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ESRSリリースへ向けて一歩前進(1)

以前のnoteで、欧州議会とEU理事会が、2022年6月にCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive :企業サステナビリティ報告指令)について暫定合意、同年11月10日に欧州議会、11月28日にEU理事会でそれぞれ採択され、発効した旨をお伝えしていました。

CSRDにおいて開示が要求される項目の詳細は、EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group:欧州財務報告諮問グループ)が2022年4月に草案を公開している、ESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サスティナビリティ報告基準)が基準書という形で定めます。

草案の作成は、欧州委員会から依頼を受けて実施していたものであり、この草案が、2022年11月22日に欧州委員会へ提出され、審議がされていました。

この度、ようやく委員会内での審議において、いくつかの修正が加えられて「委任法(DA)」がまとまり、パブコメにかけられています。

EFRAGとしても、ヤレヤレ、ではないでしょうが、歓迎するプレスリリースをしております。

ここで、修正のポイントは、以下の3点。

1.ISSBとの相互運用性を高めること
2.中小企業などの報告負担を軽減すること
3.開示要求(DR)のほとんど全てを重要性の考慮の対象とすること

「1.ISSBとの相互運用性を高めること」の「相互運用性」とは「Interoperability」のこと。

簡単に言うと、ダブルスタンダードにならないように配慮するということです。ISSB向け、CSRD向け、と別々の報告書を作成しなくてよいようにしますということ。

非財務情報の開示項目については、ISSBが IFRSのS1及びS2という共通ルールを開発しています。ISSBはTCFDの後継であり、TCFDは金融安定理事会(FSB、Financial Stability Board)が設立したものですので、各国の金融監督官庁も、自国のルールに落とし込む作業をしています。

欧州をマーケットとしているグローバル企業は、どちらか一方ではなく、両方に対処する必要があるのです。

加えて、CSRDの前身のNFRDが定めた開示のガイドラインが法的拘束力を有しないものであったのに対し、ESRSは法的拘束力を持つということ。
NFRDによって充実した開示が期待されていたものの、期待レベルに達する開示を行う企業が多くない結果を受けたもののようです。

ですので、その負荷たるや推して知るべし。だからこそ「interoperability」
報告内容が同じで、提出先が異なるだけで済むなら、何とハッピー。

この例に限らず、「interoperability」は開示ルールの世の流れです。
「開示することが目的ではない」という、私のポリシーにも合致します。
こちらにまとめましたので、参照ください。

修正ポイント2及び3もウェルカムな内容で、逆にEFRAGがドラフトに盛りこんでいてもよかったじゃ無いの?と思わずにもいられません。

「法的拘束力」を持つが故に、開示が目的でなく、それが実現することにより達成できる世界に着目した「Directive:指令」であってほしいものです。

ということで、次回は、2と3についてご案内していきますね。

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