立場から、「民間主導」で「2050年カーボンニュートラルと社会変革」を実現しようという取組には期待していました。 もちろん、今でも期待していますし、貢献しようと思っていますが、「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」に対するGXリーグの関与の仕方から、少しその立ち位置、役割について「?」となり始めていました。 そもそも、ETS

これから10年間コミットします

4月6日〜7日の1泊2日で、熊本県山都町で開催された、Present Tree 主催の植樹イベントに参加してきました。 同僚に誘われて、何をやっている団体なのか全然知らない状態での参加だったのですが、人生観が変わりました。これまで、10年以上森林吸収系クレジットに携わってきていながら、恥ずかしい限り。やっぱり、practitionerであるべきですね。 詳しくは、公式サイトを参照頂きたいのですが、ひと言で言うと、日本の森林の未来を照らすプラットフォーム、OSかな。 事業

ワカメは順調に生長中

ブルーカーボン第1弾として、小坪漁協のワカメの養殖プロジェクトを行うことを、昨年お伝えしていました。 場所は、日本随一のヨットハーバー、葉山マリーナのすぐお隣。 前回訪問時はヨットも多数出ており、入り込まれのではと心配しました。 昨年は種付けしてから1週間程度だったので、数センチ程度だったところ、1か月半経つと、1m以上まで成長していました。 2月半ばから収穫が始まりますが、一気に刈り取るのではなく大きく成長したものから順に間引いていくそうです。そうすることで、周りのワ