CORSIA シナリオ分析からの洞察
以前のnoteで、CORSIA向けの保険が
2.は「CORSIA」対応の保険です。
CORSIAは「(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」の略称です。これは、国際民間航空機関(ICAO)が主導する国際的な取り組みで、エアラインに対し、一定基準を超える排出量をオフセットすることを求めています。
このCORSIAで使用できるクレジットは、フェーズ毎に申請して認証を受ける必要がありますが(Eligible Emissions Units)、それに加えて、ホスト国による「相当調整(Corresponding Adjustment :CA )」がなされている必要があります。
しかしながら、CAを行われない場合も発生するのです。CORSIAは2027年から義務化されるので、当てにしていたクレジットが使用できないとなると、履行義務違反となってしまいます。
それを金銭的に保証するのが、「Corresponding Adjustment Protect」です。
ですが、CORSIAの現状を分析すると、これが「Protect」とは言えないのではないかとも思えてきます。何故そのように思えるのか、簡単に説明したいと思います。
CORSIAは昨年までの「Pilot phase」を終え、現在「First phase」に入っています。2027年からは「Second phase」になるのですが、「First phase」が自主的参加であるところ、「Second phase」は義務的参加となるところが決定的に違います。
現時点では、EEU(厳密には、EEUによるクレジット)は不足していますが、あまり問題ではありません。そもそも、First phaseは自主的ですし、このフェーズの未達分は、2027年1月末までにオフセットすればよく、まだ余裕があるからです。
AlliedOffsetsは、今後3年間の予測クレジット量で最大級の3カ国、インド、ブラジル、米国において、2024年から2027年の間に発行されると予想される累積量を計算し、利用できるクレジット量の予測を行ったそうです。
まず、「Present States」
現在購入可能な(「利用可能な」)EEUは、714万トンCO2e。
ICAOが無条件で承認しており、かつCAが得られているEEUです。
次いで、「No Changes in Approval」
現在の、ICAOの承認や、各国のCA付与状況に変更がない場合。
条件付き承認のEEUであれば、承認されること。CAを付与するとしているのであれば、付与されること、ということですね。
次の3つは、供給が制限されるシナリオです。
「India LoAs」
このシナリオでは、現在条件付きで承認されているVerraとGold Standardの両方がICAOから完全な承認を受け、インドが特定のプロジェクトの方法論にCAを与える場合。
「特定」の方法論にしか付与しないので制限を受けることになりますが、再エネ(太陽光と風力)、バイオガス、メタンのプロジェクトは、 NDCに利用しないとされているため、これらについてはCAは得られそうです。
「Brazil LoAs(no exclusions)」
このシナリオは、VerraとGold Standardの両方がICAOから完全な承認を受け、どの方法論も国際的な取引から除外されないことが前提だとか。(仔細分かりかねますが、そのような議論があるのでしょうか)
ブラジルの持続可能な開発のための経済人会議(CEBDS)の 報告書によると、ブラジルのNDC目標は超過達成されているとのことですから、CAを付与する(つまり、自国のNDCに利用しない)可能性は高いでしょうね。
最後は、「US Forestry」
米国が、現在First phaseのEEUとして承認されている全てのACRの林業プロジェクトへのCAは、不明と仮定するもの。 今後3年間の供給量は最大171.84 mtCO2eに達するとのことなので、影響力は大きいです。
AlliedOffsetsは、供給が制限される最初の2つのシナリオでは需要を満たすことはできない。 他方、第3のシナリオは供給に最もプラスの影響を与え、2025年以降、毎年4,200万クレジットを超えると予想されると分析しています。米国次第ということなのでしょうか。
これを踏まえると、そもそも、ある条件でなければ、CORSIAで必要とされるEEUという「現物」が市場に出て来ないということになります。「先物」が通用するか分かりませんが、いずれ現物で精算しなければなりません。
この意味で、「Corresponding Adjustment Protect」が「Protect」たり得ないのでは、と思った次第です。市場に存在しない「現物」を保険会社が調達して、顧客へ提供なんてできませんから。
ということで、まだ何も始まっていない段階から、色々と妄想してみましたが、ゲーム感覚でシミュレーションしておくことも、必要なのではないでしょうか。
2050年のネット・ゼロへ向けて、吸収除去系クレジットの青田買いが始まっているようなことも漏れ聞こえてきます。
「Be prepared」
「備えあれば憂いなし」
実践していきたいですね。
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