中小企業の脱炭素経営状況は?
日本商工会議所と東京商工会議所が共同で「中小企業の省エネ・ 脱炭素に関する実態調査」を実施し、レポートを公開しておりました。
個人でコンサルしておりますので、非常に助かります。
検証人としては「エビデンスに基づいて」と呪文のように唱えておきながら、他方では何の根拠も無く現状を論じることはできませんから。
で、内容はというと「想定内」でした。
が、それを確認することも重要。
検証時「少量なので算定対象外にした」との説明を受けることも多いのですが、「少量の定義(例えば全体の5%など)」と「少量であることの確認」が必要になります。これと同じです。
まずは、調査で重要な回答者の属性から。
業種は、建設・製造・卸売りで過半数を占めながらも、幅広く回答している模様。他方、従業員数では、100人以下が80%超であることから、中小企業でも、小企業側の声が反映されている結果が得られていると思います。
2ページ目には結果がまとめられていますが、個人的に知りたかったのは「脱炭素に対する取組状況と課題」。自分の理解との摺り合わせでした。
「エネルギー価格上昇による影響と対応状況」と「期待する脱炭素支援」は、経営コンサルのど真ん中の領域になりますので、その道のプロに分析、活用してもらいましょう。
この中で目を引いたのは、次の3点。
これを踏まえた上で、結果を見ていきましょう。
1.については、「電力・ガス会社」、「仕入先、受注・納入先」と続いています。J-クレジットでも一般的な、「営業ツール」としての活用ですね。
例えば、ハウスメーカーが太陽光発電付の住宅を販売し、顧客に代わってクレジット申請。それを自社で購入して、自社の間接排出量から控除する。
顧客にとってはイニシャルが下がるし、メーカーにとっては安価に再エネクレジットを購入できるしで、win-winなのです。
このような太陽光発電によるJ-クレジット創生は、プログラム型が一般的であり、毎年実績確認が必要になります。なので、定期的にお客様とコミュニケーションすることになるので、繋がり続けることができるという点でも、ハウスメーカーにとってはメリットが大きいんですねぇ。
現在は、算定支援を行う事業者が乱立しており、こちらも、脱炭素支援を謳ってきていますから、今後この順位がどのように変化するのか、ウォッチしておきたいところです。
次いで、2.について。こちらは、私がクレジットに携わって以来10年以上に亘って、ご案内している内容につながります。
両者を併せて過半数というのは想定以上でしたが、そのようなセンスを持った経営者が増えているのは嬉しい限り。「危機を機会に」が私のモットーですが、まさしく、それを実践しているとも言えるわけで、全力で応援していきたいです。
3.は、率直に結果を受け止めたいです。
個人的な感覚では「増えてきている」のですが、他方で、地域によっては「全く」というところもあり、「実際はどうなの」と思っていました。
この調査は、対象が47都道府県であり、回答企業数が2,139社とのことですので、1/4という数字は平均的なものと受け取って良さそうです。(もちろん、回答企業が47都道府県満遍なくではないかもしれませんし、WEB調査である点も考慮すべきかとは思いますが)
ただ、要請の内容を見てみると、いわゆる「エンゲージメント」の範疇。
SBTiでは、スコープ3の目標として「エンゲージメント」が許容されるのは、Near-termのみ。ネット・ゼロ基準では把握する割合も増えますし、具体的な削減目標が必要になりますので、「これから」です。
大企業でも、現段階でアプローチできているのはTier1までと聞きます。
今後、ネット・ゼロへの取り組みを加速させてくると思われるところ、「把握・測定」の数字が急増し、「要請はない」が激減すること必定。自身のコンサルティングにおいて、この数字を活用していきたいと思います。
ということで、「中小企業の省エネ・ 脱炭素に関する実態調査」を、ポイントを絞ってみてきましたが、いかがだったでしょうか。
このような調査は、いろんなところで実施されていますが、中々接することもなく、また、継続して実施するものも限られています。
今後も、自身のリアル体験も含めて、皆さんの実務に役立つ情報をお届けしていきますので、ご期待下さい。
また、逆に、「こんな調査実施しました」も大歓迎です。
「調査」は「調査」が目的でなく、「活用」して初めて活きるもの。
集合知を活かしながら、2030年の中間目標年に向かっていきましょう。
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