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国内外の法規をフォローしよう〜省エネ法と温対法は外せない

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毎年毎年改正される、数々の法規、法令。特に気になるのが、この2つ。些細なものから、収集するデータから変わってしまう大幅なものまで、様々ですね。さらに海外も...となれば手に負えま…
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2023年6月の記事一覧

EFRAG案からの修正点

欧州議会とEU理事会が、CSRD、昨年22年の11月、それぞれにおいて採択され、発効した旨はお伝え済み。 CSRDにおいて開示が要求される項目の詳細はESRSで定められ、欧州委員会から依頼を受けてEFRAGが草案を作成、2022年11月22日に欧州委員会へ提出され、審議がされていました。 ようやく委員会内での審議において、いくつかの修正が加えられて「委任法(DA)」がまとまり、パブコメにかけられていましたが、詳細は不明でした。 伝えられていたのは、修正のポイントで、以下

駆け引きは続くよ、どこまでも〜

欧州理事会は6月20日、2030年までにEUの陸地と海域の少なくとも20%を保護・回復し、2050年までに回復が必要なすべての地域を保護・回復するという要件を含む、広範な自然回復措置の確立について合意に達したと発表しました。 この内容に「???」となった人も多いのでは? というのも、2022年12月、カナダ・モントリオールで開かれた生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに陸域と海域の30%以上を保

カーボンプライシングとGX戦略(6)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、6回目です。 5回目では、行動を起こす動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットについて、「マイナス→ゼロ」、つまり、リスクを回避・低減できるという側面について説明しました。 今回は、「ゼロ→プラス」側面、つまり、やった方が得をしますよ、というお話です。これについては、「見える価値」と「見えにくい価値」の両面がありますが、最初に「見えにくい価値」

チラシよりもエブリデイ・ロープライス?

UKで、エネルギー会社の広告が事実に基づいて正確であるにもかかわらず、英国の規制当局によって禁止されるという状況が起きています。 やり玉に挙げられているのが、シェル、レプソルそしてペトロナスです。 シェルの例をご紹介しましょう。 英国の広告監視機関である広告基準局(ASA)が確認した事実は、ポスター広告(a):ポスター、広告(b):CM、そして広告(c):YouTubeビデオで、以下の内容だったそうです。 いかがでしょうか。 いずれも、事実に基づいて正確に表現してい

ESRSリリースへ向けて一歩前進(2)

欧州委員会が現在パブコメにかけている、EFRAGが作成し、委員会が修正を加えたESRSの委任法草案について、説明しています。 その修正のポイントは、下記の3点でした。 前回は、1.について説明しました。 今回は、2及び3について説明していきたいと思います。 「2.中小企業などの報告負担を軽減すること」は、至極当然。 前回もご案内したように、CSRDの前身のNFRDが定めた開示のガイドラインが法的拘束力を有しないものであったのに対し、ESRSは法的拘束力を持つ訳ですから

カーボンプライシングとGX戦略(5)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、5回目です。 4回目では、「将来の税負担をより軽減し、成長志向型カーボンプライシングの果実を得るために、いち早く脱炭素化に着手しましょう」というお話をしました。 今回は、「よし、やってやろう」という動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットをご案内したいと思います。 まずは、「マイナス→ゼロ」、つまり、リスクを回避・低減できるというベネフィット

EUタクソノミーから目を離すな

欧州委員会が「Sustainable finance package」を発表しました。 具体的な内容は、こちらです。 主な内容は、以下の3点。 1が重要です。 タクソノミーとは「分類法」といった意味の言葉で、EUのタクソノミーという文脈では、企業などによる経済活動のうちどのようなものが環境配慮と呼べるかを「分類」したものとなっています。 タクソノミーでは、以下の6つの環境保護目標を掲げています。 ここで、以下の4つの条件を満たした場合、タクソノミーに適合したグリー

ESRSリリースへ向けて一歩前進(1)

以前のnoteで、欧州議会とEU理事会が、2022年6月にCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive :企業サステナビリティ報告指令)について暫定合意、同年11月10日に欧州議会、11月28日にEU理事会でそれぞれ採択され、発効した旨をお伝えしていました。 CSRDにおいて開示が要求される項目の詳細は、EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group:欧州財務報告諮問グ

カーボンプライシングとGX戦略(4)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、4回目です。 3回目では、「やるコストよりやらないリスク」を考えましょうということをお伝えしました。 「やるコスト」はある程度予測できる一方、「やらないリスク」は計り知れない。だったら、「やるしかないでしょ」というお話でした。 今回は、物事の判断基準、企業の判断基準は、売上や収益といった「金銭価値」から、CO2に代表されるGHG排出量といった「環境価値」に

カーボンプライシングとGX戦略(3)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、3回目です。 2回目では、「カーボンプライシング」の定義と「GX戦略」の内容について、簡単にご説明しました。「成長志向型カーボンプライシング」のロードマップもざっとご案内したところです。 それを踏まえた上で、どのように活用していけばよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。 中小企業の経営者であれば事業に直結しますし、大企業のサス担当であれば経営戦略に環

カーボンプライシングとGX戦略(2)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、2回目です。 1回目は、こちら。 まずは、耳にタコかもしれませんが、定義のお話を。 「Emission Allowance」という「権利」を「取引(Trading)」するものなので、個人的には「排出量取引」ではなく「排出権取引」であるべきというスタンスですが、政府がこのように表現するので合わせておきます。ちなみに、「排出枠取引」と言っているメディアもありま

カーボンプライシングとGX戦略(1)

最近、とみに聞く言葉ですよね。 noteでは「カーボンプライシング」については何度となくお伝えしているところ、「GX戦略」は知っているけど、その実あまり理解できていない、そんな方もいらっしゃるかと思います。 かく言う私も、熟知している訳ではありませんが、関係については理解しているつもりです。簡単に言うと、「一度で二度美味しい」施策です。 個人的には、「やらないと損」どころではなく、「ダメージ」を受けるレベルだと考えています。なので、常々、このようにご案内しています。 そ

炭素国境調整措置 綱引きの現状把握

これまで、何度となく「CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism:炭素国境調整措置)」については、お届けしてきました。 簡単に言うと、EU域外からEU域内に輸入される対象6セクターの製品については、2023年10月から排出量の報告義務が発生しており、2026年1月から、排出量に応じた「CBAM証書」の購入が義務づけられます。 日本人感覚では、このように速やかに発効するのは不思議に思われるかもしれません。ましてや、EUという主権国家の集合