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EUタクソノミーから目を離すな

欧州委員会が「Sustainable finance package」を発表しました。

具体的な内容は、こちらです。

主な内容は、以下の3点。

1.タクソノミーの拡大
2.ESG格付けプロバイダーの規制強化
3.ユーザビリティ向上及び移行ファイナンス容易化施策

1が重要です。

タクソノミーとは「分類法」といった意味の言葉で、EUのタクソノミーという文脈では、企業などによる経済活動のうちどのようなものが環境配慮と呼べるかを「分類」したものとなっています。

タクソノミーでは、以下の6つの環境保護目標を掲げています。

(1)気候変動の軽減(緩和)
(2)気候変動への適応
(3)水と海洋資源の持続可能な使用と保護
(4)循環型経済への移行、廃棄物の削減とリサイクル
(5)環 境汚染の防止と軽減
(6)健全な生態系の保護

EU taxonomy for sustainable activities(筆者訳)

ここで、以下の4つの条件を満たした場合、タクソノミーに適合したグリーンな経済活動(Taxonomy-aligned)とみなされます。

1.少なくとも1つの環境目標に実質的な貢献をしていること。
2.他の5つの環境目標に大きな害を与えないこと。
3.最低限のセーフガードを遵守している
4.技術的な審査基準に適合していること

Taxonomy User Guide(筆者訳)

タクソノミーが目指す主な目的はこちらです。

- EUタクソノミーの6つの環境目標のうち少なくとも1つに実質的に貢献するプロジェクトへの投資を拡大し、欧州グリーンディールの実施を加速させることを支援する
- 投資家を「グリーンウォッシング」から保護する
- 企業のグリーンな移行計画の策定推進及び資金調達を支援する
- 投資家がグリーンと分類するものを統一することにより、市場の断片化と情報の非対称性を緩和する
- EUの気候・環境に関する野心を達成するために、最も必要とされる場所に投資をシフトすることを支援する

Taxonomy User Guide(筆者訳)

とにかくも、「Go Green」を目指す企業に対して、投資家が安心して投資できるような環境を構築することが、第一義なのです。

2020年に採択されたタクソノミー基準は、その具体的な内容については、3つの「委託法」によるとしており、2つは施行済みです。

1.気候委託法(Climate Delegated Act)
2.開示委託法(Disclosure Delegated Act aka Article 8 Delegated Act)

2.は企業がCSRDで開示すべき内容を規定するもので、今回は触れません
1.は、「ある経済活動が気候変動の軽減と適応に大きく貢献する」と判断するための「技術的スクリーニング基準(Technical Screening Criteria : TSC)」を定めるもので、タクソノミーの根幹とも言うべき催促です。

で、これは、上記「6つの環境保護目標」のうち、(1)と(2)、気候変動の緩和と適応についてのみの基準しか示しておりませんでした。

その他の4つの目標のTSCを定めるのが「環境委託法(Environmental Delegated Act)」なのですが、本来の予定より遅れており、公表が待たれていました。

それが、ようやく、公表されたというものです。

Policy making timeline

ちなみに、EUタクソノミーは生きた文書「Living document」であり、内容は時間の経過とともに追加されます。また、技術的な審査基準も、最新の科学的証拠、技術の進歩、気候・環境政策の進化に合わせて更新されます。

その証左に、22年7月15日、原子力およびガスエネルギー関連の特定の活動が、厳しい条件の下、経済活動のリストに追加された「補完的気候委託法(Compementary Climate Delegated Act)」が公表されました。

「原子力やLNGがグリーンなのか?」とメディアでも採り上げられましたので、覚えている方もいらっしゃるでしょう。

さらに、今回の環境委託法の公表に併せて、またも改訂がなされています。
タクソノミーからは、目が離せませんね。

欧州委員会 公表パンフレット

とはいえ、ようやく6つの環境保護目標に対するTSCが明らかになりましたので、自社製品がTaxonomy-alignedか否か検討する企業も出てくるでしょう。機関投資家の動きも気になります。

今回ご案内していませんが、開示委託法も、CSRDとのからみで重要ですし、CSRDはIFRS S1及びS2の絡みで、これまた重要。そのS1及びS2は6月末にリリースされ、来年24年1月1日から発効。

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