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チラシよりもエブリデイ・ロープライス?

UKで、エネルギー会社の広告が事実に基づいて正確であるにもかかわらず、英国の規制当局によって禁止されるという状況が起きています。

やり玉に挙げられているのが、シェル、レプソルそしてペトロナスです。

シェルの例をご紹介しましょう。

英国の広告監視機関である広告基準局(ASA)が確認した事実は、ポスター広告(a):ポスター、広告(b):CM、そして広告(c):YouTubeビデオで、以下の内容だったそうです。

広告(a)
2022年6月20日にブリストルで見かけたこの看板には、ブリストルの街並みに重ねて「BRISTOL is READY for Cleaner Energy」と大きく書かれていた。ポスターの下部には、"南西部では78,000の家庭がシェル・エナジーの100%再生可能エネルギーを使用しています "と書かれ、その上には "シェル・エナジーの再生可能エネルギー電力は系統の送電網を通じて供給され、同量の電力証書でオフセットされています "と小さく書かれていた。

広告(b)
2022年6月14日に放映されたこのテレビ広告は、「英国では、140万世帯がシェルの100%再生可能な電力を使用しています」と述べる男性が、幼い子供のサイクリングを手助けする場面から始まった。広告中、シーンの背景には "READY "の大きな文字が次々と現れた。映像の最後には、画面上に大きく "The UK is READY for Cleaner Energy "と表示され、シェルのロゴとハッシュタグ "#PoweringProgress "が続いた。

広告(c)
2022年6月9日にシェルのYouTubeチャンネルに投稿されたYouTubeビデオは、「The UK is READY For Cleaner Energy」と題され、そのキャプションには「電気自動車の充電からご家庭の再生可能エネルギー電力まで、シェルはお客様に低炭素の選択肢を提供し、英国のエネルギー転換を後押ししています。英国はよりクリーンなエネルギーへの準備が整っています。詳しくはhttps://go.shell.com/399dfw2。#PoweringProgress". 動画は広告(b)と同じだった。

いかがでしょうか。

いずれも、事実に基づいて正確に表現していると思いませんか?
まぁ、広告(a)で証書を使用している事実は、仕組みを知らない人にとっては「ウォッシュだ」と言われるかもしれませんが。

ちなみに、これ自体は、再エネ100%電力の調達方法として、RE100でも認められています。(細かい要件はあるのですが)

さて、この認定された事実についてASAが問題としているのは、次の2点。

1.シェルの事業が依然としてGHG排出に大きく寄与しているにもかかわらず、かなりの割合が低炭素製品で構成されているという印象を与える。

2.UKの政策を前面に打ち出すことにより、消費者が、クリーンエネルギーを提供できるシェルの能力についての主張であると解釈する可能性が高い。

これに対し、シェルも反論しており、一部は認められています。例えば、

「英国は、よりクリーンなエネルギーに対して準備が整っている」という主張は、シェルに関する明確な主張というよりも、「より環境破壊の少ないエネルギー源に対する英国全体の需要に関する前向きな声明」として意図されたものである。

石油・ガス部門を含む炭素集約型産業の多くの企業は、確かにGHG排出は多いものの、気候危機への対応として排出量の大幅な削減を目指している。

ですが、「広告には重要な情報が省略されており、誤解を招く可能性が高い」「広告が企業の活動全体のバランスの一部として、低炭素化への取り組みが果たしている、あるいは近い将来果たすであろう貢献を誤って伝えると、消費者に誤解を与える可能性が高い。」と一蹴されています。

「依然として化石燃料によるエネルギー生産と流通に大きく投資していることを消費者は十分に認識している」というシェルの主張が、「消費者がこれらの企業の事業活動の詳細を知る可能性は低い」という理由で退けられている、という構図になっています。

もちろん、ウォッシュは決してあってはならないことですし、許されるべきものでもありません。私も、noteで主張してきました。そのための、ルールが今年中には固まります。

ですが、この事例に接して「だったらどうすればいいの」っていうのが、率直な感想です。ASAがこのような判断をする以上、少なくともUKでは、企業がグリーンな製品・サービスの広告、コミュニケーションを行うのは困難であり、危険でしょう。

そこで思ったのが「エブリデイ・ロープライス」

目玉商品を掲載したチラシを定期的にばらまいて客を呼び込むのではなく、底値ではないけど割安な価格で提供し続けることによって、価格を気にせず日々来店してもらう戦略です。

製品毎に環境性能を謳う広告を打つのではなく、自社の環境配慮姿勢を、顧客との様々なコンタクトポイントにおいて、正直に、何度もコミュニケーションしていく。そう、まさに「環境ブランディング」です。

「あの会社なら大丈夫だろう」「あの会社の製品だったら問題ないはずだ」

メッセージは「どう伝えたか」ではなく「どう伝わったか」

Net-Zeroまでは、長い道のりです。
「サスティナブル」な戦略で目指していきましょう。

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